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三十三話 「帰還」

怪我や消耗が激しかったものの一先ず全員無事にダンジョンボスを倒すことができた

アレッサがアッシュ達の元にやって来るが、あの魔法で魔力枯渇(マナロスト)手前までいってしまったようで顔色が悪く少し虚ろな目をしていた



『や、やりましたねアッシュさん』


『アレッサさんのお陰でジャイアントオーガを倒すことができました』


『そんなことないです。私が止めを刺しただけでこれは皆で掴み取ったものですよ。クウちゃんも守ってくれてありがとう』



アレッサからお礼を言われるとクウは得意気に胸を張った

ダメージは負っても普段と変わりないようで本当によかった

戦闘が終わり安心した途端アッシュは体全体の力が入らなくなり地面に仰向けになって倒れた



『アッシュさん大丈夫ですか!すみません、今ポーションを出しますね』


『すみません、僕が持っていた分は全部割れちゃって・・・』



アッシュがポーションで回復した後クウもポーションで回復させた

自分の身を守る為に硬質化を使ったので傷を癒す治癒(ヒール)を使うだけの魔力は残っていないらしい

マナポーションは切らしてしまっているのでアレッサには悪いが町に戻るまでもう少しだけ我慢してもらわなくてはならない

流れた血まで回復するわけではないので体は少し怠かったが、魔石を回収しなくていけないので長くは休んでいられない

オーガの外皮は硬い為同じ箇所に何度も刃を入れることでようやく魔石を取り出すことが出来た



『流石ダンジョンボスの魔石、ざっと三十センチはありそうですね。これだけの大きさの魔石ならかなりの額になるはず』


『町を出る時に色々と入り用になるから有難いですね』



ゴブリンの魔石の大きさが大体小指位になるのでその差は一目瞭然だ

魔石の回収を終えた次はドロップアイテムの確認

ダンジョンボスからは確定でドロップアイテムが出るのでこちらも期待が高まる

しかしアッシュが期待していたものとは違い落ちていたのは見慣れない卵の様な楕円形に近い形をした物体



『なんでしょうかねこれ・・・テカテカしていますけど』



どんな物かと期待していただけに謎の物体に戸惑う二人

オーガの近くに落ちていたのでドロップアイテムなのは間違いはない



『ん?いや、このアイテムってどこかで見たような・・・』



以前読んだ魔物の本の中に似たような物が書かれていた事をアッシュは思い出し、記憶の片隅から引っ張り出そうと頭を捻る

そしてこのアイテムが何なのかようやく思い出した

念の為確認をと恐る恐る指で(つつ)いて感触を確かめる

若干弾力があり押すと跳ね返してくるこの感じ・・・間違いない、これはジャイアントオーガの#睾丸__・__#だ

オーガの睾丸は滋養強壮に強い効果があり、更に男の不能の病を治す薬にも使われている素材らしい

レアなアイテムなのは間違いなく魔石同様こちらも高値で取引されているようなので有難いことではあるが・・・やはり睾丸だと思うと触るのには抵抗があった

だがこれが睾丸と分かった以上アレッサに持ってもらうわけにはいかない



『こ、このドロップアイテムは僕が持っていきますね。アレッサさんは魔石の方をお願いできますか?』


『それはいいですけど・・・これは何のアイテムなんですかね?』


『さ、さぁ。なんでしょうね』



これは睾丸ですなんて言えるはずもなく適当にはぐらかし、睾丸を直で触らないよう布で包んでから持っていくことに

恐らく換金する時に知ることになるだろうがその時までは明かす必要はないだろう

クウの方は魔石回収を済ませた後いつもの様にオーガを吸収

流石に体格差があって吸収するのに時間がかかっていたが、オーガを取り込んだことでクウの体が光りまた成長していた


これでこの場所でやることは全て終わった

あとは地上に戻るだけだが、全員の状態を考えると来た道を戻って行くのはかなり厳しい

と、通常であればそう考えるがこのボス部屋に限ってはその心配は必要ない

ダンジョンボスを倒すとアッシュ達が入って来た扉とは別に部屋になかったはずの扉が現れていた

その扉を開けるとそこには魔法陣が刻まれた石盤があった



『これ転移盤(ワープボード)ですか』



転移盤とはダンジョンボスを倒すことによって現れる特殊な装置で、この上に乗ると地上まで一瞬で戻ることができる

ダンジョンボスで心身が疲労している冒険者を助けてくれる非常に便利な装置だ


この転移盤が各地に普及すればどこへでも瞬時に移動可能になる為当然研究がされたが、石盤に刻まれている魔法陣は相当複雑なものだそうで模倣するのはほぼ不可能らしい


アッシュ達が転移盤の上に全員乗ると魔法陣が光り出す

その光は段々と強くなっていきやがて視界が白一色となる

初めての体験に少しばかりの不安を感じていると視界が徐々に晴れていき、周りが見えてくるとそこは見慣れたダンジョンの入口前だった



『無事に戻って来れたみたいですね』



アッシュ達の転移が完了すると魔法陣は消えていった

一方通行でこちらからの干渉はできないようだ



『アッシュ』


『あ、グンダさん』



声をかけられ後ろを振り返るとそこには警備を務めているいつものグンダの姿があった

グンダはアッシュ達が突然現れた事に少し驚きつつも、これまで何度も見てきた光景だった為アッシュ達がダンジョンボスを倒してきたことをすぐに理解し抱きついてきた



『うおおおお!!よくやったなアッシュうううう!!』


『いたたた・・・ありがとうございますグンダさん』



グンダはまるで自分がダンジョンを攻略したかのように泣いて喜んでくれた

十五の時にこの始まりの町ルートで冒険者になってから一年とちょっと

アッシュは仲間であるアレッサ、クウと共に念願であるダンジョン攻略を果たすことができた




ご拝読いただきありがとうございます!毎日20時に最新話を更新していますのでよろしければ次回もよろしくお願いします!

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