『ドタキャン』
「誠に申し訳ございませんが、本日の陛下とのご対面は延期になりました」
朝一番、女官に囲まれて支度をしていたオフェーリアは女官長ダルメリアの言葉に目を白黒させた。
どう返してよいかわからないので、とりあえず黙っている。
だが目で語っていることに気づいたのだろう、ダルメリアが慌てて付け加えた。
「フェリア様が思ってらっしゃるような事は決してございません。
陛下は今、突発の事象の解決のため陣頭指揮をされておられます」
「それはこの宮殿にはいらっしゃらないという事?」
「はい、申し訳ございません」
ダルメリアと女官たちが床に手と膝をついて頭を下げている。
傅かれる事はあってもこのような事をされた事のないオフェーリアは心中では慌てたが、平静を保っていた。
「……わかりました。
残念ですが政が最優先です。
あなたたちも私に対して必要以上に気を使う事はなくてよ」
婚家での扱いが都での話と違うのは慣れている。
その事で怒ったり使用人に当たったりする質ではない。
「では今日はゆっくりしましょう。
ダルメリア、ちょっとよいかしら?」
「はい、何でございましょうか」
「輿入れ前に条件として魔導具である家を設置する場所が欲しいと言ったのだけど、話は通っていて?」
「はい……
その件は伺っております。
陛下からはフェリア様のお好きな時にお好きな場所を提供するよう聞き及んでおります」
「そう。
ではとりあえず、この中庭に出させてもらうわね」
異空間収納など見たこともなかった女官たちはびっくりして後退る。
突然現れたウッドハウスはこちらに来るにあたってバージョンアップされていた。
「これは私が独り立ちした折に頂いた魔導具です。
私の生活空間であり、アトリエでもあります」
ダルメリアさえ呆気にとられていた。




