『クッキーと魔獣』
ダンジョン産の魔獣についてはわかっていないことの方が多い。
まず、個々のダンジョンによって同じ種類の魔獣であってもその生態が異なるのだ。
特に新規のダンジョンはそれが顕著で、今目の前にいる魔獣のように、まったくの新種が現れることもある。
「ふうん」
オフェーリアはクッキーの入った袋を持って立ち上がった。
そして結界の出入り口に近づき、二重の結界の結界石を動かしていく。
その動きに気づいた魔獣がオフェーリアをずっと目で追っている。
「よかったら食べてみる?」
外部と繋がった空間から袋をポンと放って、すぐに結界を閉じる。
魔獣はオフェーリアの顔を見て、そしてすぐに袋に飛びついた。
「いったい何をやってるんだ」
マティアスは呆れている。
「だってお腹減ってるのかと思って」
取り上げた袋をくるくると回し、そして引き裂いた。
すると当然ながらクッキーは飛び散り、地面に散乱した。
それをまるで獣のように貪り食う姿に、よほど腹を空かしていたようだと観察する。
「ほら、食べてる」
そのうち食べながらチラチラとオフェーリアを窺うようになって、その視線はクッキーとオフェーリア、半々に向けられる。
そしてすべてを食べ終わった魔獣は振り返り振り返りしながらその場を去っていった。
「何か大人しかったね。
知性もそれなりにありそうだし……
アレは本当にアレ一匹なのかな。
群れから弾かれた個体っていう線もあるよね」
最初の結界に激突していた状況が、どこが大人しいのかわからないが、オフェーリアの感性が普通でないのは昔からだ。
マティアスは無言で頭を振るしかない。




