『ヒトの歩み』
「じゃあ向こうに行くね。
一応宿はとっているから、戻ったことを宿側に見せないと。
ビドーのゲルでも姿を見せておかないと駄目だし……これ以上捜索先を増やせないわね。
歯痒いわ」
「キュゥ〜ン」
【ぼくちゃん】は悲しそうだ。
「【ぼくちゃん】、マティアスもダグルもいるでしょう?
お腹が落ち着いたらお風呂に入れてもらって寝ましょうね」
【ぼくちゃん】は目をうるうるさせながら、それでも頷いている。
「うん、いい子。では行ってきます」
「キュウーン、キュー」
「おまえもさびしいのか。
……そうだよな。俺もさびしいよ」
マティアスの表情も暗い。
【ビドー】の門前から少し離れた森の入り口に設置されたゲルの少しひんやりとした空気の中、結界に触れるチリチリとした感覚に外に出てみた。
「あら」
器用に結界にメモが貼りつけてある。
オフェーリアは結界を開け、外に出てそのメモを手にまずは内容を確認した。
「ふうん、定期報告みたいなものね。
まだ、最低でも数日はかかるみたいなのか……
あの職員さん、ずいぶんと配慮してくれてるから、次に会った時は何か差し入れよう」
そして結界に貼りつけていた“接着剤”に興味を示して鑑定してみると。
「へえ〜
原材料はスライムなんだ。
それに定着作用のある植物から抽出した薬液を混ぜたもののようね。
人族も中々やるじゃん」
その“接着剤”からは魔力は感じられない。
なのでこれは魔力を持たない人族の薬師や職人が発明したものだろう。
ヒトの知恵も進化している……
オフェーリアは喜びを感じていた。




