六十七話 「終結」
戦闘も終盤に差し掛かりアッシュ達の戦いも更に加速していった
エルダートレントはあれ以降一定以上のダメージを負っても回復を行ってくることがない
やはり地面に隠されていた魔物達が供給源となっていたようだ
厄介な回復魔法を封じることもできてエルダートレントを倒せるのも時間の問題だった
『よしいいぞ!こいつの動きも大分鈍くなってきた!』
『あともう一押しだ。皆最後まで気を引き締めていこう!』
まだ何か切り札を残しているかもしれないので相手が力尽きる瞬間までは油断ができない
そう思った刹那、エルダートレントに異変が表れた
こちらが手を出していないのにも関わらず、エルダートレントの青々としていた葉が栄養を吸われたかのように枯葉へと変化していった
『なんだ?何もしてないのにどんどん枯れていってるぞ』
『アイツ、魔力が減っていってるな』
ベルの言葉に嫌な予感がした
今ここで仕留めきゃまずいと思ったアッシュは攻撃を仕掛ける
『危ない!』
突然地中が盛り上がりアッシュはそれを躱す
また根を使った攻撃かと先程までいた場所に目を向けると、そこには巨大な花の蕾が三本出現していた
『なんだろうあれ』
『分からない・・・だが嫌な予感がするな』
イズナの本能があの蕾が危険だと察知する
ここから何が起こるのかと警戒しながら様子を窺っていると、蕾が徐々に開き始めた
そこでベルがアッシュ達に伝えてきた
『まずいぞ主。あいつ大技を撃ってくる気だ』
『どういうことベル?』
『あの三本の蕾にアイツの魔力が吸われていってる。蕾が完全に開き切る前に早く破壊した方がいい』
ベルがそう言うのだからきっと相当なのだろう
アッシュ達はその言葉を聞いて即座に行動に移す
それはエルダートレントの方も承知で、あらゆる手段を用いて蕾を死守しようとしてくる
『こいつ!出鱈目な攻撃をして!』
『このままじゃ破壊する前に蕾が開いちゃう!どうにかしないと!』
既に三本の蕾は半分位まで開いていた
何とか阻止しようとこちらも蕾に攻撃しようとするが、何十メートルもある巨体で無茶苦茶をやられるとこちらも安易に近づくことができず防御に徹するしかなかった
そうこうしている間にも蕾は七割方まで開く
何とかしてあの蕾まで近づく手立てを探していると、イズナが深い溜め息をついた
『仕方ない、出し惜しみしている場合じゃないみたいだし本当はこんなところで使いたくはないんだがな』
『イズナ?何するつもり?』
『アッシュ、あとのことは頼んだぞ』
その言葉の後、イズナが四足歩行の構えになると体に異変が起こり始めた
段々と体が獣へと変わっていき、やがて白毛の狼の姿に変貌を遂げた
『もしかしてそれが神獣化?これがフェンリルの姿・・・』
『悪いが話している時間はない。この姿を維持できるのは一分が限界なんだ。それまであれを全部潰す』
神獣化を維持出来る時間は僅か一分
地面を蹴るとその部分が深く抉れ、次の瞬間にはイズナの姿が消えた
何処へ消えたのかと探している間にイズナは一瞬で蕾がある場所まで距離を詰め、一つ目の蕾を消し飛ばした
どのような攻撃をしたのか目で追うことすらできなかった
これまでも十分に速かったが、今の動きはそれよりも比べ物にならない速度だ
速さだけであればベルに匹敵するのではないだろうか
イズナの攻撃に反応することができなかったエルダートレントはとにかく他の開き賭けの蕾を守ろうと植物の壁を次々と築いていく
そうはさせまいとこちらも魔法で壁を破壊し、イズナのフォローに回る
『イズナ今だ!』
壊した壁の隙間からイズナが姿を現し、二つ目の蕾を破壊した
これで残すはあと一つ。制限時間ギリギリになるだろうが何とか間に合う
そう思っていたアッシュが最後の蕾に視線を動かすと、まだ開きかけだったはずの蕾が既に大輪の花を咲かせていた
『そんな。まだ時間はあったはずなのにどうして急に・・・もしかして他の二つを破壊したから?』
分散していた魔力の供給が一点に集中されたことであの花だけ成長速度が加速したのかもしれない
イズナがすぐさま向かおうとするがもう間に合わない
花の中心が光り出したと思った次の瞬間には強烈な光線を放ってきた
光線は地面を破壊しながらこちらに向かってくる
回避する時間もなくどうにかこの攻撃を耐えるしか生き残る道はない
鞭で受け切ることができるかと考えていると、突然目の前に神獣化はしたイズナが現れ光線をその身で防いだ
『ぬおおおおおお!!』
『イズナ!』
『私が止めている間に早くトドメをさせ!私のこの体もそう長くはもたないぞ!』
時間制限が迫っているイズナが光線を食い止めている間にアッシュ達は本体に迫る
こちらに光線の軌道を変えてくると思ったがその様子はない
イズナを止めることで精一杯のようだ
エルダートレントは残された力でこちらに攻撃を仕掛けてくる
だがその攻撃に最初の頃の勢いはない
鞭と魔法を使い分けて距離を詰めていく
近づけないよう壁を築こうとするがそれも先程よりも低い
『クウ!』
クウに再びアースクエイクを使用してもらい、アッシュとアレッサを壁の向こうにいるエルダートレントまでの道を作ってもらう
目の前には無防備な敵、二人は止めに最大火力の魔法を放った
『『エクスプロード!』』
二人が同時に唱えるとエルダートレントの周囲が連続で爆発が発生する
ダンジョンボスが植物系の魔物と分かっていた為、ベルとの特訓の最中に教えてもらい練習していた爆炎魔法だ
ここぞという時の為にとっておいたとっておきの魔法を二発同時、回復手段があった序盤ならまだしも今のエルダートレントに耐えられるものではない
途切れることなく発生する爆発、それはアッシュ達にとって勝利を告げる鐘の音のようだった
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