23.大天使ステラちゃん、まだまだ渡す
おうちの裏側には、勝手口がある。
毎日の買い出しや、食材を運び込むことの多い料理人さんたちのための、キッチン横のお部屋と外が繋がっている出入口だ。
おうちの中から訪ねたほうがいいかもしれないけど、お庭からだから、こっちのほうが近いもんね。
それに、今の私は、業者さんのふりをして訪ねたらびっくりしてもらえるんじゃないかって、少しいたずらしたい気持ちになっていたの。
料理人さんはいつも面白いお話をしてくれて、美味しいごはんのことも楽しく説明してくれる、とっても良い人なのよ。
勝手口の近くまで来た私は、口元に人差し指を当ててマルクスとルイを見る。
「マルクス、ルイ。シー、だよ」
二人は、黙ったままコクリと頷いてくれた。
マルクスは私と同じで、いたずらをする悪いお顔になってる。
ルイはちょっと緊張しているみたいなお顔。
もしかしたら、真面目なルイはいたずらをしたことがないのかもしれない。
私は、業者さんみたいな、大人の人みたいな声を出せるように準備して、ゆっくり勝手口のドアをノックした。
コンコン。
「こんにちはー、サッチモさんへ、お届け物です」
「……」
中に人の気配がしていたから、料理人さんのサッチモさんがいるはずなんだけど、お返事がない。
この時間なら、通いの料理人さんはいなくて、晩ごはんのご準備までの時間だからちょうどいいと思ったんだけど。
私はもう一度、コンコンとノックをした。
ドア越しにちゃんとお声が届くように、少しだけ背伸びをしながらお声を掛ける。
「サッチモさん? いらっしゃいますか? お届け物ですよう」
すると、今度は中から反応があった。
「んん゛っ」
料理人さんの、咳払いみたいなお声が、ドアの向こう、すぐそこでする。
ドアを開けてくれるのかな? って思ったけど、ドアが開く前に思わぬことを言われた。
「いつもの合言葉をどうぞ、業者さん」
「えぇ!?」
びっくりして、ついいつものお声を出しちゃった。
マルクスも一瞬びっくりしたけど、私が声を上げちゃったから笑い始めた。
あーもー、失敗だあ。
ガチャっとドアが開く。
そこにいたのは、いじわるな笑顔をした料理人さんだった。
「ようこそ、レディステラ。これは珍しいところからいらっしゃいましたね。ご友人もご一緒に、さあ、どうぞ中へ」
「うふふ、びっくりさせようと思って、こっちから来てみたの。びっくりした?」
「それはもう! ドアの向こうから、“シー、だよ”って、とっても可愛らしいお声が聞こえましたから」
「!」
料理人さんは肩を揺らして、楽しそうに笑ってる。
「じゃあ、ノックの前に私だってわかっちゃった?」
「はい、わかっちゃいました。残念でしたね、お嬢様」
料理人さんには、声を掛ける前にばれちゃってたみたい。
ペロッと舌を出して笑われた。
料理人さんが笑ってくれたから、一応は成功でいいかなあ。
料理人さんには、今度改めてびっくりの作戦を立てて再挑戦しようっと。
「さて、今日はどうしました? ご友人とお屋敷の探検ですか?」
「あのね、使用人のみんなにお手紙を書いたから、それを渡してまわっているの」
「え! そうなんですか!?」
お話ししながらも、料理人さんは手際よく、私たちに飲み物や、クッキーなんかの焼き菓子を用意してくれている。
私はひょいっと持ち上げられ、キッチン横の部屋、そこにあるテーブルの席に座らせてもらった。
「お菓子ありがとう、いただきまぁす」
マルクスも、ルイもお礼を言って食べ始める。
私は、二人の反応が楽しみだ。
だって、料理人さんのお菓子はとっても美味しいのよ!
「これもうまい! やっぱりステラの家の菓子はうまいなあ。全部、サッチモさん? が作ったものなのか?」
マルクスが美味しそうに咀嚼してから、料理人さんのサッチモに聞いている。
マルクスは、私のお弁当を食べて以来、私のおうちのごはんのファンになっちゃったんだって。
私の家に来てごはんやお菓子が出ると、いつもとても喜んでくれるの。
マルクスに言われて、料理人さんは嬉しそうだ。
「ええ、作り置きですが、私の自作です。まさか名前まで覚えていただけるとは、光栄ですよ。よろしければ手土産用に、いつもの卵焼きでもお作りしましょうか?」
「いいのか!?」
マルクスのお顔は満面の笑顔になった。
マルクスは本当に卵焼きが好きなの。
マルクスが来た日のお茶の時間は、ティーセットと一緒に卵焼きを出してもらうこともあるくらい。
あんまり私のおうちで食事したことのないルイを見たら、もう全部食べちゃったみたいだった。
全部食べちゃったのが恥ずかしいのか、私と目が合ったらあわあわしていた。
美味しかったら食べたくなるのは普通なのに、ルイったら変なの。
料理人さんもルイが食べちゃったのに気づいて、笑顔になった。
「お一方だけに土産があるのもなんですので、お菓子を包ませていただいてもよろしいですか?」
「いただこう」
言葉は固いけど、ルイの顔は明らかに嬉しそうだ。
さすが料理人さん、おもてなしをし慣れているなあって、私は感心しちゃう。
「お手紙読んでもいいかなあ?」
「ぜひ。ああ、とっても楽しみです」
料理人さんもテーブル越しに向き合ってくれて、私はお手紙を取り出し広げる。
「“サッチモへ。
いつもとってもおいしいごはん、ありがとう。
サッチモのおべんとうがおいしいから、
ついついおでかけしたくなっちゃうの。
おまつりのひのとりさんたべられなくて、
とってもざんねん。”」
「わあ~! わあわあ! お嬢様、本当に、私のために書いてくださったお手紙なんですね! すごくいい! ああ、残念って内容なのに喜んでしまって、ああ、どうしよう。とっても嬉しいです!」
「本当? 喜んでくれて、私も嬉しい!」
料理人さんのサッチモは、とっても喜んでくれた。
大きな身振りで、嬉しい、嬉しいって言ってくれて、お手紙もすぐにもらってくれた。
「すごい、私の顔ですか? すごく似てる! お嬢様すごいです!」
似顔絵にもすぐ気づいてくれて、たくさん褒めてくれる。
それが嬉しくて、椅子の上なのに、「やったあ」って体をピョンピョンさせちゃう。
サッチモは、何度も何度もお手紙を目で読み返してる。
サッチモの口元がニヨニヨして、お顔がどんどん笑顔になっていくから、目の前で読まれるのはちょっとだけ恥ずかしいけど、良かったなあってどんどん嬉しい気持ちになる。
ルイが、「やっとまともな喜び方のやつがいたな」ってボソッと言ったけど、なんのことだろう?
私が、飾りボタンも渡そうと思って封筒をごそごそしていたら、サッチモはそばまで見に来てくれた。
私は飾りボタンを取り出して、覗き込んでくれているサッチモに見せる。
「あのね、これ、飾りボタン。サッチモは飾りボタン知ってる?」
「おお、おしゃれな方が付けているやつですね!」
「そう! 綺麗なお店のお姉さんが教えてくれたの。色んな使い方があるんだって~。これも、サッチモにあげるね」
私が「はい」って渡すと、サッチモはお礼を言って受け取ってくれた。
光に透かすみたいに見てくれて、お顔が嬉しそうで、私も笑顔になる。
「ありがとうございます! どこに付けましょう! わあ、生クリームみたいなやわらかい白いお花が入ってますね。これは、そうだな、コック帽に付けてもらいましょうか」
サッチモはニコニコだ。
私はとっても嬉しくて、ニコニコで、「レイチェルに言ったらねえ、付けてくれるからねえ」って教えてあげた。
晩ごはんの準備のお邪魔にならないように、私たちはキッチンを後にする。
サッチモは、鼻歌を歌いながらマルクスとルイに手土産を用意してくれて、「これからも美味しい料理をご用意できるよう、頑張ります」って、笑顔でご機嫌だった。
私も、お手紙や飾りボタンを喜んでもらえて、とってもご機嫌。
バイバイって手を振って、今度はちゃんとおうちの中のドアを使ってキッチンから出たの。
マルクスとルイからは、できたての甘い卵焼きとお菓子の匂いがフワっと香って来てて、私は今からもうお腹がすいて、晩ごはんが楽しみになってきちゃった。
+ + +
マルクスが、嬉しそうに卵焼きが入った手提げを覗いている。
胸いっぱいに匂いを吸い込んでるけど、今食べたら晩ごはんが食べられなくなっちゃうからダメだよう。
「マルクスは本当に卵焼きが好きだねえ」
「ん? ああ、そうだな。ステラの家の卵焼きは大好きだ」
「料理人さんの卵焼き、おいしいもんねぇ」
「そうだな。……それに、元気が出るしな」
マルクスは、私を見て、卵焼きを見て、それから嬉しそうにしている。
おうちの料理人さんが褒めてもらえると、とっても嬉しい気持ちになる。
「次は執事さんのお部屋に行こうかな。忙しそうだったらまた今度にしよう」
私がそう言うと、マルクスとルイはわかったって言ってくれた。
ずっと付き合ってくれて、二人は本当にいい友達だなあ。
ヘイデンや若い使用人さんは、いつも忙しそうにしていることが多い。
執事さんの執務室にいるとも限らないから、覗いてみて、いなかったら明日の朝ごはんのときにしよう。
そう思いながら執事さんの執務室に行くと、ヘイデンも若い執事さんもいるみたい。
中から声が聞こえる。
けど、なんだか若い執事さんはヘイデンに怒られているのか、謝っているみたいな声がした。
入っちゃいけないかもしれないから、と、耳を澄ますと、ヘイデンの声がした。
「こうして気づけないから、未熟だと言っているんです。さあ、背筋を伸ばしなさい」
そう、若い執事さんに掛けているだろう声から一拍置いて、執務室のドアがゆっくり開いた。
「いらっしゃいませ、ステラお嬢様。マルクス様。ルイ様。いかがなさいましたか?」
「ヘイデン! あのね、いまって忙しい?」
何かご用があってヘイデンは出てきたと思ったんだけど、ヘイデンは私たちのことが分かっていたみたいな反応だった。
さあどうぞって、お部屋の中に促してくれる。
もしかしたら、料理人さんのサッチモの時と同じで、私の声か何かが聞こえちゃってたのかな。
ヘイデンは私に、優しい笑顔を向けてくれた。
「今、ちょうど一段落ついたところですよ。お嬢様のご様子をうかがいに行こうかと思っていたところだったんです」
そう言うヘイデンはいつもより少しだけ疲れたお顔だった。
どうしたの? って聞いたら、今日は緊急時の信号が出たり消えたり、おうちの中の使用人さんの連絡がバタバタしてた日だったんだって。
故障ならパパに言って直してもらわなきゃいけないけど、ヘイデンは後で様子を見てみるから大丈夫って言っていた。
「そうなんだ。お疲れ様だねえ。でも、ちょうど良いタイミングで良かったあ」
私は安心した。
若い執事さんにもご挨拶して、マルクスとルイと一緒に、お部屋の中にお邪魔する。
棚に書類の束がたくさんしまってあって、机の上にも書き物が積まれている執事さんの執務室は、少しだけインクの香りがする。
「おや、チャーリーはどうしました?」
ヘイデンに言われてそうだったと思い出す。
そういえば、私がどこにいるかも伝えていないから、チャーリーも合流できずに困っているかもしれない。
そう思っていたら、マルクスがヘイデンに軽く手を上げて振って見せた。
「勝手で悪いが、オレがステラと一緒にいるから任せてくれって、三人だけの時間をもらったんだ。わがままを言ってすまない。チャーリーを責めないでやってくれ」
「そうでしたか。うちのフットマンがなにか粗相を?」
「まさか。逆だ。チャーリーがいるとそつがなさすぎて、ハプニングが起きないからな。たまにはいいかと思ったんだ」
そう言ってマルクスは、「あと少し回ったらすぐ彼にステラを返すよ」といたずらっぽく言った。
ヘイデンはやれやれってお顔で「わかりました」って言った。
今日はヘイデンはお疲れモードの日なのかもしれない。
なんとなく、マルクスのしてくれたお話は本当のことと違う気がしたんだけど、マルクスはお手紙のことがばれないように気を使ってくれたのかな。
そうだ、お手紙。
私はさっそくお手紙を二人に渡すことにした。
ソファに座りますか? って執務室の奥に勧めてくれるけど、私は立ったままでヘイデンの服の端をちょいちょい引いて引き留めた。
「あのね、あのね。ヘイデンとイソシギに、渡したいものがあるの」
私の言葉に、ヘイデンも、若い執事さんのイソシギもキョトリとして、体ごとこちらに向いてくれる。
私は少しだけ緊張する。
だって、使用人さんの中でも、ヘイデンは特別。
お勉強の先生におうちに来てもらうようになる前は、私に字を教えてくれたりしたのはヘイデンなの。
私にとって先生って言ったら、最初に浮かぶのはヘイデンのお顔。
ヘイデンの教え方はどの先生よりも優しいけど、せっかくだからやっぱり褒めてもらいたい。
ドキドキしながら、お手紙を出す。
「お手紙を書いたの。ヘイデン、聞いててね」
それから、一回スゥー、ハァーって息をして、お手紙を読む。
上手に間違えないで読めるように、ゆっくり読もう。
「“ヘイデンへ。
ヘイデンのおはようがだいすき。
ヘイデンのやさしいおこえがだいすき。
おねがいをきいてくれる、ヘイデンがだいすき。
ずっとげんきで、そばにいてね。”」
これで少しは元気になってくれるかなって、そろっとヘイデンのお顔を見たら、ヘイデンはお口に片手を当てて目をつぶり、耐えるようにしながらも、ポロポロ涙をこぼしていた。
「ヘイデン!?」
色の白いヘイデンのお顔が赤くなってる。
お目々はぎゅっと閉じられているけど、目頭から、目尻から、ポロポロと涙がこぼれ出てくる。
お口をふさぐように、顎ごと掴むように当てられたお手々はしわしわで、筋張っているそこにこぼれた涙が次々降っている。
「ヘイデン!? どうしたの? 痛い? 嬉しい? つらい?」
私はわかんなくてオロオロしたら、泣いたままのヘイデンが目を開けて、顔からゆっくり手を離して、それから本当に嬉しそうに笑ったの。
「嬉しいです。お嬢様」
ああ、よかった。
喜んでくれた涙だったのね。
ヘイデンのお目々はうるうるで、まだポロリと時折、涙があふれて落ちる。
「お嬢様、抱きしめても、よろしいですか?」
「うん!」
ヘイデンからの、最近では珍しい抱っこだ。
ヘイデンは、長距離や急ぐ移動なんかで必要なとき以外、むやみに私を抱っこしないようにしているんだって前に言って、それからは抱っこしてもらえる機会が減っていた。
ヘイデンがしゃがんでくれて、私はそこに飛び込んでいった。
ぶつかるようにして抱き着くと、ヘイデンは私をぎゅっと抱きしめてくれた。
ヘイデンの体は触れると細くて、少し骨っぽい。
だけど力強くて、それから少しだけインクの匂いがして、私はこの匂いがとっても安心するの。
そのまま、ヘイデンは腕で私の座るところを作るみたいにして抱き上げてくれる。
ヘイデンを心配して私が手放しちゃったお手紙も、そのときに大切そうに拾って渡してくれた。
ヘイデンの首につかまって、目線の高くなった私は、ヘイデンのお顔を見上げた。
「あのね、お手紙に似顔絵も描いたのよ。ヘイデンの白い髪形が一番難しかったの」
「こちらですね」
ヘイデンは私の代わりに片手で上手にお手紙を広げて見てくれる。
嬉しそうに目尻を下げて、「お上手に描けていますね。これはどんな時の顔ですか?」と聞いてくれる。
「あのね、これは私の名前を呼んでくれているときのお顔なの。私、ヘイデンが“ステラお嬢様”って呼んでくれるの好きだから、そう言ってくれてるお顔かなあ」
ヘイデンは、お手紙を持っている手の親指で、優しく紙の表面を撫でている。
まばたきしたお目々から、最後まで溜まっていた涙がこぼれた。
「ありがとうございます、“ステラお嬢様”」
「ふふ、嬉しい。ヘイデン、だぁいすき」
私がヘイデンのほっぺに顔を寄せると、ヘイデンもほっぺを寄せて、一度すりっと、すり合わせてくれた。
「私もステラお嬢様が大好きです。……今日の疲れもなにもかも、吹き飛んでしまいました」
ヘイデンは笑っている。
私は「本当? 良かったあ」って言って、ヘイデンに抱っこしてもらっているままイソシギのお手紙を読んで渡すことにした。
だって、ヘイデンの抱っこは貴重なのよ。
すぐ下ろしてもらうのはもったいない。
イソシギは、お手紙のことを「俺にも、いや、私にもあるんですか!?」って飛び上がるほど喜んでくれた。
私は若い執事さんのイソシギへのお手紙を読む。
「“イソシギへ。
いつもおしごとごくろうさまです。”
はい。これイソシギのだよ。どうぞー」
「え、あ、短、え、てか敬語、差が、え?」
イソシギにお手紙を渡したけど、なんだか反応はいまいちだった。
使用人さんたちの中で、一番お話ししたことがないのが若い執事さんのイソシギだ。
イソシギは、お祭りの日はおやすみでいなかったからおわびもいらないし、お手紙にはいつもお仕事をしてくれているお礼を書いた。
お顔も、私が描きやすい特徴がなかったから、すごく簡単な似顔絵になっちゃった。
これからもっとイソシギのことを知っていけたらいいなあって、私は来年のお手紙はもっと頑張ろうって思ったのよ。
それから、二人に飾りボタンを渡した。
ヘイデンには銀色に見える大きなお花がひとつ入ったボタン。
イソシギには、お店のお姉さんが一番シンプルで人気があるって教えてくれた小花がいくつか入っているボタンをプレゼントした。
二人とも喜んでくれて、今度レイチェルと一緒にどこに付けるか決めたいから、ヘイデンにも相談に乗ってもらうことにした。
「ステラお嬢様。以前言っていたことを訂正してもよろしいですか?」
私を抱っこしたままのヘイデンが、少し困った笑顔でそう言ってきた。
「なあに?」
「これからも、時々抱っこをして歩きませんか?」
「え! いいの!?」
私はヘイデンの腕の中で、両手を離して喜んだ。
ヘイデンは危なげなく抱き留めてくれている。
それまで黙って見ていてくれたルイが、私が大喜びする様子を見て「ステラは子どもだな」ってからかってきた。
「いいもん! ヘイデンはレディみたいに抱っこしてくれるのよ! ね、ヘイデン」
「ええ、ステラお嬢様。抱き上げられていても、素敵なレディに見えるように致しましょう」
「うふふ、私のヘイデンはすごいのよ」
私がルイにふふんって笑ってみせると、ルイは呆れたってお顔で「へえ」と言った。
そんなに嫌そうなお顔をしなくてもいいのに、ルイは時々いじわるなの。
それからヘイデンは、若い執事さんに、休憩が終わったらするお仕事を指示していた。
それから、ヘイデンは私たちと一緒にお医者の先生のところまで行ってくれるって言ってくれた。
私は、ヘイデンの目元が少し赤くなっているのも気になっていたから、それならお医者の先生に診てもらえるねって思って、抱っこしたまま連れて行ってもらうことにしたの。
ヘイデンに抱っこされたままの移動は特別で、楽ちんで、私はとっても嬉しかったの。
私たちは、若い執事さんにバイバイして、執事さんの執務室を後にしたの。
若い執事さん、頑張れ!
直前までヘイデンは割とキレてました。
庭師や門番が緊急信号上げては取り消してを繰り返すから……。





