『久しぶりの国』
【ビドー】の門前が夜の帷に包まれた頃、オフェーリアは再びダンジョン村のゲルに戻ってきた。
そっと、入り口の布をかき分けるとすでに【ぼくちゃん】は寝かしつけられ、マティアスは寝台から少し離れた場所にテーブルを移して、手元の魔導ランプの灯りで書類を読んでいた。
「ただいま」
オフェーリアが帰って来たのにようやく気づいたマティアスが破顔して立ち上がる。
そのまま近づいて抱きしめてきた。
「今夜はもう、帰ってこないかもしれないと思った」
抱き上げて、頭の位置が同じくらいになって、額を合わせる。
少し非難じみた囁きの息が首筋にかかってこそばゆかった。
「少しだけ姿を見せて、その後は篭っていたからね。
もう寝てると思ってるんじゃないかな」
ちなみにゲルは結界石で囲んである。
不届き者対策は万全なのだ。
「それよりも、もう仕事してるの?」
「ああ、明日からは王宮の方からも届くからな。
ここの仕事を少しでも進めておきたくて」
テーブルの上にはまだ書類が山積みになっている。
「じゃあ、私も手伝うよ」
その後、色っぽいことはまったくなかったふたりだった。
今日オフェーリアは約40年ぶりに、中大陸の小国【デロンカ・イード】にやってきていた。
この国の王都では度々希少品のオークションが行われていることを思い出したのだ。
この国は商業が盛んで、それで繁栄していると言っても過言ではない。
なので入国審査も緩く、オフェーリアの数十年前のギルドカードでも怪しまれずに入国できたのだ。




