三十二話 「決着」
呼び出された魔物を殲滅し残すはジャイアントオーガのみ
アッシュが他の魔物と戦っている間にアレッサ達がヒット&アウェイに徹し、オーガ相手に着実にダメージを蓄積してくれていたお陰もありオーガも最初の頃より大分弱っていた
もう一押しで念願のダンジョンボスを倒すことができる
だが相手もそう易々とは倒されてはくれなかった
『グアアアアアアアア!!!』
『あれは・・・狂化がきます!気をつけてください!』
オーガの体が赤く変色し始める
あの現象は狂化という体力が減ってくると発動するオーガの能力で、全ての能力値を一時的に上昇させる
けれど狂化時間自体はそう長くは続かない
狂化の効果が切れると瞬間的に能力を上げた反動で硬直する時間が生まれるので、狙うのならそこしかない
『アレッサさん!僕の合図で一番強力なのをお願いします!』
『分かりました!私が使える最大の魔法で倒してみせます!』
相手が狂化状態になると今までの動きよりも一段階早い速度でこちらに迫り攻撃を仕掛けてきた
『くっ・・・!』
一撃で地面が破壊される威力の攻撃を次々と振り下ろしてくる
ダメージを負っている状態では全神経を集中しては躱すことしかできない
だが今はそれでいい。とにかく耐え少しでも時間を使ってオーガの狂化が解ければこちらの勝利だ
オーガがアッシュを狙って攻撃を繰り出しているとこへクウがパラライズで動きを止めようとした
しかし狂化状態のオーガには効果がないのか動きを止めることは出来ない
逃げに専念することしかできないアッシュはオーガの猛攻により徐々に壁の方へと追いやられていき逃げ場を失っていく
だがそこへアレッサの魔法が助けに入る
『こっちです!』
そう言うとアレッサは一発だけオーガの背中に魔法を放ちすぐさま距離を取る
オーガは標的をアレッサに変えたと思ったら石斧大きく振りかぶった
アレッサとオーガの間には距離があり攻撃範囲からは外れている
そこから一体何をするのかと思ったらオーガは振りかぶった石斧をそのまま振り下ろし地面を抉りながらダウンスイング
抉られた地面から無数の石礫が生まれアレッサの方に向かって飛んでいく
『危ない!』
礫とアレッサの距離が瞬く間に縮まる。あれだけの数を回避し切るのは難しい
だがそこへクウが現れる。クウは自分の体の形を変えてアレッサを守る壁のようになり、飛んできた礫を受け止め高速で吸収していった
『ありがとうクウちゃん!』
ダメージを受けている様子はないので一安心したのも束の間、再び標的をアッシュに変えて斧を振るってくる
アッシュは再び回避に徹するが、気のせいか先程の攻撃とは違い幾分か余裕を持って躱すことができた
明らかにオーガの斧を振るう速度が低下してきている。狂化の効果が切れ始めているのかもしれない
ちょうど自分が標的になっている今ならいけるはずだ
『アレッサさん!お願いします!』
『はい!』
アッシュからの号令がかかりアレッサは魔力を込め始めた
威力の高い魔法ほど発動に時間はかかる
アレッサが魔力を込めているのを悟られないよう可能な限りオーガの注意を引こうとする
もうオーガに効くようなアイテムも底を尽き残るは己の身体のみ
アッシュの剣ではオーガに傷を与えることはできないかもしれないが、それでも数秒でも時間を稼いでアレッサに望みをかける
だが頭は回っても肝心の体の方が先に限界を迎えてしまい思うように体を動かすことができない
どうやら回復出来ずに動き続けていたここにきてツケが回ってきてしまったようだ
アッシュが既に脅威とならないと判断したオーガがアレッサの動きを察知し、魔法の発動を阻止しようと突進していく
『くそっ・・・アレッサさん!』
アレッサが魔法を発動するよりも僅かに早くオーガがアレッサの元に到達し斧を振り下ろした
しかしその攻撃はまたもやクウの捨て身の防御によって防がれる
クウが斧と衝突したことで軌道がズレ、振り下ろされた斧はアレッサのいる場所から僅か数十センチの場所に突き刺さった
『クウ!』
オーガの攻撃をまともに食らったクウは吹き飛ばされそのまま地面に激突
だがクウの決死の行動により狂化の効果が切れオーガの赤くなっていた体が元に戻り始めた
狂化の反動により硬直時間が生まれると同時にアレッサの魔法の発動準備が整う
『これで終わりです!フレイム・ストーム!』
アレッサが魔法を唱えると次の瞬間には部屋が熱気に包まれる
そしてオーガのいる場所に炎の竜巻が発生しオーガを襲った
『グオオオオオオオ!!!』
オーガの断末魔が部屋中に響き渡る
炎の暴風がみるみるうちに体を炭化させ、硬直で抜け出せないオーガにダメージを与えていった
やがてオーガが膝をつき地に倒れるとアレッサの魔法も消えた
倒れた後暫くしても起き上がってこないことを確認、そこでようやくアッシュ達はダンジョンボス、ジャイアントオーガの討伐に成功したことを認識できた
『た、倒した・・・そうだクウ!大丈夫クウ!?』
ダンジョンボスを倒したことよりもクウの安否の方が先だ
普通のスライムであればあれをまともに食らっていたら一瞬で殺されている
想像したくない最悪の事態が脳裏を過り、体を引きずりながら近寄っていくとそこには硬質化状態のクウの姿があった
どうやらオーガの攻撃が当たる瞬間に硬質化を発動させていたようだ
そのお陰でダメージを負ったものの致命傷には至らなかった
クウが無事だったことに安堵し、アッシュはその場でへたり込んでクウを抱きかかえた
『良かった・・・本当に良かった』
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