街灯の下
僕は、心臓がドクンとはねたことを感じた。
…やっと見つけた。
古賀さんは、公園のベンチに腰かけていた。
辺りは真っ暗なのに、淡い光を放つ街灯のおかげでその下にいる人物が古賀さんだというのが瞬時に分かった。
ここにたどり着くまで、何軒ものコンビニやファミレス、薬局にちょっとした脇道に住んでいる人しか使わない行き止まりまで、すべてを回ってきたけれど、そんなことなんてどうでもよかった。
それよりも、見つけられたことへの安堵が大きい。
母さんの言い方からは、家から向かって南と言う事しかわからなかった。
僕はあのとき、古賀さんを走ってどこかへ行かせてしまった。
だから…まさか、自転車ですら遠いと感じる距離にいただなんて思ってみなかった。
なによりこの距離は、古賀さんが僕の家から離れた距離。
僕と置きたい心の距離なのだろう…。
そう思うと、納得できてしまう自分が居た。
母さんが伝えてくれた、「――――今日は帰ってこないそうよ」という言葉が、もっと先もそうなんじゃないかと思ってしまう。
今の古賀さんは、遠目から見てもあの日の夜のように暗い雰囲気を纏っていた。
これは、少しの間でのこと。
古賀さんは僕だと認識できているかいないかはわからないけれど、また顔を落とした。
きっと、自動販売機の前に自転車を止めた時の音でびっくりしたから、一度確認した程度の事だと思う。
夜に一人でいたから怖いからなのかな。
僕だって怖い。
それなのに、そんな思いにさせたのは僕だ。
だから、再度罪悪感があふれ出す。
本当にごめんなさい。…でも、どう話しかけたらいいのだろう。
今すぐ傍によって話しかければ…逃げられそうだ。
…それは仕方ない。
それだけのことをしたのは分かっているけれど、…
でも、…もう決めたんだ。
人を思いやることができる人間になるって。
…何のために古賀さんの家族になるかって…思い出したんだ。
さっき、あの日の古賀さんが重なって見えたのだって、あの時の純粋な想いを思い出したからで……
あの日誓ったことはまず、古賀さんに恩を返すこと。
…次は、古賀さんを安心、させること…。
家族も思いやれないで、他人を思いやる事なんかできやしない。
…少なくとも僕は、家族を一番に思いやりたい。
そう思えば、体は勝手に動いた。
ポケットから取り出したスマホのメッセージアプリに言葉を選んで文字を打つ。
…いや、なんか長いな。
三行にまで及んだ文を一度すべて消す。
真也は読み手にも思いやりを見せる。
…いいや、それとは別に恥ずかしい思いがあるのあろう。
それでも、固い決意によってシンプルを選んだ。
これからの話は顔を合わせてから話したい、そう思ったから。
…これでいい、のかな。
二度も三度も読み返して、短く深呼吸を挟む。
――――――――ピコンッ
少し離れた場所から、メッセージの着信音が聞こえる。
紅羽はポケットからスマホを取り出すと、…メッセージを読んだのだろう。
唐突に、「ふぇっ!…」と素っ頓狂な声を上げる。
人影は二つ、公園に一つと道路を挟んだ自販機の前にもう一つ。
紅羽の間抜けな声は、良く響いた。
当人は、それに気づいていないらしく、スマホを画面を見て固まっているが…
真也は歩きだした。
一人、帰る家もない紅羽に向って。
『古賀さん、今からお話があります。』
書き込んだメッセージの内容を反芻して。
どうでしょうか?
感想,アドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。
また、誤字脱字を教えてください。




