26.スキルポイント -2
歩きがてらめぼしい素材を集めながら、出発前の話を再開する。
「さて、なんでシズクが【持続時間強化】を覚えられたかだが、スキル習得の仕組みからすれば当然なんだ」
「仕組み」
「スキルの仕組みは単純。該当するスキルポイントが【1000】あるなら使える。ないなら使えない。これだけだ」
「それはボクも知ってる」
普通にスキルを覚えるなら、最初の【1000】までは地道にコツコツと勉強と訓練を積むしかない。俺もそうしてアルトラたちに貸すスキルを覚えたものだ。
習得できたあとはスキルを使うことでポイントがたまり強化されてゆく。ある閾値を超えると進化するスキルもあり、俺の手持ちはその大半が進化済みだ。
「俺の【技巧貸与】はそのスキルポイントをやり取りできる。厳密には『スキルを貸す』というより『スキルポイントを貸す』スキルなんだ。十日以上の期間を設定して好きな量のスキルポイントを貸し出せる」
ただし貸せるのはスキルごとに一人ずつだ。耐性系スキルを【範囲強化】を持つ者に貸して全体に効果を及ぼすような工夫はできるが、スキルとして持てるのはあくまで俺ともう一人のみ。ポイントが【1億】あるスキルから【1000】だけ貸したなら残りの【9999万9000】は自分で使うほかない。
「ポイント【100万】ずつ一〇〇人に貸せたらすごいよね。スキルの軍隊になりそう」
そういう発想ができる辺り、シズクはやはり賢い子なのだろう。たとえば術者のスキルを反映できる、そういう使い魔を作るスキルがあれば話は変わるかも知れない。ゴーレムとか。
「そうして貸したスキルポイントは利息が十日で一割。【1000】借りたら【1100】返さないといけない。利息の【100】は使って増やさないといけないわけだ」
「増やせなかったら?」
「【-100】になる。マイナスだ」
「スキルポイントにマイナスなんてあったんだ……」
うっかり【1,000,000】なんて貸そうものなら一〇日で【100,000】を稼がないとならなくなる。エリアの【高速詠唱】が六年使い続けて【1,212,000】だったのを考えればまず不可能。貸した時点で負債が確定する。
さらにマイナスにも下限があるらしく、底を打つと他のスキルのポイントさえも吸い取り始める危険性がこのスキルにはある。
「スキルポイントにマイナス域があるなんて俺も聞いたことがなかった。まだまだ未解明な部分で俺にも迂闊には触れないんだ」
俺が【技巧貸与】を最低限しか使っていないのはそのためだ。だからシズクには返せなくなるほどの量は貸さないし、期限も最低の一〇日と決めている。
「さて、ここまで言えばどうしてシズクが返済後も【持続時間強化】を手元に残せたか分かるんじゃないか?」
考えること、数秒。
「……あー」
「当ててやろうか。戦闘中以外もヒマさえあれば【装纏牙狼】を使ってたな?」
「ずっと使ってポイントを貯めれば、長く使えるようになったりしないかと……。あれで【持続時間強化】のポイントが【2342】まで貯まって、返しても【1242】残った?」
「正解」
簡単に言っているが、それこそ寝食を忘れるように使い続けてやっとという世界だ。それでも教えれば無理にでもやろうとするから黙っていたのだが。
まさか勝手にやるとは思わなかった。シズクの【装纏牙狼】にかける想いの強さを侮っていた形である。
「そういうことか……。じゃあ他のスキルも……?」
「シズクさん。増やせるから借りよう、は借金で破滅する方の典型的な思考と伺っております」
横でニコニコしながら講義を聞いていたコエさんが、スンと冷たい目になって釘を刺した。
「わ、分かってる……」
「他に欲しいスキルでもあるのか?」
俺のスキルは強力なものもあるが、シズクにしてみれば【装纏牙狼】こそ唯一最高のはず。と思っていたら、シズクは俺の手にある軍隊蟻の大顎を指差した。
「収納のやつ」
「これか?」
一抱えある大顎を手から消してみせる。俺が収納系スキルと呼んでいるものだ。
「絶対に便利だよね」
素材を拾いながら歩いている俺たちだが、数百の魔物から集まる牙や爪は相当な量になる。背嚢で担いでいたらどんなことになるか想像もつかない。
「それってなんていうスキルなの?」
「これはそういうスキルがあるわけじゃないんだ。三つのスキルを組み合わせてそういう風に使ってる」
もし『ストレージ!』とでも叫ぶだけで荷物がどこかに収納されるスキルがあるのなら世界の流通に革命をもたらすだろう。ユニークスキルだとしても再現を試みる研究者が多数現れ、おそらくは量産されるに違いない。金が絡んだ時の人間は侮れないのだ。
「まず【神代の唄】で習得した冥冰術コキュートス。術者が解かない限り千年は溶けない氷を生み出す魔術だ。あと【空間跳躍】に、その範囲を広げる【森羅万掌】だ」
これを使ってアイテムを無数に収納する方法。せっかくなのでシズクに考えさせてみようと思うが、分かるだろうか。
文字数がちょうどいいので切りました。
ちなみにとんでもねえ力技です。
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