『水の話』
「ちょっと待って、川の水をそのまま飲むつもり?」
「ん?いつもそうだが?」
ワランはオフェーリアが何を言いたいのか不思議そうだ。
「それって拙くない?
もしも毒が……いえ、例えば上流で動物が不浄なものを流していたら?
病気になっちゃうわよ」
「むう、そう言えば以前知り合いに下痢を伴った酷い病にかかったものがいる。
医師が言うには水が悪かったとのことだったが……
結局奴は助からなかった」
「それ、その病気、そのあと広がらなかった?」
「広がる?」
「同じような症状の患者が出なかったかってこと」
「俺は又聞きなんだが、その後家族が同じ病に罹ったと聞いた。
それからどうなったのかは聞いていない」
その家はおそらく家族内感染を起こしたのだろう。
ひょっとすると村単位で広がったかもしれない。
「……そういうことに成りかねないから、なるべくなら川の水をそのまま飲むのは止めよう。
それに毒なんかを流されたらどうするの?」
ワランが身震いをした。
「俺、皆に言っておくわ。
あと、馬もだな」
「確か馬車には水を溜めておく樽があったわよね?
あなたたちの水筒も町や村のちゃんとした井戸から汲んだものじゃないと飲んではダメよ」
ワランは鱗をじっとりと濡らすほど汗をかいている。
「今日のところは……私が水を出してあげるから大丈夫よ」
でもそれは今日まで共に旅をしてきた面子だけだ。
オフェーリアは今日から合流した護衛を含む新たな乗客たちに、今は思うところがある。
彼らに対してはしばらく様子を見るつもりでいた。




