『トラブル、その3』
結局ジニーは食事をしたゲルに泊まったようだ。
オフェーリアはいつもの自分のゲルでゆっくりと寝んで、朝馬車のいつもの席で皆を迎えた。
「おはよう、大丈夫だった?」
ファントが心配そうに寄ってくる。
彼はもちろん昨日の遣り取りを知っている。
「もちろん、とても快適よ」
昨夜はゆっくりと風呂に入ることができた。
この規模の村の宿では、風呂など望むこともできない。
別料金で桶一杯の湯をもらい、それで身体が拭ければよいところだ。
「まあ、フェリアちゃんにはゲルがあるしな。
結界も張れるみたいだし、そう言う意味では心配してなかったけどな」
そう言う意味とはどういう意味だ、と思ったが今はそれどころではない。
アイテムバッグから彼用の弁当を取り出し、押し付ける。
「後で皆にも取りに来るように言ってちょうだい。
飲み水は汲んだ?」
「おう、言われた通り宿の飲み水用の井戸から汲ませてもらった。
俺はよく飲むから予備の水筒にも入れといた」
象人のファントは背嚢から大ぶりの水筒を出して嬉しそうに見せてくれる。そうこうするうちに乗客たちも集まってきて、護衛も各自位置について出発した。
「ねぇ、今日は何をしているの?」
オフェーリアはまた声をかけてきたマリーを一瞥した。
「私に関わらないでくれる?」
編み図を見ながらレース編みをしていたオフェーリアは鬱陶しそうに口を開く。
でもマリーは初めて見た綺麗なものに夢中になってしまった。
「これはなに? すごくきれいね」
「近づかないでって言ったでしょ!
汚い手で触らないで!!」
オフェーリアの叱責も聞こえないのか、繊細な柄のレースのドイリーを掴むと自分の方に引っ張ったマリーのしでかしたことは、針から外れた編み目から見る見る糸が解れたことだ。
そして揉めているのに気づいてやってきた母親がマリーの身体を引っ張ったことによってさらに解けてしまった。




