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咲いた恋の花の名は。  作者: しっちぃ


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サクラ―『精神の美』

「邑先生、……いっぱい泣いても、いいですよ、今までの分も、全部」


 今まで、ずっと我慢してたってくらい、流してる涙。

 そんなものをずっとこらえてた邑先生は、優しい人なんだなって心から思うし、もっと、好きになる。

 心に残った傷も全部、私が包み込んで癒したい。

 嗚咽を押し殺そうとしてるのがわかるけど、それでも邑先生の涙声は収まらない。

 私よりずっと年上なのに、普段の邑先生からは全然思わないのに、……かわいい、なんて感情が、胸の中で湧く。

 

 ……ぽん。


 今までしてもらった分のお返しも込めて、邑先生の頭を軽く撫でる。

 何してるんだろうって、客観して頭どころか体中熱くなる。だけど、その手は、どうやったって止まれない。

 

「な、何して……っ」


 うつむいた顔を上げて、こっちを睨むように見つめる邑先生。

 その顔は、泣いたせいなのか、撫でられたからなのか分からないけど、……赤く染まってる。


「嫌でした?……それなら、ごめんなさい」

「べ、別に、嫌じゃ、ない……っ」


 どうしよう、止まんなくなる。もっと、邑先生に触れてたい。


「じゃあ、……もっと、してもいいですか?」

「……好きにしろ、バカ」

「それなら、……好きにしますね、邑先生」


 軽くぽんぽんと叩くような撫で方から、邑先生の髪をかき回すようなものにする。

 うつむいた邑先生の顔が、あんまり見えないけど赤くなってるって分かる。くすりと、笑い声が零れてた。

 邑先生の髪がくしゃくしゃになるくらい髪を撫でて、恥ずかしさに耐えきれずに手を離す。


「ねえ、邑先生?……私のこと、どう思ってますか?」


 知りたい、邑先生の、本当の気持ち。邑先生が誰かを恋することができない理由も付き合えないのはわかってるはずなのに、一抹の期待に、すがりたくなる。


「そ、それは……」


 邑先生の顔が、もっと赤くなっていく。慌てて顔を覆う邑先生は、いつもの邑先生らしくない。……まるで、普通の女の子みたいな反応に、胸の奥が、キュンってする。


「江川のこと、気が付いたら考えてて、……その度に、何か胸が熱くなる」


 恥ずかしそうに言う声は、最後のほうが消えかけていて。それでも分かる。私が邑先生に抱いてる気持ちと、その気持ちはちょうど同じものだって。今まであんなに恥ずかしかったのが、嘘みたいに言える。


「私も、一緒ですよ、……嫌でしたか?そうなるの」

「いや、そんなこと、ない……っ」

「それなら、私も同じ気持ちですよ。……私、邑先生のこと、考えるだけでドキドキして痛くて、でも、それ以上に甘くて」


 邑先生が、私のこと恋してる。それだけで、胸の中が幸せで満たされて、……でも、お付き合いできたわけじゃないんだ。満たされない気持ちが、胸の中に浮かぶ。


「じゃあ、私は、江川のこと、……好きって、ことなのか?」

「私は、そう思います、……だから」


 無理やり笑顔を作って、心の中の、この溢れんばかりの気持ちを封じる言葉をぶつける。こんなに近づいたって、邑先生の心にできた大きな傷に、これ以上触れることはできない。『好き』という気持ちで私が邑先生を傷つけたら、もう一生邑先生はその傷を抱えていかないといけないから。

 ようやく見つけた、邑先生の心から一歩下がるための言葉は、これ以上、この気持ちで私の心を壊さないようにするため。


「私、ずっと待ってますね、邑先生が、この気持ち、信じてくれるまで」


 永遠にないはずの事で、この恋を永遠に封じ込める。それでも、全部あきらめることができなかったのは、私が、どうしようもなく邑先生を好きになっていたから。

それでも手を出せない智恵さんが切なくてつらい

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