『求婚』
オフェーリアの頭の中で考えがぐるぐる回る。
まるで眩暈のように巡って、その場に座り込んだ。
「フェリア!」
慌てて歩み寄ったマティアスが、腰の抜けたオフェーリアの手を取って抱き寄せる。
その手は力強く、その目は確固たる意思を宿していた。
「騙し打ちのようなことをしてすまない。
まさかこのように次から次へと問題が起こるとは思わなかった」
「マティアス……」
「好きだったんだ。
一緒にダンジョンに潜ったあの時から。
……どうしても諦めきれなかった」
一緒にいた1年の間秘めていた想いは皮肉にも離れてから燃え上がった。
それは東亜大陸への輿入れが決まったことで一旦抑えられたかに見えたが、燻り続けたそれはオフェーリアが獣人の大陸にやってきたことを聞き及んで再び燃え上がったのだ。
「改めて願い奉る。
フェリア、俺の妻になってくれ」
シンプルな結婚の申し込みに、オフェーリアは素直に頷いた。
それに声にならない叫びを上げて、喜びを表すマティアスは震える手でオフェーリアを抱きしめた。
よく考えてみればわかることだった。
いくら文化的に大らかな竜人でも、王の妃として輿入れしてきた姫が、王以外の男と気安く接するなどありえないこと。
それが許されていたところで気づくべきだったのだ。
「怒ってるのか?」
黙りを決め込んだオフェーリアを懐柔するように声をかけてくる。
オフェーリア自身にそんなつもりはなかったが、しばらく意地悪をしてもよいかとは思う。




