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婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第4章 大陸騒動編

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98、会議の終わりと中庭へ

「本当にこの改良版治癒薬をいただけるのだろうか!」

「こちらに書かれた効果は本当なのでしょうか。疑うわけではありませんが、あまりにも信じられず……」

「十分な数がないとのことですが、いただけるのはどの程度になるのでしょうか。もし余っている分があれば、ぜひ購入もしたいと考えております!」

「わ、我が国にも買わせてください」


 思っていた以上の反響に、どうすれば良いのかと慌てていると、フェルナン様が矢面に立ってくださった。


「まず効果についてですが、私が保証します。お配りした紙に書かれているのは全て事実です。その上で皆様にお渡しできるのは、三本ずつとなってしまいます。後はユルティス帝国騎士団の派遣と共に、国に残っているものを運ばせることは可能ですが……」

「では、そちらの購入をぜひ!」

「我が国にもぜひ!」

「うちは高値を付けますよ!」


 まだ余りが国にあるという話に、皆さんは前のめりで手を挙げる。その様子を見て綺麗に微笑んだフェルナン様は、背筋を伸ばして口を開いた。


「かしこまりました。しかし我が国の分は確保したいため、皆様にご満足いただける十分な量をお約束できないことについては、ご了承ください。その上で価格ですが――」


 そこからは、フェルナン様の独壇場だ。誰もが喉から手が出るほどに欲しい治癒薬を持っているのがユルティス帝国だけというのは、かなり有利に交渉を進められた。


 どこか楽しそうなフェルナン様の横顔にチラッと視線を向けて、役に立てて良かったと改めて思っていると、ふと強い視線を感じる。


 ほぼ無意識に視線の方向へ顔を向けると……そこにいたのは、アメリーだった。


 アメリーは私が話し合いの中心にいることが気に食わないのか、暗く澱んだ鋭い眼差しでこちらを見つめている。


 その視線になんだか寒気を感じ、すぐに視線を逸らして深呼吸をした。アドリアン殿下は治癒薬を欲しがっていたようだし、アメリーが何かをしてくることはないはずだけれど……警戒は強めておこう。


 私がそんなことを考えているうちに、フェルナン様と他国の皆さんの交渉が終わったようだ。リナーフ国王陛下が最後の締めに入る。


「ユルティス帝国のご貢献に感謝いたします。では、本日の大陸会議はこれで終わりです。皆様、平和を取り戻すために力を尽くしましょう」


 そうして大陸会議が終わり、集まっていた皆さんが順に会議室を後にした。この後は大勢が歓談する場が設けられているようで、昼食も兼ねてそのまま中庭に移動する。


「リリアーヌ、本当にありがとう。帝国にとって有利な話がいくつも進められた」


 周囲にいる方たちに聞かれないようにか、フェルナン様は私の耳に口を近づけると、小声でそう伝えてくださった。


「いえ、フェルナン様の手腕あってのことです。ただ……私も少しはお役に立てたのかと思うと、とても嬉しいです」


 私も顔を近づけて小声で返すと、フェルナン様に至近距離で微笑まれる形になり、何だか照れてしまう。


「あ、その、会議の場では、余りお役に立てなかったかもしれませんが……」


 かなり緊張していた大陸会議のことを思い出すと、後悔が滲む。私なりにやれることはやりきったけれど、途中から完全にフェルナン様に任せてしまったのは、反省すべきところだ。


「いや、リリアーヌは完璧だった。とても堂々としていたぞ?」

「そうでしょうか……フェルナン様に寄りかかってしまいました」

「それはむしろ、私にとっては嬉しかった部分だな。もちろんリリアーヌが一人で全てを完璧にこなせたら凄いと思うが、無理にそこを目指す必要はない。二人で助け合えば良いのだからな」


 その言葉が私は凄く嬉しくて、胸の奥がキュンと痛くなる。


「……はい。私にもフェルナン様を助けさせてくださいね。フェルナン様は完璧すぎますから」

「そうだろうか。私はすでに、リリアーヌに助けられているからかもしれないな。リリアーヌが隣にいるだけで、いつもより頑張れるし成果を上げられる」


 そんな言葉を伝えられて近くで微笑まれたら、さすがに恥ずかしくて少し距離を取ってしまった。熱くなった頬を冷やすように自分の手を当てながら、フェルナン様の半歩後ろを歩く。


 すると周囲の状況が客観的に見れるようになってきて、私たちがどれだけ近づいて話していたのかを知ることができた。


 周りに他の方がいるところでは、適度な距離を意識しないと……そんなことを考えながら、恥ずかしさを逃すように深呼吸をして中庭に向かう。


「わぁ、とても素敵ですね」


 中庭に着くと、そこはとても美しくセッティングされていて、つい感嘆の声が漏れてしまった。

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