『救援』
文字通り這って水辺にたどり着いたもののなかには、水面に顔を突っ込んで動かなくなったものもいる。
慌てて頭を持ち上げた【ぼくちゃん】のおかげで水死せずに済んだものが数人いた。
彼らよりも余裕のあるものは自分用のカップを取り出して、それで水をすくって飲んでいる。
その場が落ち着いてきたのを見計らって【ぼくちゃん】は一旦その場を離れた。
彼がそこに戻ってくるまで十分に水を飲んだ兵士のなかには気を失ってしまったものもいる。
この班のリーダーは今夜はここで休息を取ろうと思っていた。
「おい、あの獣はどこに行った?」
「あれ?さっきまでそこにいましたよ。
あ、戻ってきた」
小走りで近づいてきた【ぼくちゃん】は、兵たちには見覚えのある袋を二つ、押しつけてきた。
「おい、まさかこれは……」
慌てて開けた袋の中身は、軍に導入された非常食であるビスケットだ。
兵たちは声にならない喜びの叫びを上げた。
それは【ぼくちゃん】がフェリアからもらった食べ物の、このあたりに隠しておいた最後の2袋だった。
【ぼくちゃん】は最近さらに深い階層にいて、滅多にこのあたりには上がってこない。
今日は本当にたまたまだったのだ。
そして偶然に偶然が重なり遭難していた兵士たちを見つけた。
そしてここからが唯一知性を持つダンジョン魔獣の行動だった。
【ぼくちゃん】は自分がオフェーリアに助けられたことを理解している。
あの時彼は餓死寸前で、あのビスケットがなければ力尽きていたことだろう。
だがそこにオフェーリアという助け手が現れ、彼は救われた。
その時と同じことを今、返していたのだ。




