『竜人たちの危機とは』
正式な婚儀を迎えるまで宮殿の客間に滞在しているオフェーリアは、まだ私物を持ち込むつもりはなかった。
生活に困らないよう、最低限以上のものは用意されていて、オフェーリアは十分満足していた。
「まぁ……
お家を丸ごと持ち歩いておられるのですか?」
女官の中でも主に下働きをしている少女が、思わずといった様子で尋ねてきた。
「ええ、これは魔導具でね、見た目と中が違うのよ。
聞いているかもしれないけど、私は元々薬師でね。調薬用の部屋や保管庫もあるの。
でも、使用者限定にしてあるから私以外は入れないのよ」
「ははーっ、薬師様」
また跪かれてしまった。
「えっと、何故?」
「フェリア様。
今でこそ飛竜で大陸に行くことができますが、ここは昔から絶海の孤島(群)。
医師は当然、薬師もおらず命を落とすものも少なくなかったのです」
「そっかぁ……」
だからよけいに近親婚が進み、発育できない子供が増えたのだろう。
これは何となく気づいていても、長年の習慣は中々変えることはできなかったわけだ。
「今は外から人を迎えて、ずいぶんとよくなりました。
そんな事を注意してくださったのも旅の薬師様だったのです」
ダルメリアの話は想像していた通りだった。
そしてダンジョンでのマティアスとの生活を思い出していた。
「あっ!
私、マティアスから預かりっぱなしのものがあるんだったわ!
ねぇ、彼とまた会えるかしら?」
何故か女官たちが顔を見合わせている。
中には後ろを向いて肩を震わせているものもいる。
「左様ですね。
また近々お目に掛かれるのではないでしょうか」
それはよかったと単純に喜ぶオフェーリアを見て女官たちは、思ったよりも純真な方なのだと思っていた。




