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メイドと狂人A

再開

『ご乗車ありがとうございました〜 魔導国家アルバーン、魔導国家アルバァァァン。降りる際はお忘れ物などないようお気をつけください。あと扉に挟まれないようにもお気をつけください』


 あれだけの攻撃を受けたにも関わらず魔導列車マギトレインは平然として走り続け魔導国家アルバーンへとたどり着きました。

 装甲が凹んでいたり欠けたりしていますが大した障害にはならなかったようです。さらっとまた魔導列車マギトレインの扉に腕を挟み切られて悲鳴を上げてる人もいらっしゃいますが、乗客達も肝が据わってるようで、


「いい血の吹き出し具合だな」

「今日はなかなかにスリリングだったな」

「となりの奴が吹き飛んだよ」

「ははは、運がなかったな」


 などと人が身近で死んでも大したことはないようです。狂気を感じるような会話ないようです。私が言うのもなんですが人の命安すぎません?


「地面が揺れないって素晴らしいなぁぁぁぁぁ!」


 そんな狂った人々が充満している魔導国家アルバーンの魔導列車駅マギトレインステーション魔導列車マギトレインが着くなり痛みで悶えていたはずのアオイは外へと飛び出し、一際狂ったような大声を上げます。

 あまりの声の大きさに回りの人達が何事かと言わんばかりにアオイのほうへと視線を向けていますが。そんなことなど知るか! と言わんばかりに地面に寝そべると「地面って最高!」と頬ずりをし始めました。

 見ていて恥ずかしいものですね。すでにフィルとご主人様はアオイのことを他人として扱うことに決めたのか目線をそちらに向けようともしません。私もそれに習い魔導列車マギトレインから荷物を取り出しご主人様、フィルと共に出口の方に向かいます。


「陸地サイコォォォォ!」


 キャラが崩壊してますよ⁉︎

 思わず振り返ってツッコミを入れたくなりましたが我慢です。

 しかし、あそこまでのリアクションを取るとなると今度は船とかに連れ出したくなりますね。

 ですが船に乗ることなどほぼありませんし、ご主人様もさすがに大陸を渡ってまで武器商人の仕事はされませんからね。


魔導列車マギトレインであれだけのリアクション…… 今度は船にでも乗せてみようかな」


 私と同じ事を思いついたらしいご主人様がボソリと告げます。ご主人様は思いつきでも実行する人ですから確定でしょうね。船に乗せられた時にアオイどんな顔をするのかが今から楽しみです。


「悪い人だ。ここに悪い人がいる……」


 頭の上の索敵ユニット(ニャンファイ)をぺたんと倒しながらフィルが無表情ながら怯えたような声を出します。

 人生には楽しみという名の刺激が必要なんですよ。


「とりああえずさ、リップス。あれ連れてきといて」

「……わかりました」


 狂った状態のあれ(アオイ)に近づくのは嫌ですが、ご主人様の命令では仕方ありません。

 私は未だに地面に頬ずりをしているアオイへと近づくと足を振り上げそれなりに手加減しながらアオイの背中に叩きつけます。


「あが⁉︎ ぁぁぁぁ!」


 軽く色々と砕けるような音が聞こえた気がしましたが問題はないでしょう。それと同時に今まで頬ずりをしていたアオイは沈黙しピクリとも動かなくなりました。そんなアオイ首元を掴み、私は引きずるようにして周りのお客様に一礼。アオイを奇抜な物でも見るような目を向けていた人々は関わり合いになりたくないと言わんばかりに視線は逸らしていくのを確認した後にその場を後にします。

 そのままご主人様の元へアオイを連行。


「つれてきました」

「ご苦労様」


 労いの言葉をかけていただき思わず顔がにやけてしまいます。

 しかし、アオイがこんな状態であるため私がしっかりとご主人様を守らなければいけませんね。


「これからどうされるんですか?」

「迎えが来てるはずなんだけどね」


 荷物と足手まといを連れながら魔導列車駅マギトレインステーションの外へ出ます。

 外に出るだけでかなり空気が変わりました。おそらくはこの地に満ちる魔力が濃いためでしょう。

 魔法使いは魔力が濃い場所のほうがいろいろとやりやすいと聞いたことがあります。


「あれかな?」


 ご主人様がふらふらと立ち寄ったのは明らかに場違いなくらいに黒い馬車です。怪しい香りしかしません。

 ですが馬車を引いてるのは馬ではなくゴレームのようです。こんなところで魔導ぽさを出さないでいいと思うんですけどね。

 その馬車の前にはこれまた年季の入ったようや老執事が直立不動の姿勢で立っていますが鼻提灯を膨らまして頭だけが揺れているところを見ると寝ているのでしょう。

 家に使えるべき使用人が寝ていてはダメでしょうに……


「む、あの人はひるねまいすたー?」

「それがどんな意味を持つ称号かはしりませんがきっとロクでもありませんね」


 ふらふらと歩くご主人様の後ろにつきながら私はまだ寝ているらしい老執事を呆れたように見るのでした。

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