五十一話 「新たな武器を求め」
『はぁ・・・』
『アッシュ君気を落とさないで・・・』
『でも・・・』
ジャイアント・キラービートルとの戦闘の際に剣を折ってしまったアッシュ
相手の外皮が硬かったというのもあるだろうがアッシュの腕が良くなかったことも要因
魔法の練習ばかりして剣の鍛錬を疎かにしていたのが今回の結果を招いてしまったのだろう
『前から思っていたけど主は剣術向いてない気がするぞ』
『えぇ?でも冒険者になった頃から使ってるからなぁ・・・逆にベルはどんな武器がいいと思うの?』
『さぁ?オイラは人間みたいに武器なんて必要ないからそこら辺はよく分かんねぇや』
短剣以外の武器なんて使った事がないアッシュは他の武器に転向なんて考えもしていなかった
だがアッシュの剣技でダメージを与えられる魔物も限られてきているのもまた事実
そのまま短剣を使い続けるか思い切って違う武器に転向するか・・・考えているとアレッサが口を開いた
『せっかくだからこの機会に鍛冶屋に行ってみよ?鍛冶師の町なのに私達まだ一度も行ったことなかったし。もしかしたらアッシュ君の適している武器が見つかるかもだよ』
『そうだね・・・そうしようか』
アレッサの言う通り様々な武器を取り扱っているこのセグエンテなら短剣より適正のある武器に巡り合えるかもしれない
だがそれよりもまずは休息を取る方が先決だ
アッシュ達は久しぶりに地上に戻ってくるとまずは汚れた体をしっかりと洗い、そして久々にまともな食事にありついた
勿論ベルには約束通り高級肉をご馳走した
その際にアレッサにはバレてしまったが、ベルの功績を考えればこれ位の褒美はあっていいだろうという話になり事なきを得た
それから柔らかいベッドで泥のように眠り体をしっかりと休めた
翌日、アッシュ達は予定通り町に出て鍛冶屋へと足を向けた
『鍛冶屋に行くにしてもどこの鍛冶屋に行こっか』
『これだけ沢山あるのにどこも冒険者で溢れかえってるね』
鍛冶屋に行列ができるなんてこのセグエンテの町だけだろう
人が多い場所は当然人気な場所なんだろうけどセグエンテの町にいる鍛冶師は全員腕に覚えがある人達だろうからどこに頼んでも大きな差はないはず
鍛冶屋の前を通るとどこもその職人が作ったと思われる武器や防具が飾られている
そうすることで自分がどんな種類の武器が作れるかを通りがかった冒険者に教え他所と差別化を図っているのだろう
アッシュはとりあえず一通り鍛冶屋を見て回り、良さそうだと思った場所に入ることにした
といっても飾られている装備はどれも一級品に見えて、目利きなわけでないアッシュには区別がつかなかった
『うーん、どこに行ってもきっと満足いくんだろうけどこれだけ多いと逆に迷うなぁ』
『アッシュ君、あそこはどうかな?』
アレッサが見つけた鍛冶場には冒険者の列はできておらずすぐに入れる様子だった
他と違うのは外に装備が飾られていないのでどんな物を作っているか分からないこと
中から鉄を打つ音が聞こえてくるから人はいるのだろう
『迷ってても仕方ないしとりあえず入ってみよっか。すみませーん』
驚かせないようベルにはまた認識阻害を使ってもらい扉に手をかけ開ける
するとそこには黙々と作業をしている小柄な男性がいた
アッシュが声をかけるも鉄を打つのに集中していてこちらが入ってきたことすら気がついていないようだ
『あ、あのぉ・・・あのー。すみませーん!』
いくら声をかけても全く反応がなし
入る場所を間違えてしまったかと戸惑っていると、今度は奥の部屋から小柄な女性が現れる
『おや、お客さん来てたのかい』
『あ、どうもお邪魔してます』
ようやく話を進められると思っていると女性が作業をしている男性の元まで行き頭を思い切り引っぱたいた
『いったぁ!何をするんじゃ!』
『何をするんだじゃないよ!お客さんが来てるでしょうが!』
作業を無理矢理中断させられた男性が怒鳴るが、女性がそれ以上の声量で圧倒する
『すまないね、うちの旦那は作業を始めると集中しすぎて周りの音とか聞こえなくなっちゃって。あっ、私はアンジェってんだ。こっちのバカ旦那はヴォルフだよ』
『バカは余計じゃ』
『僕はアッシュといいます。あのお二人ってもしかしてドワーフ族ですか?』
『あぁそうだよ』
ドワーフ族はその小柄な見た目からでは想像がつかない程の膂力があり、大岩を持ち上げる程の力がある
それとは別に手先が器用という一面もあってドワーフの作る武器は超がつく程の一級品だとも言われている
そんなドワーフがいるというのにお客がアッシュ達だけなんて不思議で仕方がなかった
『それで?今日は何を買いにきたんだい?』
『実は使っていた短剣が折れてしまったので新しい武器を探していたんです』
事情を話すとヴォルフがアッシュの元にやってくる
するとこちらに手を出してきていきなり腕を触り始めた
『な、なんですか?』
『ふむ、お主が使っていたのは短剣か?』
『凄い、どうして分かったんですか?』
『筋肉の付き方で大体分かるわい』
少し触っただけなのにアッシュが使ってる武器を言い当てるなんて
ルートの町でも同じような事があったが鍛冶師というのは皆こうなのだろうか
アッシュが言い当てられたことに驚いていると、ヴォルフが口を開く
『短剣ならそこら辺にいくらでも置いてあるじゃろう。他所で買うんじゃな』
『えっ?』
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