表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
序列最下位の陰陽師、英雄になる。  作者: 澄空
第五章『驕り高ぶる陰陽師達、“王”を名乗る。』
181/239

第173話『反転』



「陰陽道」の起源――――それは元を辿れば至極()()()()な概念体系を有している。

 ――――それは、「陰陽五行論」。

 古代大陸より伝来したその思想は、 万物を「陰」と「陽」、そして五つの性質を持つと定義し、その組み合わせによって事象の説明を果たそうとした、大いなる先駆者達の研究の遺産である。

 その前者。

 つまりは、「陰」と「陽」。

 陰陽道の根幹を成す、その思想は陰陽道全盛の古代日本においても、重要視されていた。



 ――――形質反転。

 それは、古代の日本で研究を重ねる陰陽師にとっても、目指すべき事象制御術の一つ。

「陰」を「陽」に。

「陽」を「陰」へ―――――。

 かつては「奇跡の御業」とまで言われたその陰陽術は、時代が進むにつれ、その価値を失う。

 西洋で同時期に発展していた「化学」と呼ばれる学問分野の台頭――――。

 それにより、様々な物質を容易に生み出せるようになった今現在、「形質反転」の優位性も、も存在しない。

 加えて、基本概念であった「陰」と「陽」は、いつからか、それに取って代わる言葉で説明がなされるようになった。

 今や、現代を生きる陰陽師達は、「旧型」「新型」に関わらず、「形質反転」という技法を過去の遺物として扱うようになった――――。





 ***




「嘘……」


 隣にいる若い清桜会女性隊員の口から、()が出ているのを来栖まゆりは視認。

 そして、そのすぐ後、それは()()()()()ことを悟る。

 ――――修練場内の温度が、急激に低下している。

 同時に、全身を覆う悪寒。

 指先などの末端からは体温が急速に失われていくのを感じる。


「……!!」


 そして。


 まゆりは、おおよそ戦闘中とは思えない、()を見た。


 古賀先輩達が今しがた戦闘を繰り広げてる結界内を滞空する、光で輝く微細な粒子。

 その事象を、まゆりはかつて見たことがあった。


 そう。

 遙か北方、()で。



「っ……!!」


「何、これ……!!」


 怨敵の発生させているであろう眼前の()()に、春臣は言葉を失っていた。

 ――――これは、何だ。

 氷結系、自然事象系の人造式神……いや、違う。


 脳裏に浮かんだ可能性を即座に断ち切り、痛みを感じるほどの冷気に身震いしながら、歯を食いしばる。


 ――――人造式神に、ここまでの奇跡をもつモノは存在しない。

 氷の礫を生成したり、局所的な氷結現象を誘発することが関の山。

 現清桜会の技術力の天井であるはず。

 しかし――――。

 寒さを感じる中でも、汗が伝うことを春臣は始めて知った。


「これ……、何……」


 言葉を失っている二人を一瞥し、京香は静かに言葉を紡いだ。


()()、知ってる?」


 京香の指さす先には、ただゆっくりと華麗な粒子が滞空しているだけ――――。


「さっき()()()がぶちまけた水の残滓……。

 それが空気中で凍って、光で反射しているんだけど。

 ……ダイヤモンドダストって聞いたことない?」


「はぁ……!?

 それが何だって……」


 そこで有栖は、ダイヤモンドダストのに気付く。

 外気温、氷点下10°以下――――。

 現状と照らし合わせると、地表と上空で大きく気温が違う。

 つまり。

 ――――古賀京香(コイツ)が制御しているのは、上空の外気で。

 今、アタシ達を包むこの寒さは、()()を感じているだけ……?


 仮にそうであるならば。


 ()()が、アタシ達に向けられたら。



「っ……!!」


 有栖が感じた悪寒は、寒さだけじゃなかった。

 その様子を見届け、京香は再度霊力を解放する――――。





「『赤竜』反転体――――、碧天乃虎(へきてんのとら)、青白磁」





 上空を飛来する光り輝く粒子が収束を始め――――やがて、形作られる()



 それは。



 古賀京香の到達した、()()を象徴する式神だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ