六十一話 「雑談」
その後イズナが前衛に加わってくれたお陰でアッシュ達普段よりも効率よく魔物を狩ることができ、多くの報酬を得てダンジョンから戻ってきた
『今日一日で大分稼ぐことができたよ。ありがとうイズナ』
『まだまだ使った金額にはいかないけどな。飯代も稼がなくちゃいけないし明日も頑張るぞ』
アッシュ達は披露を軽減するブーツを履いているからそこまで疲れていないが、イズナはブーツなしでもピンピンしている
この辺りは流石獣人といったところか
換金を行いに冒険者組合へやって来るとアッシュ達は人目を引いた
普段ベルを連れているだけでも目立つというのにそこに獣人まで引き連れていたらより注目されるのは明白
といっても最近はこういうのも耐性がついてきてあまり気にならないようになってきた
イズナも元から人間に対しては友好的ではないので奇異の目を向けられてもその辺りは全く問題なさそうだった
『さて、換金も終わったしご飯にしようか。今日は何食べたい?』
『『肉!』』
アッシュが尋ねるとベルとイズナが同時に叫ぶ
互いの意見が一致したことが嬉しかったのか二人は固い握手を交わした
『やっぱり肉だよな、分かってるじゃないか』
『ドラゴン様こそ』
『特別に主達のようにオイラのことはベルと呼んでいいぞ』
『ベル様!』
同じ肉好きとして意気投合したのか、それから二人は固い握手を交わし謎の肉談義を始めた
昨日と同じく露店で食べ物を購入して部屋で食事をとっている間、アッシュはイズナから色々話を聞いてみた
『そういえばイズナは装備とかは必要ないの?』
『装備?』
『ほら、今は服しか着てない状態でしょ?軽装備着けるだけでも傷を負うリスクも減るしどうかな?ここは鍛冶師の町だしさ』
『いや、装備はいらない。獣人は頑丈だし基本はこの身一つだけで戦うんだ。それに人間が身に着けているような防具を着けていると感覚が鈍るし俊敏に動けなくなって却って邪魔になっちゃうんだよな。正直言ってこの借りてる服もヒラヒラしてて気になる』
獣人は身体能力と五感を用いて戦闘を行う為、装備を身に着けるとそれが阻害されてしまうらしい
ヴォルフならイズナが身に着けていても違和感がないような装備を作ってくれるんじゃないだろうか
今度聞いてみるとしよう
『そっか、それにしても今日は本当に戦いやすかった。やっぱりちゃんとした前衛がいると全然違うね』
『アッシュ達も凄かったな、まさかスライムまで魔法を使えるなんて思わなかったぞ。私はそういうのに縁がないから羨ましいぞ』
『クウは特別な個体だからね。吸収すればするほど色んな魔法を使えるようになるんだ。僕も使えるようになったのはここ最近なんだけどね』
アッシュはクウや自分の恩恵の事について語った
イズナも聞いたことのない恩恵に興味を示していた
『へぇ~、世の中には色んな恩恵があるんだな』
『イズナはどんな恩恵を授かってるの?』
『うーん、私の恩恵は周りの者には明かさないように言われてるんだが・・・まぁアッシュ達ならいいか。私の恩恵は"神獣化"だ』
『神獣化?』
イズナの説明によると神獣化というのは獣人が崇めている対象の姿になることが出来るらしい
虎狼族が崇めているのは神狼・・・アッシュ達の方ではフェンリルと呼ばれている魔物の姿に少しの間だけなることができるという
フェンリルといえばドラゴンに並ぶ伝説の魔物で極めて数が少ない
希少性でいえばフェンリルの方が上かもしれない
フェンリルの名が出てくると、それまで食事に没頭していると思っていたベルが突然反応してきた
『フェンリルか、アイツって頭が固いから苦手なんだよな』
『ベル、フェンリルに会ったことあるの?』
『まぁな、最近会ったのは二百年前だか三百年前だったかな』
最近っていうレベルのスパンではないがそれがドラゴンの体感時間なのだろう
『フェンリルの姿かぁ、見てみたいなぁ』
『神狼様は滅多なことでは姿を現さなくて私ですら一度しか見たことがないんだぞ』
虎狼族は神殿で恩恵を伝えられる人間の方法とは異なりある一定の年齢に達するとフェンリルがやってきて直接その口から告げられる為、皆一度はフェンリルの姿を見たことがあるそうだ
アッシュも是非本物でなくてもいいので一度その姿を見たかったのだが、神獣化というのは連続で発動させることが出来ず一度発動させてしまうと暫く使えなくなってしまうそうなので安易に発動できないらしい
『まぁそうそう使うことなんてないだろうけどな。神狼様になるのはいざという時だけだ』
神獣化を使わなくてもイズナは十分に強いのでフェンリルの姿を見ることはなさそうだ
それからもアッシュ達はイズナとお互いの話で花を咲かせた
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