有酸素運動
僕は急いだ。
古賀さんに見られることを意識して、
最低限の身振りを整えて、髪型はどうせ崩れることを予想してあえてそのままにし、…それよりも先を急いだ。
ドアを思いっきり開き、部屋を出てすぐにある階段を二段飛ばしにおりて、小走りに玄関にたどり着く。
そして、家を出ようとしたとき、後ろから声が掛った。
気持ちを抑えて振り返る。
「…真也、最後の助言よ……お探し物は家から向かって南。…それ以外は教えてあげなーい」
そう言って、満足したのか母さんはリビングへと消えていく。
…ありがたいけれど、なんかムカつくね。
僕は、唾を吐き捨てることなく家の駐輪所を目指した。
「…ハアハア…」
すぐに息は上がり始めた。
元から体力のない僕は、自分の限界は知っているし、無理に体力を付けようとは思っていなかった。
だけど、今になってそれが裏目に出た。
…いや、体力はあるに越したことはないかな。
真也は、それでも足を動かした。
途中、信号待ちしてから発進するとき、ペダルを踏み外してサドルを股間にぶつけることもあったが…辛うじて瀕死で済んだ。
幸いなのは、やはり自転車であること。
歩きと違ってスピードも使う体力も違う。
大方、ショッピングモールの先の大通りまでの場所は探し潰した。
多少の見落としはあったのかもしれない。けど、いちいち公園やらコンビニやらファミレスやらを回ったが…行く場所全てに古賀さんの姿はなかった。
もっと先にいるのだろう。
「それなら、どこにいても見つけてやる。」…と、決意したはいいものの、それは迷惑ともとれる。が、それは頭にはなかった。
…真也にとってこのことは、はなから迷惑と思われる行為の範疇にはないのだ。
思いやる気持ちさえあれば、それは迷惑にはならない。
…あながち間違いではないが…紅羽がどう受け取るかが問題なのだ。
「ハアハア…っはあ…ハア…」
…まだ見つからない。
というか…ここ、どこ。
見当たす限り、家ばかり。
「まさか!…家の群れに入ってきてしまった…」
つまり、住宅街である。
…真也は決して、頭が悪いのではない。
ただ、残念な奴なのである。
有酸素運動を限界を超えても続けて、酸素が脳にまでいきわたっていないのだろう。
むしろ、無酸素運動に近いのでは、と思わせるほど迫力のある表情である。
当人もそれを判断してか、一度休憩をとることにした。
まだ探し出せていない古賀さんに、こんな軟弱な自分に許しを与えてもらおうと必死に心の中で土下座する。
まあ、適当に近くにある公園でいいかと思ってもう一度ペダルをこぎだす。
少しして、見えてきた公園は、近くに自販機があり、息を整える場所の条件としては丁度良かった。
そして、再度心の中で古賀さんに頭を下げると、自転車から降りて、自動販売機の前に立った。
こんな時間だから、コーヒーを選ぶ。
さすがに、自分の分だけというのは古賀さんに忍びないので、何がいいだろうかと悩む。
…古賀さんは、意外と?甘いものが好きだからなあ……と思ってフルーツジュースのボタンを押そうとしたところで、ふと…公園のベンチに腰掛けた人影が目に映る。
こんな時間に、一人公園にいるなんてどうかしたのだろうか、と思いつつ見つめていた。
ちょうど、その人影がこちらを向いたところでボタンが指に触れた。
――――――――ガシャン!
……それは、ずっと探していた古賀さんだった。
どうでしょうか?
感想,アドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。
いつも読んでくださって?ありがとうございます!




