四十二話 「本当の恩恵」
町の人達から魔物ビッグホーンディアーの討伐を頼まれたアッシュ達は数に苦戦しつつも殲滅に成功、帰還後報告を済ませると周りの人達に感謝され温かく迎えられた
それ以降は特に問題が起こることもなく平穏な日々が過ぎ、あっという間にセグエンテへ向けて出立する日がやってきた
同時にそれはリベルタスとの別れということになる
アッシュ達は荷台にセグエンテに運ぶ積み荷を積み終えると出発の直前に別れの挨拶を交わした
『リベルタスさんとお会いすることができて本当に良かったです』
『もしまたお会いすることがあったらご飯奢らせて下さいね』
この町にいる間の僅かな期間ではあったが、こうしてドラゴンと出会い話すことができたのは本当に夢のような時間だった
また会えたら嬉しいが恐らくもう会えることはないだろう
アッシュ達はこの数日間の思いを馳せ別れを惜しむ
だがその一方でリベルタスはアッシュ達の様子に首を傾げ不思議そうな顔をしていた
『お前等さっきから何言ってるんだ?まるでここでお別れみたいな台詞だな』
『ん?どういうことですか?』
『だってオイラお前と既に従魔契約を済ませてあるから。これからはお前達についていくぞ』
『・・・・・ええええええええ!!?』
リベルタスのとんでもないカミングアウトの方にアッシュは思わず腰を抜かしてしまった
アッシュにはリベルタスと従魔の契約をした記憶が全くないというのに一体いつ契約をしたのか不思議で仕方がなかった
『なんだ!?なにかあったのか!?』
『す、すみません。ちょっと虫が顔に飛んできてビックリしただけです。何も以上はないので気にしないで下さい』
『そうか?それならいいんだが・・・』
いきなり大声を上げたことで何があったのかと心配して声をかけてくる依頼人を適当に誤魔化し、リベルタスの方へ向き直り小声で問い質した
『い、いつ!?というかどうやって契約を!?僕リベルタスさんと契約した覚えがないんですけど!』
『お前達の部屋に忍び込んだ時。寝ている間に適当に済ませておいた』
『適当にって・・・』
従魔の契約はお互いの意思が了承しないと成立しない
そのはずなのだが従魔になる方から一方的になんてできるはずがない
確かに従魔になってくれればどれだけ嬉しいかと考えてはいたが・・・まさかその強い想いが反応してしまったのか?
そんな事があり得るのかと思ったがリベルタスが嘘をついているようには見えなかった
『そもそもどうして僕なんかの従魔に?自分で言うのもアレですけどリベルタスさんが従魔になるような実力はないと思うんですけど』
『お前の従魔になろうと思ったのはお前の恩恵が理由だな。オイラもそれなりに生きてきたがそんな恩恵を見るのは初めてだったからお前の従魔になったら面白そうだなって』
『面白そうって・・・というか僕の恩恵?僕の恩恵はテイマーですよ?リベルタスさんが惹かれるようなものではないと思うんですけど』
テイマーは他の恩恵に比べれば確かにレアな部類ではあるだろうが珍しいかといったらそうでもない
現に先日襲われた盗賊達の中にもテイマーはいた
そんな恩恵に長年生きてきたドラゴンが今更興味を持つとは思えない
アッシュの言葉にリベルタスが再び首を傾げる
『テイマー?確かにテイマーだけどお前のはただのテイマーじゃないだろ』
『ただのテイマーじゃない?』
『なんだ、自分の恩恵も知らないのかよ。お前の恩恵は"究極使役者"だぞ』
リベルタスの言う究極使役者という恩恵にアッシュは聞き覚えがなかった
子供の頃に神殿で恩恵を確認してもらって確かに自分の恩恵は使役者と告げられた
それが実は究極使役者でした言われてもすぐに理解することは出来ない
リベルタスが話を続ける
『オイラは相手の能力を見ることが出来る魔法が使える間違いないぞ。えっとなになに・・・究極使役者は通常テイムできないような希少な魔物を限定にテイムすることができる。だがその代償として通常の魔物がテイムできなくなるだとさ』
リベルタスに何が見えているのか分からないがどうやらそれがマスターテイマーの恩恵の効果らしい
魔物がテイムできないという点に対して心当たりはあった
クウと出会う前に何度もテイムしようと試みていたがそれら全てが悉く失敗に終わっていた
そこだけ見れば確かにその恩恵に当てはまる
それとは別にもう一点アッシュには気がかりな点がリベルタスの発言の中にあった
『希少な魔物限定ということは・・・やっぱりクウも特別なスライムだったってことだよね。いや結構前からそうだろうとは思っていたけど・・・』
『そこのスライムも見たけどオイラと同じで恩恵を持っている恩恵魔物だったぞ。確か"吸収成長"だったな』
恩恵魔物、恩恵を持っている魔物の事をそう呼ぶらしい
クウの持つ恩恵が吸収成長だというのは今までこの目で見てきたから納得がいく
他にもアレッサの恩恵も言い当てていることからリベルタスの言っていることはきっと間違っていないのだろうということは理解せざるを得なかった
とはいえ衝撃的な事実を告げられたアッシュの頭はもうパンク寸前だった
そこへリベルタスが追い打ちをかけてくる
『一通り説明したしそろそろオイラに名前を付けてくれよ』
『名前?リベルタスさんにはリベルタスって名前があるじゃないですか』
『契約したら名づけをするのが普通なんだろ?せっかくお前の従魔になったんだから新しい名前をつけてくれよ』
いきなりそんなこと言われてもこんな状態ですぐ思いつくわけがない
アッシュはまずは頭の中を整理することに専念し、それからリベルタスの新たな名を考えることにした
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