四十一話 「助け舟」
リベルタスはド食事を済ませると満足してそのまま山へと帰って行った
もっと色々話を聞きたかったがもう会うことはできないだろう・・・そう思っていたが、翌日になるとアッシュ達が泊まっている部屋に当たり前のように侵入して一緒に眠っていた
『リベルタスさん、帰ったんじゃなかったんですか?』
『やっぱりもっと飯が食いたくなって戻ってきちゃったぜ。というわけで朝飯を食わせてくれ!肉がいい!』
どうやら久しぶりに食べた人間の料理にハマってしまったようでアッシュ達にタカりにきたらしい
アッシュとしてはもっとドラゴンと触れ合いたいと思っていたから願ってもいなかったし、アレッサも小柄で可愛らしい見た目にゾッコンだったので誰もそれを拒否する者はいなかった
多少の食費なんてお安いものだろう
食事を済ませた後はルルネの町を見て回った
この辺りの町ではそこそこ大きな町のようでルートの町程でなかったが活気もあった
適当に店を見て回っているとやがてアッシュ達は大きな倉庫の様な場所に辿り着く
するとそこには依頼人の姿があり他の者達と話をしているようだった
その様子が何やら困っている様に見えたので、アッシュ達は依頼人に声をかけてみた
『あのすみません、どうかしたんですか?』
『ん?なんだね君達は?ここらでは見かけない顔だが・・・』
『あぁ、この人達は昨夜話したルートからここまで護衛をしてくれた冒険者の人達だ』
『おぉ、あんた達が盗賊を退治したっていう!』
『はぇっ?えっと・・・すみませんちょっといいですか?』
アッシュ達が盗賊を退治したとはどういう事なのかと依頼人を呼び事情を聞いてみると、どうやら町の人には盗賊を倒したのは自分達ということで話を通したらしい
どう報告するかと考えた時にドラゴンが助けてくれたなどという荒唐無稽な話をしたところで信じる者はいないだろうという考えに至り、自分の心の中に留めておくことにしてアッシュ達がやったことにしたんだそう
周りから話が漏れて騒ぎになることを危惧したのだろう
他人の手柄を横取りしてしまう形になり申し訳ないと思いチラッと様子を窺ってみるが、隣にいる当のドラゴンは別になんとも思っていなさそうだった
『そうだ、せっかくだからこの人達に頼んでみたらどうだろう?』
『あぁ、それもそうだな』
町の人達から話を聞かせてもらったところ、どうやらこの町の近くの街道に魔物の群れが現れたらしい
その道は数日後にアッシュ達がセグエンテの町に向かう為利用する道
そういった場合ここでは魔物がいなくなるまでやり過ごすか町にいる自警団の人達で片付けるかして対応するらしいが、昨日依頼人から橋が壊された事を聞かされて自警団の人達はそっちの修繕を優先することにしたそうだ
あの橋が無いとやはり困る人が多いらしい
橋の修繕をしている間に魔物がどこかに行ってくれればそれで問題なし、修繕が終わってもまだ彷徨いているようなら討伐しに行く
自警団もそこまで人数が多くないみたいで二手に分かれるわけにもいかないので優先順位が高い方から片付けることに決まったという
本来依頼中に別の依頼を受けることはできないが、護衛依頼で利用する道に出た魔物を討伐するという理由で手伝えば問題ないだろう
『分かりました、引き受けさせてもらいます』
『ありがとう助かるよ』
この町で出立までのんびり過ごすのもいいが体が鈍ってしまうすちょうどいい鍛錬になるだろう
盗賊の襲撃があった時は護衛としての仕事をきちんと全うすることが出来なかったので、これで少しでも名誉挽回するという名目もある
自警団で確認した魔物はビッグホーンディアー。大きな角が特徴的な魔物で群れをなして行動している
アッシュ達は早速その魔物を倒しに目撃された場所へと向かった
その道中リベルタスも当然のように一緒についてきて戦いに加わりそうな雰囲気だったので念の為釘を刺しておいた
『あのリベルタスさん、僕達が魔物と戦っている間は手を出さないようにしてくれませんか?』
『なんでだ?オイラがパパッと倒した方が早く帰って飯にありつけるだろ』
『そうなんですけど僕達の特訓も兼ねているので』
『ん~、早く終わらせてくれよ?』
リベルタスは渋々だが納得してくれた
前述の通り自分達のレベルアップというのもあるが、リベルタスが暴れると街道が滅茶苦茶になる可能性が非常に高いのでそれを止めるのが一番の理由だった
魔物が確認された街道に沿って歩くこと数時間、アッシュ達はビッグホーンディアーの群れを発見した場所に到着する
『いた、あれがビッグホーンディアーか。十・・・いや十五はいるか』
『群れで襲ってきてあの大きくて鋭い角を振り回してくるみたいだから気をつけて』
『じゃあオイラはここで昼寝してるから。終わったら呼んでくれ~』
リベルタスはそういうや否や草むらに寝転がって腹を仰向けにして寝始めてしまった
なんとも無防備な姿だがあんな恰好でも相手が攻撃してきたら返り討ちにしてしまうんだろうな
アッシュ達はそんなリベルタスを一瞥した後、ビッグホーンディアーに向き直り戦闘態勢に入った
『よし、いこう!』
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