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『ブランデルグ』

「昨夜は熱が上がらなかったわね」


 ブランデルグが瀕死の状態で発見されてかれこれ10日経って、ようやく肺の炎症が収まってきたようだ。


「ああ、今朝はずいぶんと気分がいい」


 彼は今ベッドで上体を起こし、オフェーリア特製の薬湯を飲んでいる。


「でも、まだ無理しちゃ駄目よ。

 油断したらすぐに振り返すんだから」


 ここ数日昼間も起きている時間が増えたブランデルグだが、ベッドから降りた途端襲ってくる目眩に辟易としていた。

 なので言われなくても無理はしない。

 卒倒してまた新たな怪我をするなどごめんなのだ。


「わかってるよ。

 立ってみるとよくわかる……

 足がまるで、自分の足じゃないみたいなんだ」


「うん、もう少ししたらゆっくり歩く練習から始めよう。

 高熱は筋肉を溶かしちゃうの。でもすぐに回復するから焦らないで」


 彼を発見したとき、持っていた5本のポーションすべてを使用したあとだったので最初の状態は想像するしかないが、走行中の馬車から落とされてただで済むわけがない。

 たとえ剣で胸を貫かれていて脱力していたとしても骨折の一つや二つあってもおかしくない。

 現にブランデルグの前に発見した役人の助手の男子は四肢があらぬ方向に折れていたのだ。

 ただブランデルグの場合は一見したところ目立った痕跡は見受けられないので顕著な骨折はなかったのだろう。


「ああ、自分が今生きているのが奇跡なんだとわかってる。

 だからコツコツやっていくよ」


 そう言うブランデルグには、ローニンによって後ろから刺された剣の抜かれるときの感触が確かに残っていた。


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