偉大な母
※ 紅羽 視点
私は何も考えないように、夜の風にあたっていた。
この頃は、風の季節で、風で暑くもなるし、寒くもなる。それが、頭をスゥーと冷ました。
けれどさすがに、この時間帯までなると外で独りは怖い。
…贅沢を言ってしまえば、寂しくもあった。
でも、自分にはそれを口に出す資格なんてないと知っていたから、お母さんには今日は帰れないことは伝えていた。
行く宛があるわけじゃない。
正直、周りさえ明るければここで一夜を明かすことになってもいいとは考えてはいたけれど、それは無理な相談だ。
だから、他の選択肢を探した。
お母さんには、とりあえずメッセージアプリで今日はお泊り会があると伝えておいた。…が、言葉通り今から友達の家にお邪魔しようとするのはだいぶ気が引ける。
…そもそも私は、そこまで神経は図太い方じゃない。
今から行くなら、…ホテルかぁ。
それ以外行くところも浮かばなし、仕方ないと思った。
手持ちを考えれば、カプセルホテルが一番、なのかな。
……カプセルホテル…か、決して悪口ではないけれど、頭をぶつけるのは不可避、それに前の人がつけたシミをどうにか避けながら寝ると考えると…少し値は高くてもビジネスホテルも悪くないと思えてきてしまう。
…やっぱり友達のお家も選択肢として復活させよう。
じゃ、駄目だよね…。
何のためにここにいるのかをしっかり考えないと…。
私は私の中で芽生えてきた邪念を払う。
ああ、どうしたらいいのか頭を悩ませていると、ポケットでスマホが鳴った。
…まあ、メッセージを送ってきたのが誰だとかあまり気にせずに開くた。
「ふぇ!…」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
※ 真也の母親 視点
「ああもう、そっちじゃないって、…こっち!こっちなのに…!」
彼女は、キッチンでもどかしい思いをスマホ画面に向かって叫んでいた。
「…あ、そっちから行く方法もあったんだ。…うう、恥ずかし…って、また!、またなのっ!」
「…ん?、ああ、そういうこと。…ふふ、すべては私の計画通りなのよ!」
誰に聞かせるわけでもないその言葉は弾んでいた。
これが、二児の母の姿である。
今、彼女のスマホでは、ある航空写真が映し出されていた。
そして、その写真の中で二つの点があった。
その二つの点のうち一つは赤の点で、だんだんと青い点に近づいていた。もう一方の点は、青い点で、ある地点で止まったまま動かない。
それを、ただ熱く眺めていた。
ネタバラシをすれば、この点はGPS機能を使ったもので、登録したスマホの位置を示している。
即ちこれは、新時代のストーカキングともいえるだろう。
…いいや、これも一種の保護者の義務とも言っていい。
本人だけは、そう主張をしている。
「…というわけでして、私にはこの先の展開が読めて…あっ!……まずい、ご飯の用意を忘れてた!」
そういってから、あわただしく食料を買いに行くために玄関へ向かった。
さっきまで握られていたスマホは、まだキッチンに置かれたままだ。
遠くから、ガシャン!と言う盛大な音がなったの後に、ガチャリ…という音が響いた。
彼女は、今ちょうど点と点が重なっていることを知らない。
どうでしょうか?
感想,アドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。




