『霜降り肉』
40階層を過ぎるとあたりの様子が一変した。
「一つの階層の広さが今までの5倍?
いえ、10倍はあるわ。
これは探索のし甲斐があるわよ」
今オフェーリアたちの前に広がるのは広大な平原、そしてその先の地平線だ。
「まだ見えないけどこの先に、おそらくメガバッファローの群れがいるわ。
前に食べた事があるけど、肉が霜降りでめちゃ美味しいの。
柔らかくて、ジューシーで、お肉自体の旨味が最高で、思い出すだけでも涎ものだわ。
でもこの牛は生息地が限られていてね、私が前回食べたのは、たまたま手に入ったものを知人に譲ってもらってね、やっぱりまずはステーキよ!
焼き方は、私はミディアムレアだけど、マティアスはレアよね。
あと、味付けは……」
語り始めたら止まらない。
オフェーリアの肉への情熱は限りなく続くのであった。
【血抜き】や【真空】の魔法は食材をゲットするには最適の方法である。
特に【血抜き】は解体の下拵えを兼ねていて、実際に解体するときは必要以上に汚れるのを防ぐ。
オフェーリアは慣れた手つきで自分の5倍はある牛を解体していて、すでに腿は外されている。
次々と美味しい部位からカットしていき、夕食の支度の始まりだ。
「このメガバッファローというのはミノタウロスよりも美味いな」
マティアスはレアのステーキに舌鼓を打ち、厚切りのそれをすでに5枚平らげている。
「そうでしょ?
私の知る限り、生息地はこの41階層しかないので、できる限り狩っていくつもり」
「俺にできることなら何でも言ってくれ」
「もちろんよ。
力仕事で貢献してもらうつもりよ」
今回のダンジョン攻略が、ほとんどグルメ食材との出会いの旅となっている事に、半ば呆れているマティアスがそれでも力強く宣言していた。




