表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲いた恋の花の名は。  作者: しっちぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/25

シュウカイドウ―『恋の悩み』

「ちょっと、来てほしいとこがあるの」

「な、何?」


 何気ない言葉のはずなのに、赤石さんの声には、何かまっすぐな意思というか、そんなものがあるように思える。

 迷いなく歩くその足を、早足になって追いかける。渡り廊下を渡って、赤石さんがノックしてる部屋を見ると、用務員室と書かれてある。


「はい、……なんだ、また来たのか」


 不意に聞いたその声で、心臓が止まりそうになる。紛れもない、邑先生の使ってる部屋だったんだ。赤石さんが、邑先生の部屋によく訪れるような関係だったことにも。


「そういうこと、また部屋貸してくれる?」

「まったく、しょうがない奴だ……」


 軽く頭を押さえながら、やれやれという感じで部屋に入れてくれる。


「どうしたんだ、江川まで」

「ちょっと、赤石さんに連れてこられて……」

「なんだ、そういうことか、二人とも、お茶、飲むか?」

「はい、お願いします」

「私のも、お願いね」


 慣れた手つきで、お茶を入れてくれる。

 二人のあっけらかんとした会話が、ちょっと羨ましくて、頭の中がもやもやする。こんなんで、嫉妬みたいな気持ちを抱いてしまう。……やっぱり、私の恋は、抱え込みすぎて、自分じゃ背負いきれないくらいに重い。

 

「ほら、できたぞ」

「いつもありがとね、お姉さん」

「あ、ありがとうございます、いただきます」


 赤石さんが邑先生のこと「お姉さん」って呼んでることに、ますます頭の中のもやもやが激しくぐるぐると回る。私よりも、何歩も踏み越えられてる関係。もしかしたら、……心を折るような想像が頭に浮かんで、慌てて首を振る。


「どうした?具合でも悪いか?」

「そんなこと、ないです」


 心を落ち着かせようと、邑先生が淹れてくれたお茶を飲む。あったかくて、おいしくて、ほっこりして、ちょっとだけ落ち着いた。


「おいしいです」

「それならよかった、……悪い、仕事入ったから、帰るときはそのままでいいぞ」

「はーい」


 工具箱を取って、どこかに行ってしまう邑先生。後ろのポケットには、紺色のハンカチがちょっとだけ見えて、……多分、私があげたのだ。そのことに、どうしてもほっぺが赤くなってしまう。


「……倉田先生のこと、大好きなのね」


 突然の言葉に、急にびっくりしてしまう。


「ふ、ふえ!?なんでわかったの!?」

「見てれば分かるわ、こんなに分かりやすいのに、どうして気づかれないと思ってたか不思議なくらい」

「そ、そうだけど……、分かんないよ、どうしたらいいか」

「だったら、……いい情報、教えてあげよっか?」


 邑先生のこと、知りたい。そのことが叶うのは、ちょっと嬉しい。

 だけど、こんな風に聞いちゃって、いいのかな。せめぎあう反対の心に、心の奥が混乱する。


「じゃあ、……おねがい」

 

 でも、心をいいだけ締め付ける恋心に、勝てるわけない。

 その言葉を聞いて、赤石さんはゆっくりと口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ