ダンジョンアタックで奴隷の見極め 彩絲編 6
男性が、ひゃあ! となる、猟奇的な描写があります。
なんか男性ばかりが酷い目にあう描写ですみませんと思ったのですが、女性も大概酷い目にあっていました。
今回は残酷描写多めですのでご注意ください。
しかしクレアは依頼内容を把握しているのだろうか?
採取は諦めて、戦闘技能を彩絲に見せつける道を選んだのかもしれないが、それだけでは意味がない。
アリッサが避ける男たちとの共闘も、この先あり得ないので見極める意味もないのだ。
何のための守護獣で妖精で精霊で、奴隷だと思っているのだろう。
身内以外と共闘しないための完璧な布陣なのだ。
そこが理解できていない点は、頭が悪いから仕方ないか……で、片付けてもいいのだが、依頼内容が全く頭にないのは絶望的だ。
依頼達成できない=アリッサの顔に泥を塗る行為なのに、気がつかないのだろう。
依頼の件を別にして考えたとしても、クレアはゲジを徹底的に避けて戦っている。
採取も一切しない。
男たちもそれに倣った。
クレアも男たちも、冒険者としては落第だ。
クレアたちは三人のことなど気にもかけず……というよりは、三人よりも少しでも早く先行しようと目論んでいるのだろうが、浅はかすぎて笑うしかなかった。
「……よろしいのですか?」
先行する者たちを睥睨する彩絲に、ネイが疑問を投げかける。
「大丈夫じゃ。全員に小蜘蛛を付けてあるからの。監視から捕縛までこなす優秀な者たちじゃ。野放しにしておるわけではないので、安心するがよい」
「! 失礼いたしました」
「うむ。気分を害してはおらぬ。我自身をまだよく知らぬからの。むしろ抱いてしかるべき疑問じゃからな」
「では私たちは彩絲さん庇護の元で、安心して今まで通り依頼達成に向けて勤しみますわぁ~」
監視ではなく、庇護と表現するローレルは彩絲に全幅の信頼を置いているのだろう。
悪い気分ではない。
頷きあった三人は、それぞれの作業に取りかかる。
ネイはローレルの肩から岩へと飛び乗って、指定容器をしっかりとした足場へ置くとやわやわを丁寧に詰め込み始めた。
綺麗なやわやわを見極めながら、専用スプーンを振り回すネイは愛らしい。
アリッサが見ても喜ぶだろう。
やはり残った奴隷たちと一緒に、一度はダンジョンへ潜らせたい。
ローレルとネマは、クレアたちが残していったゲジを狩りまくる。
依頼以上の数を入手する心積もりなのだろう。
それだけゲジの肉は需要が高い。
ゲジは外見こそ悍ましいが、塊肉になってしまえば安価で味も悪くないのだ。
丁寧にやわやわで肉を柔らかくし、この階層で採取できる、主に匂い消しに使われるハーブ系の植物・けしけしと一緒に煮込んだり炒めたりすると、味も格段にあがる。
うまく調理すれば王都初級ダンジョンで取れた材料で作る、一番美味しい料理になるとすら言われているのだ。
「アリッサにも食べさせたいが……ゲジの外見を知ったらどうだろうのぅ?」
食に対して貪欲なアリッサが、どうやら昆虫系は余り得意ではないようだ。
食い気が勝つか、食材に対する嫌悪が勝つか。
下世話だが少しだけ気になった。
「まぁ、彼女が嫌がることをするつもりは微塵もないがのぅ」
それを故意にやってしまったら最後。
この世界にはいないはずの御方に瞬殺されるだろう。
故意でなくても何らかの罰は受けねばならない。
彩絲はそれをよく知っている。
アリッサに侍る者は何よりも、それを、理解しなくてはならない。
「三人は大丈夫のようじゃが、あやつらは……」
調理法を考えながらゲジの肉を回収する二人に、ネイも自分の好む料理を提案している。
この三人は自由にやらせておいても問題はない。
何かあれば報告があるはずだ。
そのときに対応できればいい。
だが、奴らは。
「これは……ふむ。妹と離されるとここまで堕落するものかのぅ」
クレアたちに付けていた小蜘蛛に自分の視点を合わせる。
何と、クレアは男たちとまぐわっていた。
初級ダンジョンだから余裕があると思い込んでいるのだろう。
男のうち二人が周囲を警戒し、クレアは残った男二人の相手を同時にしている。
三人の耳には届いていないようだが、それも時間の問題かと思う大きな嬌声を上げていた。
お蔭でモンスターがひっきりなしだ。
モンスターを相手取る二人は、ドロップアイテムを拾いもせずにモンスターだけを牽制し、早く交代しろ! としつこく喚いている。
我慢できなくなったのだろう。
モンスターと対峙していた男が一人、クレアにむしゃぶりついていた男を無理やり引っぺがして、成り代わった。
「痛てっ!」
足元に下着とズボンを絡ませた男が、無様にも仰向けに転がった。
「おい! お前ら! いい加減にしろっ!」
転がった男の頭が、最終的に一人でモンスターを屠っていた男にぶつかってしまう。
男は怒りのままに声を荒らげる。
しかし、クレアに夢中になっている男どもの反応は鈍い。
転がった男はよろよろと起き上がり、戦闘に加わろうとせずに、そのままの格好でまだクレアを貪ろうとしていた。
「こんのっ!」
モンスターに剣を向けながら男は、器用に転がっていた男を蹴り飛ばした。
無理もない。
既にモンスターは一人で倒せる数ではなくなってしまっていた。
そのタイミングで彩絲は小蜘蛛たちに指示を飛ばし、モンスターを男たちに向かって追い立たせた。
対峙しているモンスターの軽く倍はいるだろう数が、一気に男たちとクレアへ躍りかかる。
「ひぎゃああああああ!」
男の股間にそそり立つそれが癇に障ったのだろうか。
人の顔ほどの大きさしかないニーカの鋏が、男のそれを無残に切り落としていた。
切り口からは、驚くほどの血液がぴゅーと噴射される。
「ぽ! ぽーしょん!」
部位欠損を治すポーションは非常に高価で、手に入りにくい。
王都の教会であれば治せるだろうが、ポーション以上に莫大なお布施が必要だ。
男はニーカが鋏に挟んでいるそれに手を伸ばそうとした。
モンスターなりに何かしら察するものがあったのだろうか。
ニーカは鋏で挟んでいたそれを、さくさくと切り刻んでしまった。
「うそだぁ! うそだぁああああ!」
切り取られた部位が残っていれば欠損部位の再生ではなく、くっつけての治癒となったので、かかる費用も安く、完治する確率も段違いで高かったのだ。
「ちくしょう! ちくしょう!」
股間からだらだらと出血をさせた男は、震える手で取りだしたポーションを股間に振りかける。
出血は止まったようだ。
ポーションを取り出すときに、ポケットに入っていたネラが転がり出したことには気がついていないだろう。
周囲を見回したネラは、誰を助けるでもなく、転がりながら走って岩場の影にうずくまった。
狂乱する男を見る目は、ざまぁみろ! とばかりの蔑みを孕んでいた。
ポケットの中は居心地が悪かったらしい。
「おまえ、おまえのせいだ! このやろうっ!」
「おいっ!」
いまだ一人で懸命にモンスターと戦っている男へ向かって魔法が放たれる。
「ぎゃああああああ!」
至近距離で放たれたファイヤーボールは男の上半身を焼いた。
特に顔の火傷が酷い。
「な、何やってんだ、くそがっ!」
クレアの体を突き飛ばしたリーダーが、焼かれた男にじゃぶじゃぶとポーションをかける。
お蔭で火傷は随分と治まった。
それでも見た人が思わず顔を背ける、痛ましい火傷独特の引き攣れが顔に残ってしまっている。
「ばか、じゃ、ね? おれじゃなく、て。やるなら、やつ、だろ?」
リーダーからポーションを受け取った男が、ここにきてようやく独り占めしていたクレアを離した男に指先を向けた。
「あ? あ? あぁ! あああ! そうだ! そうだな! そもそも、きさまがおれを、ひっぺがさなければ、よかったんじゃねぇか!」
再びファイヤーボールが放たれる。
「きゃあああ!」
しかし炎は咄嗟に伏せた男を通り越して、クレアの頭部を焼いた。
アリッサが好んだ垂れ耳の上部が焼けただれて、長い耳が両方ともぼたりと落ちる。
「いたい! ひどい! ひどい! いたい! わたしがなにをしたっていうのよぉおお! あんたたちをよろこばせてあげたじゃないのぉ!」
男たちの鞄から素早くポーションを抜き出したネラが、クレアの肩に乗ってちぎれた耳の根元にポーションを振りかけようとした。
「よこしなさい! よけいなまねはしないでっ!」
しかしクレアはネラからポーションを奪って、ネラの体を叩き落とした。
「だいたい! なんであんたが、けいかいしてないのよ! おとこをよろこばせられないんなら! しゅういのけいかいぐらい、やってあたりまえでしょう!」
ポケットに突っ込まれて目を回していたネラに対して酷な話だと思うも、気がついてもネラはポケットの中で安穏としていたのではないかとも考える。
ポケットから出たあとも、ただ様子を見るだけで警戒を一切していなかった。
「ひ、ひどいっ! 聞いて! 聞きなさいよ! ネマ、ネイぃいいい!」
男たちが内輪もめしている間に追いついていた三人は、粛々と集まったモンスターを倒していた。
ローレルの調整されても凄まじい氷魔法に、男たちは自分の状況も忘れて見惚れている。
ネマとネイもローレルが取りこぼしたモンスターを確実に屠っていた。
「……何言ってるの? 私たちにかかわらないって、ネラ姉も入っているんだけど」
モンスターを絶命させながらも、ネイに変わって答えるネマの姿は、ネラと比べものにならぬほど姉らしい。
「それは! そう、だけど! こんな緊急事態なんだから! 助けてくれるの、当たり前じゃない!」
「愚かな、ネラ姉。ただの内輪もめが緊急事態とか、寝言は寝ているときに言って」
モンスターの数が減ったので、ネイはドロップアイテムの回収に入っている。
ニーカの身とレアドロップのニーカの爪肉、スカイフィッシュの切り身、焼いた肉特有の美味しい匂いがするミートスライムの肉、硬くて癖があるけれど栄養価が比較的高めなダントンの肉と、レアドロップのダントンの足に加えて、大量のゲジ肉の塊が山と落ちているのだ。
アリッサに食べさせたい料理の数々が頭に浮かぶ。
何でも完璧にこなす御方には遠く及ばないが、彩絲はそれなりに料理もこなす。
ノワールが黙っていなさそうなので、腕前を披露する機会に恵まれるかは微妙だが、一度くらいは手料理を食べてもらいたいものだ。
怒り狂ったネラが、またしてもネイに襲いかかろうとする。
一番弱いと分かっている者を狙う屑。
狙った相手が実妹だというのだから、本性が知れるというものだ。
彩絲は小蜘蛛を三匹ほど放って、ネラの体を蜘蛛糸で完璧に拘束した。
じゃぶじゃぶって、ひらがな? カタカナ?
と思って調べたのですが、結局どっちか分からなかったです。
現時点の推奨表記をよろしくない! とする声が大きかったように思うのです。
で。
自分の好みで、ひらがなにしました。
擬音は基本、ひらがなが好きです。
推奨表記は、カタカナなんですけどね。
次回は、ダンジョンアタックで奴隷の見極め 彩絲編 7 の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。




