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四十六話 「獣人奴隷」

神殿で望んだ結果を得られなかったアッシュはアレッサ達と合流した後、食事を済ませてアレッサにとっておいてもらった宿で一息ついてからベルに話を切り出した



『ベル、僕の恩恵がどういうのかもっと教えて欲しいんだ』


『えぇ~?この前教えたじゃねえかよ。オイラだって初めて見たんだから見た情報以外は分からねえよ。全く従魔使いが荒いぜ』



ブツブツと文句を言いながらもベルは再び魔法を使ってアッシュの恩恵を確認し始めた



『えっとなになに・・・ん?こんなのこの前はなかったような気がするけど・・・まいっか。どうやら契約した従魔の能力を扱えるようになるらしいぞ』


『従魔の能力を?どういうこと?』


『そのまんまの意味だろ、あとは自分でどうにかするしかないんじゃないのか。オイラはもう眠たいから寝る』



そう言うとベルはそれ以上分からないと眠りについてしまった

ベルやクウのような希少な魔物限定で使役が可能、そして使役した魔物の能力が使えるようになる、と

クウ達の能力が使えると言われても自分の体に変化があった感じはしない

あったといえばこの体の奥底から湧き上がってくる不快感

ベルのお陰で新たな情報は得られたが、根本の問題は解消されぬまま翌日を迎えることとなった

アッシュは昨日組合長ウィリアムに言われた通り、罰則として鉱山で採掘作業に勤しんだ



『フンッ!フンッ!』



ひたすらツルハシを振るい採掘した鉱石を運び出すの繰り返し

アッシュが採掘作業を行っている間、アレッサ達にはダンジョンについての情報集めをしてもらっている

クウやベルがついていればいざという時役に立つだろう

昨日しっかり釘も刺しておいたし流石に騒ぎを起こすようなマネはしない・・・はすだ



『それにしても見たことない鉱石がたくさんあるなぁ。こっちは赤くてこっちは青い鉱石、どれも綺麗だなぁ』



ルートの町でも何度か依頼で採掘をした事はあったが、ここでは初めて見る鉱石ばかり

セグエンテでは装備もだがネックレスや指輪等も作られているそうなので、これらの綺麗な鉱石はきっと装飾類に使われるのだろう

今掘っている鉱石達が一体どんな装飾や装備へと変わるのか是非見てみたいものだ



『おらっ!休んでないでさっさと掘れ!』



外に鉱石を運び出そうとしたところで突然怒声が聞こえ驚いて声がした方を見てみると、そこには首輪のような物と手と足に枷がつけられている女性がいた

厳重な枷とボロボロな服を着ているところを見る限り恐らく奴隷なのだろう

だがただの奴隷ではない

パッと見人間と姿は大した違いはないが頭部には人間にはついていない動物の耳があり、そして腕や脚の一部には体毛が生えていた

この奴隷の女性は獣人と言われている種族だ

獣人は数が非常に少なくアッシュも実際にその姿を見るのは初めてだった

数が少ない理由は昔人間と獣人の間で争いがあったからと聞いている

獣人は魔法の才は皆無だが身体能力だけでいえば人間よりも遥かに優れている

だがそれでも数は人間の方が圧倒的に多かった為、元々少なかった獣人は人間の物量で更に減らされ、降伏を余儀なくされた

今はいざこざこそ起きていないが、今でもその出来事が原因で人間と獣人は非常に仲が悪い



(なんでこんな場所に獣人がいるんだろう。しかも女の子一人で)



見たところアレッサと大差ない歳に見えるが獣人の寿命は人間の倍程度で大体二百歳、実年齢はもっと上かもしれない

白い髪は土埃等で汚れているが整えたらきっと絹のような真っ白で綺麗な髪になるだろう

初めて見る獣人が珍しくつい長いことその姿を眺めていると、アッシュの視線に気づいた獣人がこちらに視線を向けてきた



『おいお前、何見てるんだよ』


『あっ、ご、ごめんなさい』



鋭い眼光に睨まれたアッシュは頭を下げ、そそくさとその場から立ち去ろうとする

その時女性の手にあった紋様が視界に入り、気になったアッシュは思わずそれを口に出してしまった



『その手・・・』


『あぁっ?』


『あ、いえ。冒険者の方だったんですね。僕も冒険者でして』


『・・・お前に関係ないだろ』


『そ、そうですよね。失礼しました』



同じ冒険者であれば会話できると思ったがやはりそう上手くはいかないようだ

それよりも何故冒険者にも関わらず奴隷になってしまったのか

聞いてみたい気もしたがこれ以上絡んだら怒らせてしまいそうだったので女性の元から消えようとしたその時、女性のお腹の音が反響する

女性は慌てて腹が鳴らないよう必死に押さえるが、それで鳴り止むはずもなく腹は空腹を主張してきた



『そうだ、ちょっと待ってて下さいね!』



アッシュは自分の荷物が置いてある場所まで駆け、女性の元に昼食で食べる予定だったパンを持って戻って来た

女性は今さっき出会ったばかりの相手から食料を渡された事に警戒心を露わにする



『あっ、変なものとかは入ってないので安心してください。お腹減ってたら力出ないですよね』



獣人の五感は人間の何倍も鋭く、相手の言動の真偽も見抜くことができる

女性は何か裏があるのではとアッシュを警戒していたが、パンに何も仕込まれていないと分かると素早い動きでアッシュからパンを取った



『おーいそこの坊主。ちょっと手伝ってくれー』


『はーい!それじゃあ失礼しますね』



それだけ伝えるとアッシュは作業に戻っていった

自分の姿を見た人間は奇異の目を向けてきて心無い言葉を放ってくる

それが当たり前だと思っていた彼女にとってそれは初めて人間から受けた善意だった



『変な人間・・・』




ご拝読いただきありがとうございます!毎日20時に最新話を更新していますのでよろしければ次回もよろしくお願いします!

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