三十九話 「ドラゴンと町へ」
立ちはだかるドラゴンを前に盗賊達は為す術もなく全員崖へと落とされていった
眠りを妨げたという理由だけで命を奪われるなんて少し哀れにも思ったが、相手もこちらの命を奪おうとしていたのだから因果応報というものだろう
『あの、助けてくれてありがとうございます』
『別に助けたつもりはない。言っただろう、オイラの眠りを邪魔してたあいつらを始末しにきただけだ。だが体を動かしたら腹が減ったな。助けてられたというのなら礼として何か食い物をよこせ』
『い、今は果物位しか差し上げるものがないのですがそれでもよろしいでしょうか?』
『むぅ・・・本当は肉がいいんだけどな。まぁ無いなら仕方がないか』
腹を空かしているドラゴンに依頼人が急いで荷台から良さげな果物を見繕いドラゴンに恐る恐る手渡す
ドラゴンはそれを両手で受け取り凄い勢いで齧り付き始めた
夢中になって食べてる姿からは先程までの威厳は感じられず、愛らしいとさえ思えた
『美味い!美味い!やはり人間が作ったものはそこら辺に生っている実とは全然違うな』
『そ、それはよかったです』
『だけどやっぱり肉が食いたいな。それに今のを食べたら人間の飯も食いたくなってきた・・・よし決めたぞ。お前達町に行くと言っていたな、オイラもついて行くぞ』
『えっ!?』
会ってまだ数分程度しか経っていないドラゴンからの突然の同行の申し出
展開がコロコロと変わりアッシュ達は整理できず困惑する
『なんだ?オイラがいたら不満か?』
『いえそんな事はないですけど・・・僕達は雇われの身で決定権があるのはこちらの方でして・・・』
そう伝えると今度は依頼人の方に視線を向ける
鋭い眼光を向けられた依頼人がそれを断れるはずもなく、ドラゴンと共にルルネの町へ行くこととなった
それからアッシュ達は依頼人と馬を治療した後壊れた馬車の車輪を直せないかと試みたが、完全に破壊されていて修復は不可能な状態だったので馬車は諦め積まれていた荷物を可能な限り持っていく方に切り替えた
持っていく物を選別していると、その様子を寝ながら眺めていたドラゴンが喋りかけてくる
『なんだ?馬車を捨てていくのか?』
『そうですね、マジックバッグも持ってないですから価値が高い物を優先して持てるだけ持っていきます』
マジックバッグというのは魔石を用いて作られた異次元に大量保管出来る大変便利なアイテムだ
それだけでなく入れた物の劣化を遅らせてくれるという利点もあるのでダンジョンや長旅などでも重宝される
ただそれだけのアイテムとなると非常に高価でおいそれとは手が出せないので持っている者はあまり見かけない
泣く泣くこの場に置いていく物を選別している様子を見かねたドラゴンが行動を起こす
『仕方ない。おいお前達、そこら辺に落ちている破片を可能な限り集めろ』
『え?何をするんですか?』
『いいから早くしろ』
ドラゴンが壊れた馬車の破片を集めるよう指示をしてきたので、アッシュ達はその指示に素直に従い辺りに散らばっている木片をできる限り搔き集め馬車の近くに持っていくとドラゴンはなにやら魔法を発動し始めた
一体何をするのかと興味津々で様子を窺っているとなんと壊れていたはずの馬車の破片が一つまた一つとひとりでに動き出し、破片と破片がくっついていき段々壊れていたはずの車輪の形へと戻っていった
アッシュ達がその光景に驚いている時間であっという間に車輪は元通りになり、馬車が走れる状態に直してしまった
それを見て一番喜んだのは言わずもがな依頼人であった
『なんと!壊れていた車輪が元通りに!感謝致しますドラゴン様!』
『凄いです!こんな魔法があるなんて初めて知りました!』
『修繕という魔法だ。もう随分と使ってなかったが上手くいったみたいだな。礼として飯を奮発してくれてもいんだぞ?』
ご飯の為にわざわざ馬車を直したのか。一体どれだけ飢えてるんだ・・・
だが依頼人からしたら諦めなければいけないと思っていた商品が舞い戻ってきた上に馬車まで直ったのだから頭が上がらないだろう
『さぁこれで町に向かえるだろう。さっさと飯を食いに行くぞ』
盗賊に襲われたことで大分時間は押してしまったが、ドラゴンのお陰でアッシュ達は何も失うことなくルルネを目指すことができた
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