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怖がっている話をしよう。
人間性が薄れていく、という感覚について。
自分の目の前からこぼれていくのは「良かった」という感覚ばかり。
覆水盆に返らず。即ち、溢れた良かったは陳腐になる。輝きを失った「良かった」は、無感動に取って代わられる。
代わりに記憶に残るのは、悪かった記憶ばかりだ。
自分が悪かった記憶。誰かに受けた悪かった記憶。
言葉だけで突き付けられた現実。
そういうものだけが残る自分が卑しくて、怖くて。
怖くて、表に何も出さないまま、口の中でもごもご独りごちれば、案外みんなが聞いている。
聞いているから、他の人には聞けなくて。
雲隠れ、そして。光隠れ給いにし後。
僕は今日も、一人のたまいける。
いつか死ぬことが、僅かばかりの救いです。




