三十一話 「伏兵掃討」
ジャイアントオーガの相手をアレッサとクウに任せ、その間にアッシュは新手の魔物を迎え討つ
ゴブリン達を見ると通常の階層にいるのと違いどの魔物も武器を装備していた
警戒しつつアッシュが短剣を構えるとそれが開始の合図となりゴブリン達が突撃してくる
『ギャギャギャギャ!!』
三体のゴブリンが先行しその少し後ろからホブゴブリンが向かってくる
アッシュはまず残っていた粘着玉を全て取り出し、後方にいたホブゴブリン二体目掛けて投げつけ命中させた
本当はオーガの為に取っておきたかったが想定外の事態なのでやむを得ない
『この隙にゴブリンを!』
何度も戦ってきた相手とはいえアッシュ一人で五体の魔物を一度に相手にするのは厳しい
ホブを足止めしている間にゴブリン三体を先に片づけることができれば大分楽になる
そうしている間に一体のゴブリンが目の前までやって来ていた
ゴブリンに連携するという考えはない
独断専行で来てくれたのはこちらとしては好都合だ
一対一の勝負であれば武器を持っていようとゴブリンに負けることはまずない
アッシュは相手の動きをよく見て一撃を躱し、カウンターで胸に一突き入れた
『アガァッ!』
『まず一体目・・・!』
これでゴブリンは残り二体
間髪入れず二体目がアッシュに襲いかかる
すぐさま先程のゴブリンから剣を引き抜こうとするがなかなか抜けない
その隙に相手の攻撃が繰り出される
回避することが間に合わないと分かるとアッシュは倒したゴブリンから剣を引き抜くことを止め、向かって来たゴブリンに対して退くのではなく懐に潜り込むようにして体当たりで突き飛ばした
小柄な体格のアッシュでもゴブリン程度なら力負けはしない
突き飛ばしたゴブリンにすぐさま馬乗りになり、魔石を取る用のナイフで上から止めを刺した
『これで二体目・・・!三体目はどこに・・・うわっ!』
二体目を倒し三体目を探していると最後の一体を始末しようとしたその時、視界の端からこちらに凄い勢いで向かってくる何かを捉えたアッシュは反射的にそれを躱した
飛んできたのはホブゴブリンが持っていた武器、拘束されて動けないからその場からアッシュを狙って投げつけてきたようだ
もう一体のホブも同じように投げてきたが、来ると分かっていれば距離があるこの状態で避けるのは造作もない
しかしそれに気を取られている間に三体目のゴブリンが背後に回っていた事に気がつき、振り返ると手に持っていた棒切れを振り下ろすところだった
アッシュは籠手を使ってその攻撃を防御しようとするが、その次の瞬間アッシュは突然バランスを崩しよろけてしまう
咄嗟に足元を見ると最初に倒したと思っていたゴブリンが脚を掴んでいた
そのせいで防御の体勢が崩れゴブリンの一撃を頭部に食らってしまう
『ぐぁ・・・!』
ゴブリンの一撃といえど頭部にまともに食らうと視界がグラつき意識が飛びかけ地面に倒れる
だがなんとかギリギリのところで意識を保つことができた
一撃を入れて油断しているゴブリンの脚にアッシュは持っていたナイフで切りつけ、転倒させている間に一体目のゴブリンから短剣を引き抜き三体目のゴブリンの頸に突き刺し確実に仕留めた
『油断した・・・でもあとはホブゴブリンだ!』
自分のミスで傷を負ってしまったがホブの拘束が解かれる前になんとかゴブリンは片付けられた
残すホブも早く片付けなければと構え直す
すると地面に液体のようなものが飛び散ったのが見えたので顔を下に向けると、アッシュの視界が段々と赤くなっていった
それから生温かい液体が頭部から徐々に垂れてくる感覚があったので、手でそれを拭い取ってみると血がべっとりとついていた
『ポーションを・・・って全部割れてる・・・!』
クウに回復してもらうことは今出来ないので急いでポーションを取り出そうとするが、常備していたポーションは全て割れて使えない状態になってしまっていた
先程倒れた時の衝撃で割れてしまったようだ
今すぐ回復したいところだがもうホブが拘束を解いてこちらに向かってきている
アレッサ達の方に視線を移すとクウが上手くアレッサの援護をして着実にダメージを与えていた
あの様子なら心配はないだろう
視界を邪魔する血を袖で拭い再び剣を構える
武器を捨てたホブならリーチも短いし動きも単調、急所をちゃんと突けば一撃で倒すことができるだろう
アッシュは突進してくるホブのがら空きな足元に滑り込み、そして振り向き様に片方のホブの脚に傷を与えていく
『ブオォ!』
脚に深い傷を負ったことでホブの体勢が崩れる
その隙を見逃さずホブの魔石が埋め込まれている場所をピンポイントで狙い剣を突き刺す
本来これをすると魔石がダメになってしまうので普段はやらないが、今は確実に倒すことを優先
魔石が壊れるとホブの目から生気が失われ地面に倒れる
『あと一体!』
残るは目の前にいる一体のみ
最後に残されたホブは片方がやられたことで闇雲に拳を振り回してくる
単調になった動きほど避け易いものはない。が、こちらも攻撃をする隙がない
隙が生まれたところで仕留めようとひたすら避けに徹するが、その途中でアッシュは膝をついてしまった
ゴブリンのダメージが思っているよりも響いていたようだ
その隙を突き相手が渾身の一撃を繰り出してくる
『しまっ・・・!』
ホブの一撃では恐らく腕がやられるだろうが受けるしかない
そう思い腕を前に出す。だがホブの攻撃はアッシュに当たる直前で動きを止めた
『クウ!』
クウが機転を利かせパラライズでホブの動きを封じてくれていた
一人で相手にすると啖呵を切っておきながら最終的には従魔に助けてもらうなんて情けない限りだが、今そんな事を考えるのは後回しだ
アッシュは動きを封じられたホブに止めを刺し、オーガが呼び出した手下を全滅させた
『これで手下は全部倒した・・・あとはお前だけだ!』
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