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咲いた恋の花の名は。  作者: しっちぃ


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ハマナス―『あなたの魅力に惹かれます』

 シャワーを浴びてから、いつも通りに学校に行く準備をすます。

 邑先生に、近づきたい。ベリーショートの髪がよく似合う、まるで男の人みたいに凛々しい姿を頭に浮かべる。

 鏡の前の自分を見て、大丈夫ってうなずく。邑先生に近づく勇気も、もうもらったから。


 寮から学校までの道を歩いてるときに、ふと、遠くの花壇を手入れしている人影を見つける。あの青いつなぎは、まぎれもなく邑先生のもので。

 何事もないように通ろうとして、邑先生がこっちを見て、……右手が、何気なく上がる。周りを見ても、朝練が始まるのとホームルームのちょうど間の時間に、こんなとこを通ってるのは私だけ。

 おずおずと、私も手を軽く上げて返すと、何事もなかったみたいに花壇に向き直る邑先生。


 これって、一体どういう事なんだろう。些細なことで心が揺らぐのは、抑えられない。ただの挨拶かもしれないし、……もしかしたら、もっと深い意味があるのかもしれないし。その意味を掴むには、まだ私は、邑先生のことを知らなすぎる。

 一番乗りをした教室で、教卓にあった座席表で倉田さんの席を探す。窓際の一番後ろにある私席の3つ横で、そういえば、そこの人がいっつもノートやら筆箱やらを落としてたなって思い出す。

 


 教科書をぱらぱらとめくりながら、時間が過ぎるのを待つ。

 ホームルームの前の時間、倉田さんが教室に入ってきた。ドアの影から、木隠さんが倉田さんを心配そうに見つめている。

 そのまなざしに見つめられながら、倉田さんが鞄を開けて、その中身を盛大にぶちまけた。

 もう恒例のことみたいにはなって、みんなそんなに気にしてはいないけど、倉田さんに用もあるし周りの人一緒に拾いにいく。

 

「大丈夫?」

「別に、なんでもないし」

 

 何度も慌てて教科書を拾い損ねる倉田さん。その言い方は、なんとなく邑先生っぽいなって思う。

 なんだろう、高校時代の邑先生を見てるみたいで、自然と笑みがこぼれる。邑先生が、こんな風にうっかりする姿は想像できないけど。

 無事に床に落ちてたものは机の上に置きなおして、突然倉田さんの顔がこっちを向く。


「ん、……ありがと、で、何で笑ってんの?」

「ごめんなさい、……なんか、倉田先生にそっくりだなって」


 その言葉を発した瞬間、周りの空気が凍り付く。

 

「わ、私が、お姉ちゃんなんかと……っ!?」


 言葉になってない唸り声を上げながら、私に飛びかかる倉田さん。慌てて飛びずさって避けると、そのままこけた拍子に後ろのロッカーにぶつかって鈍い音が鳴る。


「だ、大丈夫!?」


 にわかに教室がざわめき出す。倉田さんは、倒れたまま動いてくれない。

 もしかして、死んでたりしないよね。首筋に手を当てるとちょっと早いけど脈があって、胸をなでおろす。


「わ、私保健室に運んでくるから、先生来たら言っといてくれない!?」


 返事も聞く余裕もなく、おんぶさせるように教室から出る。倉田さんの体は、案外軽くて、私でもなんとか運べる。邑先生だったら、もっと簡単にどうにかしてくれるのかもしれないけれど。

 

「あ、あの……。私も、手伝いますよ?」


廊下まで運ぶと、隣のクラスの木隠さんが声をかけてくれる。去年は一緒のクラスだったけど、仲良くなれたのかはわからない。内気な木隠さんからたまに話しかけてくれるときがあるから、仲が悪いわけじゃないとは思うけど。


「いいんですか?お、お願いします……」


  ちょっと軽いとはいえ、人を一人保健室まで運ぶのは、さすがに骨が折れるから、手伝ってもらうことにする。

 一度背中の倉田さんを降ろして、二人で肩を抱える。ちょっと重そうにしてる木隠さんが気になって、ちょっとだけ私の方に倉田さんを寄せる。


「楓ちゃ……倉田さんに、お姉さんのこと言ったんですか?」

「え、じゃあ……」

「知らなかったんですか!?」


 木隠さんが、驚いたように声を出す。こんな大声を上げるなんて知らなかった。普段のか細い、今にも消えそうな声と、休み時間にどこからか聞こえる美しい旋律くらいしか聞いたことがなかったから。


「倉田さんとはクラス同じになったことなくて、あんまり知らなかったんですよね」

「そうなんですか……」


 保健室までの道が、普段の何倍にも感じる。ようやく辿りついて、倉田さんを抱えてないおうの手でドアをノックしてから入る。


「失礼します、あの……」

「ああ、また倉田さんね」


 保健室に入ると、養護の先生がこっちを振り向く。そして、私と木隠さんに抱えられて、今だ目を覚まさない倉田さんを見て、あきれたような心配そうな顔をした。


「いっつもこうなのよ、倉田さんってば。でも、こんな時間なのは珍しいわね……」

「ごめんなさい、よろしくお願いします」


 木隠さんの声に、倉田さんを抱きかかえる先生。そのままベッドに寝かせておいてくれるらしい。


「もう教室戻っていいわよ、ホームルームも始まるし」

「ありがとうございます、先生」


 二人で、また教室に戻る。そういえば、なんで木隠さんは、倉田さんのことをそんなに気にかけてるんだろう。木隠さんと倉田さんは一緒に住んでいるとか、お付き合いしてるっていう話を、どこかで聞いたことがある。ただの噂かもしれないけど、火のないところに煙は立たない、なんてことわざもある。


「あのさ……、木隠さんと倉田さんって、どういう関係なんですか?」

「それは……内緒ですっ」


 若干慌てたような声。その顔は、ちょっとだけ赤くなっていた。


「ごめんなさい、変なこと聞いて」

「いえ、大丈夫です」

 

 そう言って、木隠さんのクラスに着いていて、気が付いたら隣にいたはずなのに教室に戻っていた。

 次の教室で、私も元いた教室に戻る。自分の席に座って、また物思いにふけってしまう。

 邑先生のこと、全然わかんなかったな。うちのクラスの倉田さんが、妹だっていうことくらいしか。

 邑先生本人に聞けばいいのかもしれないけれど、そんなに深い関係でもないし、そんな勇気は、まだ私の中にはなかった。


『百合ing A to Z 〜ゆりんぐ・えー・とぅー・ぜっと〜』(http://book1.adouzi.eu.org/n5455dw/)に登場する二人を出してみました。キャラねつ造してたり辺な設定を付けたして申し訳ないのです


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