『白刃』
四六時中ではないがブランデルグは定期的に馬車の周りの気配を探っていた。
今は馬車の中に客が5人。
そして御者台に御者と護衛の冒険者の2人。
あとは後部のデッキの樽の中にマリーがいて、もう1人ローニンがいた。
「あ〜、いい天気。
でもこっちは食事がしょぼいね。
やっぱりあっちにしといたらよかっ」
ブランデルグの独り言の声が突然途切れた。
「?!」
はくはくと息をしようと口を開くが、もうそれは叶わない。
なぜなら彼の胸からは白刃の切っ先が生えているのだ。
「おっつかれさん!」
ローニンに蹴落とされたブランデルグの身体が地面を転がって、そして何事もないように走る馬車から置いて行かれる。
時を同じくして御者台ではメビチと御者が頷き合っていた。
「何だ?今の音は」
ブランデルグが地面に落ちた音に気づいたのは2人連れの片割れの商人だった。
そしてそれが合図となって行商人の男が立ち上がる。
そして仕込み杖になっていた剣を抜き、それを商人の喉元に突きつけたのだ。
「動くな!
静かにしないと、こいつの喉をばっさりいくぞ!」
とても今までとは違う物言いだ。
気のせいか人相まで変わっているように見える。
そこで小役人の助手が剣を取り上げようと飛び掛かったが、いとも簡単に斬り伏せられてしまった。
「ラウール!!」
ちょうど扉を開けて乗り込んでこようとしていたローニンが、何があったのかを即座に理解して助手を蹴り落とした。
そして自身が乗り込んで行商人改めベンジーと視線を合わせた。
「ちょうどよかった、護衛殿。
この男が突然……」
そこでローニンが大笑いを始めた。




