『深夜のひととき』
辺りが闇に包まれる深夜。
必要最低限の灯りを残した野営地の中、オフェーリアはひとり佇んでいた。
そこにゲルから出てきたのはマティアスだ。
結界石の有用性を認識した兵士たちは、オフェーリアに言われた通り就寝している。
最後まで残って見張りをしていた飛龍隊の副長も、オフェーリアと交代してゲルに引っ込んでいた。
「どうだ?」
「ん〜
姿は現さないけど、ずっとこっちの様子は窺ってるね。
なので一度私が」
「駄目だ!」
オフェーリアの言葉に被せるようにして、マティアスが話を遮った。
「マティアス、心配ないよ?」
「それでも駄目だ」
マティアスの手がオフェーリアの腰に回り、いきなり持ち上げられた。
足が宙に浮き、抗うのを諦める。
「わかったよ。
でももうしばらく観察するよ。
……ちょうどいいからお茶にしようか」
携帯用簡易コンロとヤカンを取り出し、湯を沸かす。
今宵の茶はマティアスもお気に入りのハーブ茶だ。お茶請けにクッキーも出してすっかりリラックスする。
「まあ、しばらく監視して、出てこなかったら休みましょ。
明日は残りの半分弱くらい?
階段までは行きたいわね」
「問題ないのだろう?
日程にも余裕がある。
焦って怪我人を出しては本末転倒だ」
「怪我人で思い出したわ。
今は班にひとつくらいでいいと思うけど、緊急用のポーションなんかを纏めたアイテムポーチを兵士一人一人に持たせたいと思うの」
「アイテムポーチか、安くはないな」
「そのへんは任せてちょうだい」
手渡された金属製のマグカップに香り高いハーブ茶。夜間の寒さを凌ぐ、今ここで出来る最高の贅沢だ。
「マティアス、来たみたい」




