六話 「名づけ」
念願のテイムをすることが叶ったアッシュはスライムと共に町まで戻ってきた
スライムとの出会いで予定よりも少し時間が押してしまったので町の中を駆け抜けていく
依頼主の元に向かっている途中、アッシュは大事なことを思い出した
『そういえば君に名前をつけなくちゃいけなかったね。何かいい名前はないかな・・・』
テイムした魔物には名づけをする
必ずしも必要というわけではないが、魔物とのコミュニケーションを図る上で名前をつけておいた方が互いの信頼度にも関わってくるので大抵のテイマーは名をつける
アッシュは初めての名付けなのでどういった名前がいいか必死に頭を捻らせた
しかし中々このスライムにピッタリの名前が思いつかず苦戦する
こんな時間がないことは承知の上だが、アッシュにとってはとても大事なことだったので今すぐにでも決めたかった
名付けをする事に憧れていていつ従魔が出来てもいいよう色々と名前を考えていたが、いざ名前を付けるとなるとその従魔に合う名前を決めるのは存外難しいものだなと実感した
『うーん、君にピッタリな名前ってなんだろう・・・』
このスライムにはどん名前がピッタリだろうと考えながらふと空を見上げてみると雲一つない澄んだ青い空が広がっていた
その色が目の前のスライムの体の色と重なった
それを見てアッシュの頭に一つの名前が浮かび上がる
『クウ・・・クウなんてどうかな?』
思いついた名をスライムを見つめながら呼んでみる
すると少ししてそれが自分の名前だと認識したのかスライムは嬉しそうに飛び跳ねだした
どうやら気に入ってもらえたようだ
『よしっ、君の名前は今日からクウだ!』
喜んでくれたことに一安心したのも束の間、クウに異変が起こり始めた
プルプルと震え始めたと思ったら突然クウの体が光りだした
『えっ!なになに!?大丈夫クウ!?』
契約した時と似たような光がクウの体から放たれて慌てふためくアッシュ
何かまずいことをしてしまったのではと心配しながら様子を見守っていると少しして光は収まった
『だ、大丈夫?怪我とかは・・・してなさそうだな。どうして突然光ったりしたんだろう?』
クウに異常は見られなかったしクウ自身も元気そのものだったので、謎の光の事は一旦置いておくことにして依頼主の元へと急いだ
町の中を暫く移動し到着した場所は薬屋、今回の依頼主のお店である
朝早いこの時間はまだお店が閉まっているので、裏手に回り扉を叩いて声をかけた
『モリンさんおはようございます。依頼のヒール草を持ってきました』
何度か同じ様に呼びかけても返事が返ってこない
扉の前で待たされることおよそ十分、ようやく扉が開かれ中から現れたのはボサボサな髪でいかにも寝起きな顔をした女性
『ん・・・んぁ~・・・アッシュか・・・』
『おはようございますモリンさん。依頼されてたヒール草を持ってきました』
『あぁ・・・そういえば頼んでたんだっけ・・・じゃあ中で見るから入って待ってて。私は目を覚ましてくるから』
アッシュにそう伝えるとモリンは部屋の奥へと消えていった
奥からはシャワーの音が聞こえてくる
モリンが使うシャワーの部分には特注で魔石が埋め込まれており、魔力を込めると一定の時間温水が出る仕組みになっている
だが魔力は誰にでも宿るというわけではない
生まれながらの資質も関係してくるので魔力を持つ者は重宝される
魔力を持つモリンはそれを仕事に活かしている
モリンが授かった恩恵は"調合師"
配合が難しい薬等でも魔力を使用することによって調合が可能となると聞いたことがある
彼女が作った薬で病や怪我が癒やされ救われた者は多く、その功績のお陰でルートの町では知らない者はいない程の有名人だ
本人曰く人助けはついでで単に自分が作った薬がどの程度の効果を発揮するか見たいだけらしいが・・・
彼女にとっては仕事というよりも趣味に近いのかもしれない
『それにしてもまた散らかってきてるなぁ・・・』
部屋を見渡すと脱ぎ捨てられた服や本棚から取り出してそのままと思われる積まれた本達が至る所に置かれていた
モリンは薬作り以外の事はかなりズボラで放っておいたら瞬く間にゴミ屋敷となってしまうので、アッシュは来た時に毎度片付けをしてあげている
戻って来るまでの間片付けられそうな場所だけ片付けて気持ちよく依頼の話ができるようにしようと掃除を始めるアッシュ
そしてちょうど掃除が一段落ついたタイミングを見計らったようにモリンが戻って来た
『いやぁ、お待たせ。サッパリしたらようやく目が覚めたよ。おっ、部屋まで片付けてくれるとは気が利くねぇ』
『勝手にすみません、散らかってる場所で話すのもなんだか落ち着かなく・・・て・・・』
アッシュがモリンの方を振り向くとその光景に思わず言葉を失ってしまった
浴室から戻って来たモリンは服を着ておらず、全裸の状態で立っていた
『ちょっ!ど、どうして裸のままなんですか!服を着て下さい服を!』
『ん?あぁすまない、いつもの癖で忘れていた。まぁ裸の一つや二つ見られたところでどうってことないさ』
『女性なんですからもう少し恥じらいというものをですね・・・・』
『はいはい、着替えて来るからもう少し待っててね』
そう告げるとモリンは再び奥へと消えていった
反射的に目を逸らしたがそれでも僅かに捉えた姿が脳裏に焼き付いて離れない
モリンの着替えが終わるまでにアッシュは別の事を考えてどうにか心を鎮めることに集中した
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