25.スキルポイント
【返済処理を開始します。 スキル名:持続時間強化 債務者:シズク】
シズクとの出会いから十日。その間ずっと世話になっている宿屋に、俺はコエさん、シズクと集まっていた。スキルの回収処理のためである。
「全開の【装纏牙狼】ともしばらくお別れかー……」
最初に貸したスキルの貸与期間が今日で終了した。同じ部屋にいなくても回収はできるのだが……。見てみたいというシズクの要望で、こうして三人で顔を突き合わせている。
「お別れと言っても【装纏牙狼】が消えたわけじゃない。【持続時間強化】も必要になったらまた貸してやるから」
「そうかもしれないけど。やっぱり普段は十秒しか使えないとどうしてもね……」
「……なんと」
処理を終えたコエさんが驚いたような声を上げた。どうしたのと小首をかしげるシズクに、コエさんはゆっくりと微笑みかけた。
「おめでとうございます。【持続時間強化】はシズクさんの中に残っておりますね。スキルポイントは現在【1242】です」
「どういうこと?」
「図らずも自前のスキルになったな」
「あ、ありがとう? え?」
シズクが晴れて【持続時間強化】を習得した。
理由を説明しだすと少々長いので、次の用事に向かいながらにしよう。俺がそう提案し、狐につままれたような狼と連れ立って俺たちは宿を出た。
目指すは町の外だ。
◆◆◆
『ボクの故郷を助けて』
シズクからそう頼まれたのが一週間ほど前のことになる。彼女の生まれた『狼の隠れ里』はさほど遠くないというが、予期せぬ出来事により俺たちはキヌイでの滞在を続けていた。
「魔物の討伐を請け負ってくださらんか」
町長、すなわち宿場町キヌイの代表者からそう依頼されたのだ。
「ここ数ヶ月、キヌイ周辺の魔物があまりにも活発化しておるのです」
「ええ、俺たちも町に入る前に襲われました。撃退しましたが」
八〇体ほど。
「町としても何か手を打たねばと、四〇人からの傭兵団を呼び寄せたんじゃが……。仕事の前にほとんどが寝込んでしまっての」
四〇人の傭兵団と聞いて、俺とシズクは思わず顔を見合わせた。
そう、あの夜にシズクが【装纏牙狼】で叩きのめした傭兵団である。
「いや、責はあくまでゲランと、小遣い稼ぎのつもりで首を突っ込んだ傭兵団にある。それでも魔物はどげんかせんといかん。傭兵四〇人の代わりが務まりそうな人が現状、貴方がたしかおらんでな……」
せめて交代の傭兵団が到着するまでは魔物狩りを引き受けて貰えないか、そう頼まれて今に至る。予想外の仕事ではあったが、これは『狼の隠れ里』を救うことと必ずしも無関係ではない。
「俺たちが町につく前にも尋常じゃない魔物に襲われたが。あれもダンジョン『蒼のさいはて』のせいなのか」
「……そうだと思う」
「そこまで魔物が漏れ出しているなら、『魔海嘯』まで早くて半年ってところか。シズクが里から出てこなければ危ないところだった」
ダンジョン内の魔物が自分から地上へ出てくることは通常ありえない。その例外が『魔海嘯』あるいは『ダンジョンブレイク』と呼ばれる現象だ。
生きた迷宮であるダンジョンは長い時間をかけて成長しており、最奥にいる魔物の格によって最終的な規模は変動する。その中でも四〇層を超える広大さとそれに相応しい『王』を戴くものがS級のダンジョンだ。
そうしたS級ダンジョンが成熟しきると、ある日を境に中身が一斉に地上へと溢れ出す。周辺一帯はヒトの生存を許さぬ魔境と化し、そうしてできた死の土地に俺たちの世界は囲まれている。
低階層の魔物が地上にこぼれ出るのはその予兆。キヌイ周辺では今まさにそれが起きているらしい。
「ダンジョンを攻略しても地上に出た魔物が消えるわけじゃない。代わりが来るまでに粗方片付けて、後ろの憂いなく『蒼のさいはて』へ向かうことにする」
「うん」
「はい、マスター」
キヌイの町が魔物で滅ぶことがあれば軍が派遣され、ダンジョンとともに『狼の隠れ里』も見つかる。それは避けねばなるまい。
「【斥候の直感】、起動。……多いな。あちこちに魔物が群れてる」
【神眼駆動】とも合わせて把握した敵数、計一〇四体。俺は敵影の濃い方向へ向けて手を翳した。
「【亜空断裂】、起動。切り裂け」
空間ごと切り裂く攻撃に、物理的な防御力は意味をなさない。一〇四個あった魔物の影が即座に細かい一〇七八個の影になった。
「次だ」
「早い……」
「移動の間に、朝の続きをしようか。スキルの話だ」
スキルとかスキルポイントの説明をあまりできないまま来てしまったので、『蒼のさいはて』攻略の準備をしつつ解説します。といってもかなりシンプルですが!
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