六十話 「獣人の力」
イズナの今後の話を終えたアッシュ達は今日もまたダンジョンへと足を踏み入れた
イズナは今日一日しっかり休んでもらうつもりだったが、ついてくるといって聞かなかったので一緒に来てもらっている
『本当に大丈夫?体調を万全してからでも全然いいんだけど』
『獣人はそんなにヤワじゃないから安心しろ。それに随分金を使わせてしまっただろう?その分位はしっかりと働かないとな。人間だろうとなんだろうと受けた恩はしっかり返すのが筋ってもんだ』
あれは自分が勝手にやった事なのでイズナが気にする様なことではないのだが、それを言ったところで話は平行線になりそうだったので口にはしなかった
実際今ある貯蓄だけだと一週間も持たない
前の額とまではいかなくてもゆとりを持てる位には貯金をしておきたいので手伝ってくれるのは凄く助かる
その様に張り切るイズナは昨日今日とお腹一杯ご飯を食べたことで大分体力が回復した様子だった
血色も良くなっているし心做しか少し肉がついて並の体型に近づいたような気もする
とはいえ昨日の今日なのでまだ完全には回復出来ていないはず
暫くは様子を見ることにしよう
『ところで気になっていたんだけどイズナは何の種族なの?獣人っていう大雑把な括りになってるけど色んな種族がいるよね』
『私は虎狼族だ。虎狼族は獣人の中でも戦闘能力に長けている種族なんだぞ』
虎狼族という種族には聞き覚えがあった
昔人間と争いを繰り広げていた頃、その獣人の軍団を取り纏めていたのがその虎狼族だった気がする
根っからの戦闘部族で一部の者は特殊な技を使えることもできるのだとか
『戦力にはなると思うから安心して任せてくれ』
『期待してるね。っと、話してたら早速来たね』
話していたアッシュ達の前に現れたのはヴェノムスパイダー、昨日イズナを見かけた時に戦っていた魔物だ
魔物が現れると意気揚々とイズナが一人前に出た
『アイツ一匹なら私一人で十分だ。よく見てろよ』
そう言うや否やイズナはヴェノムスパイダーに向かっていく
相手は接近してくるイズナに対し高濃度の酸を放ってくるがそれを跳躍して軽々と避ける
イズナは跳躍後周囲にある樹を利用して縦横無尽に飛び回る
ヴェノムスパイダーも次々と飛び移るイズナに酸を放つがその悉《ことごと》くを躱す
イズナは攻撃を避けながら飛び移った樹をしならせ反動をつけて加速、そして凄まじい速度でヴェノムスパイダーに攻撃を浴びせた
『ハァッ!』
イズナの高速移動を混じえた鋭い爪の攻撃でヴェノムスパイダーは一瞬にしてサイコロ状にされた
昨日と同じ魔物が相手だったがあの時とは見違える程動きにキレがあった
どうやら心配は杞憂だったようだ
『流石だね。あんな風に飛び回れるなんてやっぱり獣人の身体能力は凄いや』
『まだ本調子とまではいかないけどな。あの時は空腹と酷使されたことで力が出し切れていなかったけど普段の力が出せればこの辺の魔物なんて敵じゃない』
イズナのこの戦闘能力が加われば今まで以上にダンジョン攻略が円滑に進めることができる
本当は仲間に誘いたいところだがこれはあくまで一時的なもの、隷属の首輪を外し自分の為に使われた金を返し終えたら彼女は里に帰ってしまうだろう
自由にしていいと言った手前それを覆すのは卑怯な気がするし何よりも彼女の意思を尊重すべきだ
『ん?あっイズナちょっと待って。腕に傷が』
『ん?あぁ、一発だけ掠ってたか。これ位なら舐めておけばすぐに治る』
『いやいや、結構大きな傷だよ。今ポーションを出すから待ってて』
酸の攻撃によって皮膚がただれていたのでポーションを取りそうとするが、それを待たずにイズナは傷の部分を舌で舐めだした
普通ならそのような行為気休めにもならないが、イズナが舐めていると腕にあった傷がみるみると癒えていった
『えっ、本当に傷が治っていってる!どうゆうこと!?』
『虎狼族の唾液は特殊でな、傷につけると治癒力を高めてくれるんだ。損傷が酷いのは流石に治せないがこの程度ならすぐ治せるんだぞ』
『へぇ~便利だね』
『アッシュも傷を負ったら舐めてやろうか』
『い、いやそれはなんか恥ずかしいからいいよ』
『なんだ、昨夜抱き合った仲だというのに初心な奴だな』
イズナが突然爆弾を放り投げて来る
それを聞いていたアレッサが黙っているはずもなく真っ赤な顔をして肩を震わせていた
『だ、抱き合った・・・!?やっぱり昨晩二人で・・・!』
『違うから!抱き合ってなんかないよ!』
それからアッシュは昨夜のことをアレッサに正直に話し、何とかお咎めなしで事なきを得た
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