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7話 王太子の真の目的

 ソフィアはルシアを女王に即位させると言った。俺は驚いたが、たしかにありえない話ではない。

 王太子がルシアを粛清しようとしたのも、ルシアに王位を奪われることを恐れていたのが理由の一つだ。


 第一王女フィリア亡き後、誰もが認めるこの国の後継者は不在だった。王太子となったエドワード王子はその誠実さで評判は悪くなかったが、有能だとは思われていない。


 その点、ルシアは宮廷魔導師団団長としての実績もある。その容姿と性格から、国民的人気も高い。

 

 ルシアを女王とすれば……俺たちが逃げる理由はなくなる。大臣のなかにも、密かにルシアを王位に推す声もあると聞く。


 ソフィアは妖艶に微笑んだ。


「ルシア女王陛下のもとで、クリスを宮廷魔導師団団長とする。クレハは元の学生生活に戻れるし、わたしはアルカディア公爵を継げばいい。完璧でしょう?」


「成功すれば、ね。だが、これは王位簒奪だ。それに、どうやって、国王陛下と王太子殿下を排除すればいい?」


「方法を聞くってことは、心の中では反逆を考えているってことよね。やるとすれば、クリスの方が、わたしよりも上手い方法を思いつくでしょう?」


 そのとおりだ。恐ろしい反逆だが……たしかに、それ以外の手は、根本的な解決にならない。このままなら、王太子一派は地の果てまで俺たちを追ってくるだろう。

 

 ルシアの名を掲げ、信頼できる宮廷魔導師団の有志と王都で挙兵。殿下の名の下に、マクダフが味方となる近衛騎士を組織する。

 王女ルシアの旗印があれば、一定の軍事力を作り出すことが可能だし、それで王宮を襲うのは十分だった。


「私はクリスの判断に従おう」


 マクダフが静かに言う。クレハも「義兄さんが、それが正しいと思うのであれば」とつぶやいた。


 決めるのは、俺ということだ。

 クレハ、ソフィア、マクダフ、そして、ルシアと俺自身が助かる最善の方法を俺は選ばないといけない。


 そして、弱体化した王国を立て直し、アルストロメリア共和国の侵攻と立ち向かう必要がある。 


 俺は決断した。


「クーデターを起こそう。ルシア殿下を王位につける」


「決まりね」


 ソフィアが嬉しそうに笑った。ただ、決定というわけじゃない。

 俺は言葉を選びながら、一同を見回す。


「あとは、ルシア殿下の意向次第だ。殿下にとって、国王陛下は父で、王太子殿下は兄だ。ルシア殿下がその二人に弓を引くのがためらわれるなら、俺は殿下に無理強いして、挙兵するようなことはしたくない」


「それなら、問題ありません」


 綺麗に澄んだ声がした。振り返ると、ルシア殿下がベッドの上に起き上がり、真紅の瞳で俺を見つめる。


「国王陛下も兄上も、私を切り捨てました。そして、今の私には、あの二人が、この国を正しく導こうとしているとは思えません。それに……」


「それに?」


「私には、クリスより大事な人はいないんですから」


 恥ずかしそうに、ルシアは赤面して、俺を上目遣いに見つめた。俺も顔が熱くなるのを感じたが、ソフィアが「いちゃつくのは別の機会にしてね。……やっぱり、別の機会でもダメ!」と頬を膨らませて、割って入った。


「ともかく、『反逆』の準備をしないと。まずは聖女アリアの尋問をしないとね。王太子たちの目的も知りたいし。マクダフ、悪いけれど、アリアを連れてきてくれる?」


 マクダフは肩をすくめ、聖女を監禁した別室へと向かおうとした。マクダフが、完全にソフィアに命令される存在になってしまっている……。


 だが、マクダフは聖女を連れて戻ってくることはなかった。

 突然、隣の部屋から叫び声が響いた。マクダフの声だ。


 俺とソフィアは顔を見合わせ、慌てて隣の部屋へと向かった。

 今のは悲鳴で、マクダフが聖女に襲われたのかもしれない。厳重に拘束したとはいえ、相手はアストラル魔法の使い手だ。

 

 だが、隣の部屋の入り口で、マクダフは呆然と立っていた。そして、部屋の奥にいるアリアを指差す。


 アリアは手首から大量の血を流していて、床に血溜まりができていた。聖女の純白の衣装が、赤く染まっている。


 魔法を使って自らの身体を傷つけ、自殺を図ったのか。俺は背筋が凍るのを感じた。ここで死なれては情報を聞き出せない。そもそも、いくらルシアを拷問した相手とはいえ、死に追い込むつもりはなかった。


 俺は慌ててアリアのもとにかがんで、ヒールをかける。この出血量では、もう死んでいるかもしれないが……。


 だが、アリアはうっすらと目を開けて、黒い瞳で俺を見つめた。その顔は、生気のない人形のようで、美しく、そして、虚ろだった。


「ああ、死ねなかったんですね。どうせ偽物なのに、聖女の加護が邪魔をして……死にきれなかった」


「喋ったらダメだ。ともかく血を止めるから――」


「もう私に未来はないんです。このままあなたたちに嬲り殺しにされるか、逃げ出しても、王太子殿下に殺されてしまう……」


 うわごとのようにアリアはつぶやいた。


「俺たちは君を殺したりはしない。それに君は王太子殿下の思い人じゃないか。王太子が君を殺すわけじゃない」


 俺がそう言うと、アリアは乾いた笑みを浮かべ。首を横に振った。


「殿下は私を愛していません。失態を犯した私を……殿下は生かしておかない」


 王太子は、アリアを愛しているわけではない。ソフィアはそう言っていたどうやら、それは本当のようだった。だからといって、どうして王太子がアリアを殺すというのか?


 ともかく、俺のヒールの効果で、アリアの血は止まった。これで、しばらくは命の危険はないはずだ。


 アリアはそんな自分の体を見て、瞳から一筋の涙をこぼした。


「王太子殿下が愛しておられた女性は、たった一人。今はこの世にいない方」


 隣のソフィアがはっとした顔をして「まさか……」とつぶやいた。

 アリアは俺を見つめ、静かに告げる。


「王太子殿下の、そして国王陛下の望みは、第一王女フィリアを蘇らせることです」

シリアスになってしまいましたが、次からはラブコメのはず……たぶん。


面白い、王国がどうなるか続きが気になる!という方は、


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― 新着の感想 ―
[一言] ルシアさんが女王に成るか、魔法の力を失わなかったなら可能でしたけど、遅かったでしょう。 アリアさんの事、実は最優先重要である情報聞き出すを放っといていた主人公さん達の判断ミスによる結果だと思…
[良い点] えっ、ナイスシリアス [一言] まさかの親馬鹿、シスコンのフュージョン発動! なお、次女には適用されない模様www
[一言] !!(; ̄□ ̄)つ★★★★★
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