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十三話 「黒魔導士」

子猫の救出に成功したアッシュは、町に着くと自宅で子猫の帰りを待っているシュリの元へと向かった

シュリは玄関前でずっと帰りを待っていたようで、アッシュが子猫を抱えているのを見ると泣いて喜んでいた

シュリの両親も話を聞いて報酬をとの話もあったが、元からアッシュが個人的に手伝ったものなのでそこは頑なに受け取らなかった

猫探しはこれにて一件落着。だがもう一つ問題は残っている

アッシュは一先ず女性を宿まで運ぶことに

女性を背負っている間、背中には柔らかな感触が・・・

不可抗力とはいえ気まずい気持ちになりながら早足で宿に到着、布を敷いた藁の上に寝かせ意識を取り戻すのを待っていると暫くして女性は意識を取り戻した



『起きましたか?』


『ここは・・・?ハッ!』



目を覚ました女性は朧気な意識の中アッシュを見るともの凄い勢いで壁の方まで飛び退いた

すると今度は自分の体を隅々まで確認し始めた

恐らく意識がないうちに襲われたと勘違いしているのだろう

アッシュは慌てて弁明した



『あの!僕は気を失ってしまった貴女をここに連れてきただけで何もしていませんから!』


『気を失って?確か魔物を倒したところまでは憶えて・・・』



女性が気を失う前の記憶を遡ろうと頭を捻らせていると、突然大きな腹の音が納屋に響いた

誰の腹の音かは一目瞭然、音の発生源である彼女は顔を真っ赤にしたまま俯いていた



『す、すみません・・・』


『宿の中に行って何か頼みましょうか』


『でも今私お金がなくて・・・』


『安心して下さい、今日は僕が奢りますよ。助けてもらったお礼ですから気にしないで下さい』


『たすけ・・・え?』



アッシュは戸惑う女性を半ば強引に宿の中へと連れていき、席へと座らせ料理を注文

そして料理がくるまでの間にここに至るまでの経緯を説明した



『という感じで僕達は貴女に助けてもらったんです』


『そうだったんですか・・・ごめんなさい、どうやら勘違いしてしまっていたようです』


『いえ、誤解が解けたなら良かったです』



なんとか女性の誤解を解くことはできてアッシュはホッと胸を撫で下ろす

まともに話を聞いてくれる人でなければ今頃警備隊を呼ばれていたかもしれない

料理が届くと女性は久々の食事かのように涙しながら食べていた

きっとここに来るまでに色々あったのだろうと察しはついたが触れない方がいいだろう

料理を綺麗に完食すると女性は満足した表情で礼を述べた



『本当に助かりました。もうかれこれ三日は水以外口にしていなかったので・・・あっ、申し遅れました。私はアレッサと言います。ここには冒険者としてダンジョンの攻略にやってきました』


『アッシュです。こっちはクウ、僕も一応冒険者をしています』


『魔物を使役しているということはアッシュさんはテイマーなんですね。私は一応黒魔導士やらせてもらっています。まだまだ未熟者ですが・・・』



攻撃系の魔法を得意とする役職の者は黒魔導士と呼ばれている

ずっと握って離さなかった杖とあの火の玉を見た時から大方予想はついていた

アレッサがワイルドボアを倒した時に放ったのはファイア・ボールという火属性の初級魔法らしい

攻撃魔法には火・水・風・土・雷の五属性がある

この五属性が基本属性となるが、その他にも基本属性から派生した様々な属性が存在する

多種多様な属性を扱うことができる黒魔導士は魔物の弱点を突きやすいことからパーティメンバーとして欲しい役職として真っ先に挙げられる程人気な役職だ


そんな人気な役職であるアレッサは遠路はるばる一人でこのルートの町を目指して来たという

途中までは順調に来ていたようだが、ここに来る前に寄った村で少し目を離した隙に杖以外の荷物を盗まれてしまったらしい

それで村の人間から町までなら一日かけて歩けば着くだろうということを聞いたので徒歩で町を目指すことにした

だが、途中で道を間違えたのか迷ってしまいずっとあの森を彷徨っていたとのことだった



『お金がないということは今日の宿代も持ってないんですよね。よければ僕が出しましょうか?』


『そんな!そこまでしてもらわなくても大丈夫です!森で遭遇した魔物を倒した時に魔石も集めておいたので換金すれば宿代位にはなると思うので!』



見栄を張ってしまったが正直宿代まで出してしまっていたら財布はスッカラカンになっていたところだったので、アレッサの方から断ってもらえて安心している自分がいた

換金をするとのことだったので、まだ町のことを知らないアレッサを冒険者組合がある場所まで案内してあげた



『何から何まで本当にありがとうございました』


『いえ、僕達も助けられたのでおあいこですよ。ではおやすみなさい』


『あ、あのアッシュさん!』



宿に戻ろうとするとアレッサが引き留めてきた

まだ何か困り事でもあるのだろうかとアレッサの方に向き直ると、意を決したような表情でアッシュに語りかけてきた



『明日私と一緒にダンジョンに行ってくれませんか?』


『え?僕とですか?』


『町に知り合いとかいませんしここのダンジョンに詳しそうなアッシュさんが一緒にですと心強いんですが・・・ダメですかね?』



正直今の心情的にパーティを組む気にはあまりなれなかった

だがアレッサは今さっきこの町に来たばかり、寄る辺ない彼女の誘いを断るというのも気が引ける

迷った挙句アッシュはアレッサの誘いを受けることにした



『分かりました、ご一緒させてもらいます』


『本当ですか!ありがとうございます!』



その日は明日の待ち合わせ時間だけ決めアレッサと別れた

一日で色々な出来事があったアッシュは宿に着くと疲労でそのまますぐ眠りについてしまった




ご拝読いただきありがとうございます!毎日20時に最新話を更新していますのでよろしければ次回もよろしくお願いします!

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