メイドと片道切符
「失礼いたしたしまーす」
蹴破り扉がなくなった入り口の前で一礼したのちに私は中へと足を踏み入れます。途端、視界が煙のせいで白く歪みます。
おそらくはタバコの煙なのでしょう。換気を徹底的に行うまではこんな有害な空間にご主人様を入れるわけにはいきませんね。
軽く見渡すと黒いスーツをきた柄の悪そうな輩の方々が銃を手にし、こちらに銃口を向けてきているようです。
「タバコの不始末は火事を誘発しますよ?」
足元に落ちていたまだ火のついたタバコをブーツで踏み消しておきます。
私が蹴り飛ばした扉がおそらくは黒スーツの方々が寛いでいたテーブルを吹き飛ばした拍子に灰皿が落ちたのでしょう。あ、ちなみに蹴り飛ばした扉の前にいた男は扉とともに吹き飛ばされ壁と扉のサンドイッチにより赤いソースを床にぶちまけています。
「それで幹部の方々どちらに?」
武器を手にした黒スーツの方々に話しかけますが誰もが私から銃口を外そうとしてくれません。
困りました。
さっさと幹部の方々に話ができる状態に持っていきたいのですが。つまりは優しい交渉を持ちかけなければいけないわけです。
「今あっさりゲロってくれたら痛い思いや死んだりしませんが?」
「っ! 殺っちまえぇぇ!」
はて、優しく言ったはずなんですが……
部屋のいたるところから発砲音が響きます。そのたびに私の体のあちこちに少しばかりの衝撃が走ります。
ですがドラゴンの皮で加工されている私の麗しの、ぼでぃや特注のメイド服には傷一つ付くはずはないんですがね。
顔に当たりそうになるのだけ躱そうかと思いましたが背後におやつを食べているご主人様に当たってしまう可能性があるので下手に動くことができません。
仕方ありません。動かずにこいつらをぶっ飛ばすしかありませんね。
「それでは排除します。死にたくなかったら伏せてくださいね」
そう宣言だけすると私は両手を前に突き出すようにすると魔導液体を放出し、手に纏わしていきます。
魔導液体が放出されるたびに着ているメイド服の一部がスカスカになり寂しい気持ちが湧きあがりますがそれに比例するように私の腕に黒光りする武器が形成されていきます。
それが形成されていくと共に威勢良く銃弾を放っていた黒スーツたちの勢いが弱まっていき、最後の方にはガタガタと震えながら攻撃する手は止まっていました。
「あれ? 攻撃という名の無駄な行為は終わりでよろしいんでしょうか?」
形成された透明な筒をいくつも束ねた巨大な銃機、ご主人様お気に入りの武器、超連射砲を両手に備え、その銃口を適当に黒スーツへと向けます。私の腕が動くとベルト状に搭載された銃弾が引き摺られて音を立てます。
「それではみなさま、ご機嫌よう。あ、ご主人様は耳を塞いでいてくださいね」
軽く挨拶をし、背後のご主人様へと注意を促したたのちに腕と一体化している超連射砲の引き金を引きます。
「FIRE」
そして鳴り響くはひたすらに轟音。
部屋にあるあらゆる物へと銃弾の雨を叩きつけ続け、さらには原型がわからないほどに粉々に砕いていきます。それは人であっても問題なしにです。
必死に逃げようとしていますが狭い室内。さらには私がいる場所こそが出入り口であることから逃げ道は全く存在しません。
つまりみなさんの行き先は天国なわけです。もしくは地獄ですね。帰りの切符はありません。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
あまり悲鳴をあげて逃げ回って欲しくはないものです。あまり重さを感じない魔導液体で作ったものと言えどそれなりの重量はありますので照準を合わせるのは面倒なんですから。
まぁ、パーフェクトメイドである私にとってはさしたる苦労ではありませんがそれでもなるべく楽をしたいというのはいたって普通の思考でしょう?
やがて弾丸が空になりバレルが煙を上げながら幾度も空回りを続けることでようやく掃射が終了。
魔導液体で形成されていた超連射砲はガラスが割れるような音を立てながら破砕。キラキラと見ていて美しい粒子を撒き散らしながら消えていきました。
後に残るのは凄惨な光景が広がり、至る所に血と肉片がこびり付いた部屋だけです。
「終わった〜?」
私の横からご主人様が部屋の中を覗き込むようにしてきます。
「はい、掃討完了です」
にっこりとリップススマイルをご主人様に向けます。ですがご主人様はなにやら非難の目を私へと向けてきます。
「リップス」
「な、なんでしょうご主人様」
少しばかりビクついてご主人様へ答えます。
ああ、責めるような目で私を見てくるご主人様というのもなかなかにそそるものがあります!
ですがさすがにここでふざけるのはなかなかに不味いということくらいは私でもわかりますので顔がにやけないようにするのに全力の力を使います。
そんな私の努力など知らないご主人様は深々とため息をつきます。
「で、どうやって死んだ人間から話を聞くのさ」
「あ……」
ご主人様に言われ、あわてて室内をもう一度見渡しますが話をできる、というか生きている様子の人は一人も見られませんでした。




