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アイドル育成計画  作者: 夜明天
第2章

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第12話

衣装合わせも終わり、7人は休憩と今後のカフェ営業の練習を兼ねて、優雅なティータイムのひと時を過ごしている。紅茶やコーヒーなどの淹れ方は、本業ということもあり千佳が丁寧にレクチャーしていた。

「健人くん、練習場所と衣装は決まったけど、肝心の曲はどうするの?」

千佳が、プロの手つきでティーポットからカップに注ぎながら尋ねてきた。僕はいつものダージリンティーの香りを楽しみながら、カップを置いて答えた。

「そうだね…ミニライブだと大体15分から20分くらいが目安かな。だから5、6曲あれば十分だと思う。オリジナル曲を4、5曲と、カバーを1、2曲って感じで」

僕は指を折りながら続けた。

「振り付けは僕がやるとして、問題は楽曲制作だね。作曲・編曲なら何とかなるけど、作詞が…この中に詞を書ける人がいればお願いしたいし、そうじゃなければ外部に委託することも考えないと」

「作詞!?やりたーい!」

志歩が目を輝かせながら勢いよく手を上げた。普段の彼女からは想像できないほど真剣な表情も一瞬見せる。

「実は前から、みんなで歌う歌詞を書いてみたかったんだ!」

確かに志歩は渋谷駅で街頭ライブをしているし、きっと作詞の経験もあるのだろう。

「本当に?」

僕は志歩の熱意に少し驚きながらも、嬉しそうに微笑んだ。

「でも弾き語り用とは全然違うよ?7人分のパートを考えないといけないし、結構大変だと思うけど…」

「う…うん!もちろん、頑張るよ!」

そう答えながらも、志歩は少し唇を噛んだ。やりたい気持ちと不安が入り混じっているのが見て取れる。

「振り付けは曲が完成してからだね。カバーもいろいろアレンジが必要だし… そうだ、みんな何かやりたい曲ある?」

「私は、最近のJ-POPがいいです。」

菖蒲さんが控えめに手を上げた。

「私はロック系がいい!」

初歌ちゃんが即座に反応する。

「えー、でもお客さんのことを考えると、王道系ドルソンのほうが…」

千佳が実務的な視点から口を挟んだ。

「まあまあ、じゃあ今回は、J-POPも、ロック系も、王道ドルソンも、全部やろう。じゃあとりあえず、現状の7人の実力が知りたいな。フォーメーションやパート割りの参考にもなると思うし。だから順番に歌とダンスしてもらえない?誰から行く?」

「じゃあアタシから!」

そう言ってルナがステージの上に上がる。

ルナが最初の音を口ずさんだ瞬間、部屋の空気が変わった。彼女の透明感のある歌声は、まるでプロのアーティストのようだった。続いてダンスも披露してくれたが、これまた申し分ない。

「さすがルナ!」

僕は安堵と期待で胸がいっぱいになった。少なくとも一人、確実にグループを引っ張ってくれる存在がいる。

続く初歌ちゃんは勢いはあるものの基礎が不安定で、菖蒲さんは丁寧だが声量に課題がある。一人一人の特徴を見極めながら、僕は頭の中で既にフォーメーションを組み立てていた。

10分後、全員の歌とダンスの実力のチェックが完了した。

「ということで、フィードバックと練習メニューをLINEに送っておいたから、ちゃんと確認しておいて」

「え、嘘でしょ?!この短時間で!?」

「大袈裟だな〜…別にこれくらい普通じゃない?しかもダンス初心者なのは綾乃さん、菖蒲さんと志歩だけだよね?筋は悪くないからまずは基礎を固めよう。そして…」

僕は玲奈ちゃんと初歌ちゃんの方を見た。

「玲奈ちゃんと初歌ちゃんは…」

僕は正直に言った。

「正直に言っちゃうけど、基礎くらいはできてると思ってた。でもそれもできてない…まあ、初心者組と一緒に練習しよう。」

「うう…はい…」

「私結構いい感じでしょ!」

千佳が目を輝かせながら言う。

「うん、特にラップはすごく良かった。」

僕が答えると、千佳の顔がぱっと明るくなった。

「本当?実は密かに練習してたの!」

「それは頼もしい。ラップパートは千佳にお任せしたい。」

千佳は歌もダンスも堅実で安定している。特別に突出はしていないが、グループ全体のバランスを取る上では重要な存在だ。そして何よりラップのセンスは本物だった。

「それで、綾乃さんは基礎がしっかりしてるのが分かる。」

僕は彼女に向き直った。

「ただ、クラシックの発声が少し出てるから、ポップス向けに調整していこう。透明感のある声質は、このグループにとって本当に貴重だから。」

綾乃さんの表情が少し明るくなった。

「ありがとう、頑張る、ね。」

志歩は流石、たくさん人前で歌っているからいい感じだと思う。」

「えへへ、乃木さんに褒められた。」

「照れてるところ申し訳ないけど」

僕は苦笑いした。

「所々テンポが走ってるところがあるから、もう少しリズムを意識してみて。表現力は素晴らしいから、そこが改善されればもっと良くなる」

「うぅ…でも褒めてもらえて嬉しかった!頑張るね」

志歩は少ししょげた様子を見せたが、すぐに気を取り直したように頷いた。

でも褒めすぎて調子に乗られても困る。以前、別のグループで見たことがあるが、褒めただけで天狗になったメンバーがチーム全体の雰囲気を悪くしてしまった。バランスが大切だ。

みんなそれぞれに課題はあるが、伸びしろも十分に感じられる。特に志歩や綾乃さんのように、個性を活かしながら成長していってもらえれば、きっと素晴らしいグループになるはずだ。

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