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メイドと襲撃

 魔導列車マギトレインでの移動はいたって順調と呼べるものです。

 今のところはご主人様を襲撃しようとする者の姿は見られませんしね。その襲撃の対象であるご主人様はというとフィルと共に窓から覗く景色を見ては一喜一憂しています。

 この愛らしさは保存すべき光景です!

 フィルが邪魔ですが私はカメラを取り出すと音が途切れない程の連射音を鳴り響かせながらご主人様の姿をレンズへと収めていきます。

 音に気づいてご主人様が振り返った時にはすでにカメラは閉まっていますがね。これぞメイド技の一つです。

 そんなほっこりした旅行のような空気の中で私はため息をつかながら現在の問題へと声をかけることにしました。


「アオイ、いつまで震えてるんですか?」


 隣のボックス席に移動したアオイは頭からタオルケットを被り、なにやら聞き取れないくらいの声量でブツブツと言っていますから気持ち悪くてしかたありません。

 時折、魔導列車マギトレインがレールの継ぎ目の部分を通過し、わずかに揺れるたびに体をビクつかせては震えています。


「これで最強の暗殺者とか呼ばれてたんですから笑えますね」


 むしろ今の状態を写真に収めて闇ギルドにでも持っていけば懸賞金目当ての愚か者がたくさんいらっしゃることでしょうね。それはそれでアオイにはメリットとデメリットがありますが私からしたらご主人様が無駄に危険に晒されるのでして欲しくないものです。


「ゆ、ゆ、揺れる! すっごく揺れる!」

「そんなに揺れてないじゃないですか……」


 魔導列車マギトレインは賢者が作り上げ世の表舞台に登場してすでにかなりの年月が経っているわけですし細々とですが改良と新型が出てきています。人から聞いた話ですが初期の方の魔導列車マギトレインはそれはもう乗れた物ではなかっっ言いますからね。

 人を殺して運ぶ乗り物とまで言われていたようですし。


「て、鉄が動いてるだろ!」

「どれだけ時代錯誤なことを言ってるんですか……」


 本当に呆れてしまいますよ。今の状態では役に立つかも怪しいところです。

 最悪の場合は役立たずは盾にするしかないですね。


「それでご主人様。まずはどちらに向かわれるのでしょう?」

「行き先は首都だよ。そこで宿をとって次の日に取引さ」


 ワイングラスに入ったジュースを美味しそうに飲みながらご主人様が教えてくれます。ご主人様にお酒はまだ早いですからね。むしろ飲まないほうがいいです。酒癖の悪さというのは母であるメルエムアンを見てよくわかりましたからね。ご主人様にはあんな風にはなって欲しくありませんし。


「宿の方は?」

「取引相手が準備してくれるらしいよ。太っ腹だねぇ」

「ん、罠」


 フィルの言葉に私は頷きます。

 居場所がバレてる武器商人なんて確実に狙われますよ⁉︎

 いや、ご主人様のことです。狙われるのがわかっていて楽しんでいるような感じなのでしょう。


「スリルを楽しもうとするのはご主人様の悪い癖ですよ」

「だってリップスにフィル、それにアオイもいるでしょ? なら安心じゃない」


 なんという信頼! ここで無理というのはご主人様のメイドとして失格と言えるでしょう。


「フィルは戦うの無理だから」

「あなたには盾になってもらいますよ」


 自分が役に立たないということを声高々に宣言しているフィルですが、当然盾以外の役目もあります。それが今彼女の頭に装着されている猫耳型索敵ユニット、NyanFi(ニャンファイ)です。NyanFi(ニャンファイ)を装着したフィルは異常ともいえるほどの広範囲を常に索敵できるわけです。

 戦闘用ではないとはいえあなたもご主人様に付いてきたのですからその身を犠牲にしてでもご主人様を守ってもらいます。

 私の言葉を聞いたフィルは急に項垂れます。


「フィル、お家に帰りたい……」


 泣きそうな顔をしながらそんなことを言ってもダメです。

 しばらく項垂れていたフィルでしたが索敵用に装備していた猫耳がぴこぴこと動き出したことにより顔を上げます。


「敵だ」


 今まで使い物になりそうになっていかったアオイまでもがタオルケットを放り投げ刀を手にして立ち上がっています。

 私もええ、気づいていましたとも。

 だってこれは……


「かなり遠い。ですが」

「すっごく速い!」


 フィルの焦ったような言いようからわかるようにかなりの速度です。フィルのセンサーで感知してからすぐに私のセンサーでも感知しましたし、発見してからは瞬き様に距離を詰められています。


「主を窓から離せ!」


 アオイが叫ぶよりも早くフィルがご主人様の手を引き窓から離れ、それと同じタイミングでアオイが窓へと向かい抜刀。鋼の輝きが煌めきながら窓を突き破り進入してきたものを両断します。真っ二つに両断されたものは音を立てて車内を転がり、周りの座席をぶち壊していきます。


「これは?」

「ゴーレムかな?」


 床に転がった物をすぐにご主人様はすぐに見破ります。

 なるほどゴーレムを遠距離から飛ばして砲弾代わりにしてるわけですか。


「まだ来るみたいだな」


 先程まで震えていたとは思えない程のアオイの変わりように頼もしさを感じながら破壊され大きな穴へと変わった窓からヘッドレスを顔を出し外を見ると空を覆うほどの大量の黒点が目に入りました。

 もしかしてあれ全部ゴーレムですか?

 あれぇぇ? 多すぎませんか?

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