旦那様は時々頼まれ講師。べたべたに甘い。
仲良し話を書く時は基本的に、糖度増量を心に誓い書くのですが、自分的には、甘さが足りぬわぁ!と毎回思います。
しかし何故か、読者様には、甘さが身に沁みますー! と感想を頂きます。
身内に至っては、砂糖吐けるわー、です。
おっかしいなぁ……。
ちなみに今回は周囲に人がいるので、甘さ控えめを意識しました。
「では、皆さん! 講義を始めたいと思います。5人のグループに分かれて下さい。妻は穂河さんに任せて宜しいでしょうか?」
「光栄ですわ」
「そこの三人は、三人だけでお願いします。念の為聞きますが、どなたか彼女達と組みたい方はいらっしゃいますか?」
首を振る方、手を振る方、肩を竦める方、三人を否定的な眼差しで凝視する方々。
誰一人として々グループに所属したい女性はいないらしかった。
「穂河さん達のグループはこちらに。三人は一番奥のそちらでお願いします」
「せんせ! ひどっ!」
夫に駆け寄ろうとするも、見事な女性バリケードが出ていて許されない。
冷ややかに見降ろされて、手首を掴まれて、あるいは突き飛ばされるようにして、挙句は蹴られて所定の位置へつかされた。
酷い対応だったにも関わらず、夫を含め誰一人として止める者はいなかった。
「さぁ、ゆっくりと召し上がって下さい」
教えるのが上手すぎる夫の説明は解かりやすい。
特に目立った失敗をしたグループはいなかったようだ。
何時もなら終了後の質問が相次ぐのかもしれないが、今日は私に遠慮しているらしく、夫に私、既に友人認定された三人のテーブルへ足を運ぼうとするのは、間抜けとしかいいようがない三人しかいない。
だが、その三人も強引に自分達の席へつかされて、渋々、辛うじて失敗にはならなかったデザートを口に運んでいる。
「柊先生。もしかして、今日の飲み物は麻莉彩さんがいらっしゃるから決められたメニューではありませんか?」
飲み物はスイート・マリア。
アマレットのリキュールと生クリームをシェイクした、比較的簡単なカクテル。
味わいは優しく、乳白色の色合いがなんとも表現しにくい、温かみを与えている。
デザートの飲み物としては甘めかもしれないが、相応しくもあると思う。
「わかりますか? 麻莉彩は私の永遠の聖母ですから」
「すいーとなマリア様!」
「柊先生にだけ優しいマリア様!」
「……貴女方にも多少であれば優しくあっても良いと思っていますよ」
「ふふふ。嬉しいですわ」
置いて行かれている気がするも、気にはならない。
目の前のデザートを攻略する方が先だろう。
何しろ皆、楽しそうだ。
私はしばし迷い、チーズスフレに手を付けた。
10センチ程度のココットに入っているスフレは、型から取り出せないくらいにやわらかい。
中央をこつんと叩いて崩し、スプーンを入れると一杯目を掬い上げる。
湯気が立っているので、軽くふーふーと息を吹きかけてから、口に入れれば、すうっととけてしまった。
口の中に残るチーズの香りと温みがなければ、食べたのを疑う秀逸の口解けだ。
「私も良く美味しそうに食べるって言われるけど! 麻莉彩はそれ以上かも!」
「もしかして、柊先生餌づけしていらっしゃいません?」
「それにしては、麻莉彩さんの手際はとても良かったですねぇ」
「……んっ、くっ。料理は私もしますよ。でも喬人さんの方が上手なだけです」
「麻莉彩の腕前はなかなかのものですよ? 今度家でティーパーティーでもされては如何でしょう?」
夫の有り得ない発言に瞬きを繰り返す。
三人は同時に頷くと即時スケジュールの調整を始めた。
「……喬人さんも参加するの?」
「いいえ。たまには女性だけのティーパーティーというのも良いのでは?」
「私は嬉しいけど……」
ここまで、許されると何か裏があるのかと勘繰ってしまう。
どんな裏でも夫が、自分の為にならない事をするわけもないのだが。
次回は20日予定です。
旦那様は時々頼まれ講師。これは……召喚?
異世界トリップ、やっはー! な話を続けたいところですが、その前に旦那視点の話を一つ。
現時点では出会い編、引き取り編、両親姉妹排除編、義両親兄弟排除編を考えています。
まずは出会い編。
何時もの短め文章よりは長くなりそうな予感がします。
次回は20日予定。




