27話:パレード
「クルス・F・ヴェルジオンです。どうぞお見知りおきを」
昨日から何度同じ台詞を吐いただろうか。既に数えることも放棄したクルスは機械的に腰を折り、目の前に立つ貴族の男と無難に挨拶を交わす。
きちんと丈を合わせた筈の礼服が息苦しく感じるのは精神的な重圧の為だろう。
皇都の中心、白神の聖地『聖なる丘』に座す“教皇宮”。地方都市に匹敵する広大な土地に荘厳な作りの白神教会や教皇の住処である塔が並び立つ中のひとつ。
パレードに合わせて解放され、街の主要路に接続された白亜の大聖堂の大広間。
クルスは今、そこにいた。ヴェルジオンに連なる貴族の嫡男として宴に参加していた。
周囲には同格か、あるいはそれ以上の地位にある者たちが犇めき、纏う服装以上の美辞麗句で互いを飾り立てている。
口頭に上る話題は貴族社会での地盤固め、政治的取引、婚姻等々。横で聞いていても、教皇の生誕を祝うという目的は微塵も感じられない。
(俺は何をしているんだ?)
人目を縫って広間の端に移動したクルスは貴族になりきれない己を恥じた。
彼らがしていることは間違っていない。白国では各領地の貴族の権力が強い。必然的に自領地の発展と安全を確保する為には周辺領地との連携が不可欠だ。
相手を称え、気分を乗せ、自領に有利な条件を引き出さねばならない。
だが、クルスにはそれが辛かった。慣れていないというのもあるが、それ以上に場の“におい”に耐えられないのだ。
熟しすぎた果実のような、金と権力に溺れた人間の裡から漏れ出すにおい。
妖精憑きとなったことで鋭敏化したクルスの感応力はそれをはっきりと捉えていた。
無論、この場に居る全ての人がそうであるわけではない。だが、同時に、まったく腐敗していない者もいない。
(いかんな。どうにも参っている)
想像以上の魔窟に気が滅入ったのか、精神が不調を訴えているのを自覚する。
パレードが始まる前に一度落ち着こうと、他者の視線を避けるようにクルスはひとり大広間を横切る。
その最中、ふと広間の入口の方で人だかりが出来ているのが目に入った。
「ん、何だ?」
他とは種類の違う熱気を感じて、クルスはその長身で人垣の後ろから覗いてみた。
「“水晶鈴”、次は我が領地に!! 我がDのアウディチ領に!!」
「いえいえ、まずは此方に。旬の果実で作った酒もありますぞ」
「それならウチでも――」
幾重の人垣に囲まれていたのは、水色の髪に踊り子の衣装を纏った女性だった。
健康的な肢体を惜しげもなく晒し、作り笑顔で佇んでいるその人物にクルスは覚えがあった。
「カーメルさん?」
決して大きくはなかったクルスの声に、しかし、歌姫カーメル・クリスタルベルはぱっと顔を上げた。
束の間、その瞳に浮かんだ縋るような光をクルスは見逃さなかった。
「クルス!! ……様。えっと、ご挨拶の方はもうよろしいのですか?」
「ええ、すみません。お待たせしてしまったようですね」
「いえいえ。こちらこそお手を煩わせて申し訳ありません。それで、前回の依頼についてなのですが――」
声と共に、するりと人垣をすり抜けたカーメルはクルスの手を取って素早くその場を脱した。
あとには、唖然とする貴族たちが残されていた。
「よかったのですか? 今後の仕事に差し支えるのでは?」
「ん?」
暫く歩いて、周りに人影がなくなったのを見計らって、クルスは問いかけた。
前を行くカーメルがくるりと振り向く。動きに合わせて腰に巻かれた淡い色のパレオがふわりと揺れる。
「いいのよ。生誕祭が終わったら暫く緑国に行くつもりだから。こっちにはほとぼりが冷めてからまた来るわ。街並みは嫌いじゃないの、街並みは、ね」
貴族たちの相手に辟易していたと言外に告げて、カーメルは大きく息を吸い込んだ。
「ああもうウンザリよ!! どいつもこいつも人をモノみたいに!! あたしは歌いたいから歌ってるの!! 邪魔すんじゃないわよ!!」
いきなり大声で愚痴る歌姫の姿に驚きつつ、しかし、共感できる感情にクルスは小さく苦笑した。
「大丈夫ですか?」
「ふう……ちょっとはすっきりしたわ。ダシに使ってごめんなさいね」
「いえ、丁度外の空気を吸おうと思っていた所でしたので」
「……むー」
硬い笑みで応対する騎士に、歌姫はこれ見よがしにむくれてみせた。
何かマズかったかと心中で冷や汗をかきながら、クルスはなんとか笑顔を維持する。
そんな滑稽な様子に対し、歌姫の機嫌が急転直下に悪化していく。
「えっと、カーメルさん?」
「情けない声だしてんじゃないわよ、クルス!! 傭兵達を前に啖呵きったアンタはどこいったのよ!!」
「ッ!?」
少女の一喝。歌姫だけあってその声には骨身を震わせる芯がある。
対するクルスは雷に打たれたような気分だった。そして気付く。
息苦しいのも当然だろう。飾り立てたヴェルジオン次期当主という虚像の中に、クルスはいない。
誇りを思い出す。己を取り戻す。腐敗が何だというのだ。その全てを呑みこんでこその自分ではないのか。逆に呑まれて何を成すというのか。
「あいや、すまない。どうも場に呑まれていたようで」
顔つきの変わったクルスに、カーメルは「それでいいのよ」と一転して華やかな笑みをみせた。
「それと、今は依頼でもないんだし、タメ口でお願い。堅苦しいのはこりごりなの」
「わかり……わかった。これでいいのか?」
「なに、急に元気になったじゃない? そんなにあたしに会いたかったの?」
「ああ、そうかもしれないな」
「ッ!?」
冗談めかして告げたクルスの言葉に不意を打たれたカーメルが素で驚いた。
してやったりと口角をあげるクルスに、若干頬の赤くなったカーメルはこほんと咳きを一つ。
「そ、そういうことなら虫よけに一緒にいてくれないかしら? さすがに此処にはトニアは入れさせて貰えなかったの」
「いつもは侍従の彼女が人を捌いているのか。そのくらいなら構わない」
「ホント? あとで駄目とか言わないでよ」
ホントに大変なんだから、とカーメルは肩を竦める。
それもむべなるかな。貴族社会の白国において、いくら有名であろうと市井の歌姫が呼ばれることなど普通はありえない。逆に言えば、伝統と血筋の縛りを超えるだけの価値が少女の歌と踊りにはあるのだ。
騎士はその価値を理解しつつ、頷きを返した。
「ああ。俺も教皇猊下へのお目通りがあるからいつもという訳にはいかないが」
「アンタも大変ね」
「覚悟していた筈、なのだがな。正直、ワイバーンの前に立つ方が気が楽だ」
「重症ねー。なら、コツを教えてあげる。バードの緊張しないコツ」
トン、と軽くステップを踏んで身を寄せたカーメルがそっとクルスの手を取る。
緊張に硬く冷えた騎士の手と比べて、歌姫の手は柔らかく、そして確かな熱を感じた。
「暖かいな」
「でしょ? 目、閉じて」
声に従い瞼を下ろす。不安はない。繋がった手から感じる規則的な脈拍が目の前に立つ歌姫の存在を証明している。
「血の巡りを意識して、ゆっくり深呼吸」
微かに感じる花のような匂いは香水だろうか。
騎士は体の中に新しい空気を取り入れると、全身が僅かに温度を持ったのを感じる。胸の奥がぼうと暖かみを持ったのがわかる。
「はい、目開けて」
はじめに映ったのは見目麗しい歌姫の姿。綺麗だと素直に思えた。
周囲を見渡せば、すべてが先程よりも色鮮やかに見える。心なしか視界も広くなったように感じられる。
こんな簡単なことで変わるのかと、騎士の心中には新鮮な驚きがあった。
そうして落ち着きを取り戻したクルスを見て、カーメルは頷き、若干名残惜しそうに手を離した。
「ん、もう大丈夫そうね」
「そのようだ。ありがとう、カーメル」
「どういたしまして。それじゃ、そろそろパレードの準備に――」
「――クルスさん?」
その時、角の向こうからひょっこりと長い耳が飛び出した。続いて、薄緑色のドレスを纏ったエルフの女性が姿を現す。
その女性、クィーニィ・ハーヴェストが至近距離で見つめ合っていたクルスとカーメルを交互に見て茶目っ気のある笑みを浮かべた。
「あらあら。見知った気配を感じて来てみたのですが、お邪魔だったでしょうか?」
途端に、カーメルがぱっとクルスから距離をとった。クィーニィに注目していたクルスは気付かなかったが、前髪に隠れた歌姫の顔は明らかに真っ赤になっている。
「お久しぶりです、クィーニィさん」
「はい、お久しぶりですね、クルスさん。お元気そうでなによりです」
クィーニィはスカートの端を軽く摘まんでそつなく挨拶を返す。
体のラインが出る薄布を重ねたドレスも、女性なら誰もが羨むような体型をしたクィーニィによく合っている。
肌の露出こそ少ないが、年月を重ねて洗練された色気が布地をすり抜けてクルスの五感まで届いている。数百年の間、若々しさを保てるエルフ独特の雰囲気だ。
「クルス、この人だれ?」
「ギルド連盟緑国支部の支部長だ。こちらは――」
小声で問うカーメルにクルスが応えを返す前にクィーニィがずいっと二人の前に出る。
「カーメル・クリスタルベルさんですね!! お噂はかねがね聞いています!!」
「あ、はい。こちらこそ」
毒気を抜かれたような歌姫の様子に苦笑しつつ、クルスはクィーニィに向き直った。
「こちらにはいつ来られたのですか?」
「さっきです。私のお仕事は明日からなのですが、パレードが楽しみでして」
「そ、そうですか」
ギルド連盟の頂点たる四人のひとりともなれば、クルス以上に緊張してもおかしくないというのに、クィーニィはどこまでもいつも通りだった。
「そうそう、シオンちゃんはお元気にしていますか?」
「ええ。――シオン」
クルスとしてはシオンを見世物にする気はなかったが、妖精憑きになった際に骨を折って貰ったクィーニィは別だ。
声に応じて、ふわりとクルスの肩に光が触れてシオンが現れた。
妖精はクルスに合わせたのか、細やかな刺繍の入った膝丈の可愛らしい白のドレスを着ている。
「――久しぶり?」
「はい!! お久しぶりですね」
小首を傾げるシオンにクィーニィが母性的な笑みを浮かべた。実際、エルフのクィーニィにとって緑神の妖精は遠縁の子供のような感覚なのだろう。
その隣、いきなり出現したシオンにカーメルは口をぽかりと開けて驚いていた。
「こ、子供!? 誰の? エルフ? 嘘!?」
「落ち着け、カーメル。この子は妖精だ」
「……人型の妖精? はじめてみたわ」
「――こんにちは」
シオンはクィーニィを真似てスカートの端を摘んでちょこんと礼をした。
可憐な一輪の花のような姿にカーメルはたまらず妖精を抱き上げた。
「可愛い!! 何これ可愛い!! うちの子にならない?」
「落ち着け」
騎士は困惑するシオンをカーメルの手の中からひょいっと取り上げ、己の肩の定位置に乗せた。
「そろそろパレードの準備に向かうのではないのか?」
「うー、仕方ないわね。また後でね。クルスはちゃんと見てなさいよ!!」
カーメルはどこからか取り出した“水晶鈴”を両手足に嵌めると、しゃらんと鳴らした。
表情に浮かぶのは己の歌と踊りへの誇りと、半年前から準備していた大舞台への意気込み。
「アンタの迷いなんて吹き飛ぶような、最高の歌を聞かせてあげる!!」
◇
そして、今日という日を祝福する晴れ渡った青空の下、パレードが始まった。
先陣を任されたカーメルが整然と並ぶ歌姫達の前に立つ。
大通りを抜けるそよ風がパレオと羽衣を柔らかく揺らし、水晶鈴が小さく音を響かせる。
カーメルがつと腕を上げ、揃えた指を道の先へと伸ばす。
爪の先まで意識を行き渡らせた流麗な所作に観客達が息を呑む。
<La――――>
そして、都市中に届くような澄んだ歌声を切っ掛けに、色とりどりの歌姫たちが、整然と並ぶ楽士たちが演奏を始めた。
カーメルに続く歌姫達がステップを踏み、全身で歌い、舞い踊る。
天まで届けと優雅に舞う歌姫達は互いを高め合うかのように交差し、歌声を重ねる。
体に沁みいる水のように、空を渡る風のように、重なり合う声が響き渡る。
高らかに紡がれるのは愛を称える歌だ。
恋人たちの幸せを願い、子の健やかな成長を願い、命の営みを包み込む慈愛の歌。
恐れに囚われた者に救いを、戦いから戻った兵士に安らぎを
大病にあらがう者に癒しを、老いた者に志をつないだ明日を
己を見失った剣士に光明を、信念に殉ずると誓った騎士に希望を
運命に翻弄される聖者に救済を、隠せぬ痛みに泣く射手に平穏を
今この時は、すべてを愛し、すべてを赦す、この心を信じようと願う
誰の上にも太陽が恵みを与えるように、何年も何万年先もそうあるように
明日は今日よりも良い日であれと、蒼空に祈りよ届け、歌声よ響け
天におわす五色の神よ、照覧あれ
今こそ人は、あなたの願った愛を知る
それは誰もが知っていて、しかし、いつの間にか忘れていた何かを思い出させるような、そんな歌だった。
凝った歌や演奏ではない。むしろ、単純な音の連なりに近いものを感じさせる。
しかし、だからこそ飾り気のない想いが、真っ直ぐに聴衆の元に届く。
「きれいですね」
「ええ……」
「――――」
感動に目を潤ませるクィーニィの隣で、クルスは言葉少なく頷いた。肩の上のシオンもじっと耳をすませている。
息を呑むとはこのことだろう。沿道に集まった数万の観衆達も、一瞬前の騒がしさを忘れて、ただただ聞きいっている。
その時、その胸を打った真摯な感情をクルスは何というのか知らない。
感動と、その一言では言い尽せない何かが心の中から溢れ出ていた。
思考は言う。如何な歌とて剣は防げない。命の危機の前では無力だと。
感情は言う。それでもここに愛はある。魂を震わせる何かがあると。
だから、
(願わくば――)
願わくば、同じ空の下、カイ達も聞いていて欲しいと、そう思った。
◇
「あ、クルスさん、近衛騎士の皆さんが来られましたよ!!」
クィーニィの声に、クルスは我に返ってパレードへと視線を戻した。
歌姫達が清めた道を、近衛騎士の列が足並みをそろえて行進している。
雄々しく整然と、しかし、歌声を妨げぬよう静かに進み行く姿は彼らがただの武辺者ではないことの証明であろう。
鎧を脱ぎ、剣を置いた小さな盾だけを携えた姿は威圧感を和らげ、頼もしさだけが彼らを彩っている。
この大陸に生きる者は知っている。愛で魂は救えても、命は救えない。
街の外には魔物がいる。誰の生命であっても無慈悲に奪われる時がある。
故に、彼らがいるのだ。
盾に描かれた白狼の紋章は、近衛騎士の興りが祖先の受けた恩を返す為に獣人が組織した義勇兵であったことに由来する。
人間への従属を強いられ、それでも尚、愛と恩を忘れなかった白神の眷族を称える証である。
その為か、近衛騎士の先頭に立っているのは、ただひとり“銀の剣”の帯剣を許された2メートルを超す体躯を持つ狼のセリアンであった。白に近い灰色の毛並みは彼が白狼の直系に近いことを示している。
(これが近衛騎士。カイのいた場所か)
離れた位置からでも彼らの力量は確と感じられる。
魔物や今まで戦ってきた者たちとは別種の強さが、その背に、その肩にはあった。
護るという覚悟。その為の強さ。それらが形を持ってクルスの前にあった。
そして――本命が登場した。
「――――」
クルスが初めに感じたのは、静かな驚きだった。
屋根のない美麗な四頭馬車で観衆の前に姿を見せたのは十代半ばの少女だった。
月の光を集めて形作られたような淑やかに輝く美貌に、最高位を示す法衣を纏い、銀髪を輝かせる姿は侵しがたい美しさを顕している。
そして、笑顔を絶やさず、たおやかに手を振る姿こそ、神の子孫、その慈愛を今に伝えている。
――教皇、エルザマリア・A・イヴリーズ
驚いたのは若さや美しさではない。
その一挙手一投足にまで透徹された密やかな覚悟。先の近衛騎士に勝るとも劣らない誰をも護らんとする覚悟をクルスは確かに感じた。
戦場に立ったことなどないだろう。その手を直接、血で汚したことなどないだろう。
それでも、知っているのだろう。“護る”ということは決して綺麗事ではない。護るとは、誰かが傷つき、血を流し、あるいは命を落とした結果なのだ。
あの笑みはそれを知り、それを背負った姿なのだと、クルスの精神は告げていた。
気付けば、自然と頭を下げていた。周囲のだれもが同じように頭を下げていた。
誰もが心のどこかで侮っていた。
彼女は親族が軒並み病死した為に、他に選択肢がないから教皇に担がれたのだと。
そんなことはなかった。目には見えない覚悟、祈り。それが後光のように彼女を照らしている。
赤国皇帝のような強さはない。青国の賢者たちのような賢明さはない。
だが、祈って、祈って、祈って。もはや空気のように彼女が纏う慈愛の想いこそ、白国の姿そのものなのだ。
クルスはその日、己の国を導く者の姿を知った。
◇
都市を歌が包み込んだ同時刻。
邪悪もまた蠢動を始めていた。
「愛、愛、愛!! なんと素晴らしい言葉なのでしょうか」
教皇宮の一角にある塔からパレ-ドを見下ろしながら、女が感極まった様子で告げる。
ぞっとするような美女だった。黒の長髪と肌を覆い隠す漆黒のドレスは仄暗い闇の底のような不気味な色合いだというのに、それを女が纏えばたちまち蠱惑的な姿態へと変貌する。
「愛することで人は救われる。愛することで人は満たされる。愛こそが人の本質」
紫色の唇が酩酊させるような甘い声音を放ち、
「そうは思いませんか、大臣様?」
真紅の瞳が惑わすような光を湛える。
視線の先、だらしなく椅子に座った男は表情を失い、涎と共に呻き声を漏らしている。
「あ、あい……」
「素晴らしい。大臣様も愛を理解されたのですね」
女の手が男の頬に触れる。電撃を浴びたように男が痙攣する。
応じるように、女の額に象嵌された蒼い結晶が妖しく輝いた。
「わた、し、の……“女神”さ、ま……」
「ええ、そうですわ。さあ、愛してくださいまし――」
「“戦乱の導”に従い、【愛】を――」
まるで捕食するかのように、女は男にしなだれかかった。
熟れすぎた果実のような、甘いにおいがした。




