表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第4章 大陸騒動編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/125

80、無事の目覚め

 ふと意識が浮上して自然と目を開くと、そこは静かな部屋の中だった。窓からは陽の光が差し込み、私が寝ているのは柔らかいベッドの上だ。


 周囲に視線を向けて、ここがユティスラート公爵家の屋敷にある私室だと分かった。


 でも、私はなんで屋敷にいるのか。普通ならここまで明るい時間に寝ているはずがないのだけど……と、そこまで考えたところで、寝ぼけていた頭にたくさんの記憶が流れ込んできた。


「そうだわ。魔物討伐で魔物の大群に襲われて、なんとか帝都に戻ってきて……」


 フェルナン様に抱き上げられて馬車に乗ったところで、記憶が途切れている。多分馬車の中でまた寝てしまったのだろう。そしてアガットが屋敷まで運んでくれたんだわ。


 そう現状が把握できたところで、すぐ近くから声をかけられた。


「リリアーヌ様、お目覚めですか?」

「ご体調はいかがでしょうか」

 

 声が聞こえた方に視線を向けると、そこにいたのはメイドのエメとクラリスだ。二人の顔を見たら、なんだか安心して力が抜けた。


「二人とも、おはよう。私はスッキリしているわ。屋敷に帰ってから翌日までずっと寝ていたのかしら」

「はい。アガットと共に屋敷にお戻りになってからずっと目覚められず、本日の朝になってもお休みになられていたので心配しておりました」

「起き上がれますか? 体に変なところなどはありませんでしょうか」


 二人を安心させたくてベッド上で起き上がると、体はとても軽かった。ぐっすり寝たことで、完全に回復したみたいだ。


「いつもより体調が良いぐらいだわ」

「本当に良かったです……」

「では軽くお着替えをいたしましょう。旦那様が心配されております」

「フェルナン様はもう戻られているの? お怪我はないかしら」


 フェルナン様もかなり疲れていたはずなのに、まだあの場に残ったのだ。それに魔物の大群はどうなったのか……色々と心配事がある。


 そんなことを考えていたら、エメが穏やかな表情で教えてくれた。


「旦那様は昨夜戻られて、お疲れの様子ですぐお部屋に入られました。今朝はいつものように起床され、屋敷でゆっくりと過ごされております。リリアーヌ様が目を覚さないことにかなり心配しておられましたので、姿をお見せになればすぐ元気になられると思います」


 その説明に安心して、私の頬が緩んだ。


「そう。それなら良かったわ」


 フェルナン様が戻ってきて、さらに屋敷にいらっしゃるのなら、今は危機を脱したということだろう。少なくとも最悪の事態ではないはずだ。


「では、早く着替えてしまうわ」

「かしこまりました。可愛くいたしましょう」

 

 それからは気合の入った二人によって綺麗に身支度を整えられ、ちょうど昼食の時間ということで食堂に向かうことになった。


 エメ、クラリス、アガットを伴って食堂に入ると、そこにはすでにフェルナン様がいた。席に腰掛けていたフェルナン様は私に気づくとすぐに立ち上がり、こちらに来てくださる。


「リリアーヌ、目が覚めて本当に良かった。どこも辛いところはないか?」


 手をぎゅっと握られながら心配の眼差しを向けられると、自分の心が温かくなるのを感じた。


「はい。ぐっすりと寝たことで、いつもより体調が良いぐらいです」

「そうか、良かった……」


 珍しく眉を下げたまま笑みを浮かべたフェルナン様は、私のことを優しく抱きしめてくださる。


「フェルナン様はご体調に問題ありませんか?」


 抱きしめられながらそう問いかけると、耳の後ろから声が聞こえた。


「ああ、何の問題もない。私も昨夜には帰ることができたからな。怪我も軽いものだけであったし、すでに治っている」

「それならば良かったです」


 それからしばらく抱きしめられて、私たちは席に戻ることになった。美味しそうな昼食を供される中、さっそく昨日の話になる。


「リリアーヌが馬車で戻ってから、しばらくは魔物の大群が絶え間なく現れていたのだが、そのうちに魔物の数が減っていき、夜にはもう目に見える異変はなくなった」


 つまり、半日程度の異常だったということだ。何が原因であの事態が引き起こされたのか……。


 私には予想ができなくて眉間に皺が寄ってしまっていると、フェルナン様が続けて口を開かれた。


「しかし今でも、魔物が落ち着かない様子なのは変わらずのようだ。これからも断続的に魔物の大群が現れる可能性がある。そのため国をあげて対策をしているところなのだが……原因が不明であることがとても厄介だ」


 他の皆さんにとっても原因が分からないのね。私はその事実に驚いてしまう。


 原因が分からなければ適切な対処もできず、いつまで警戒するべきなのかも分からない。とりあえず落ち着いてはいるらしいけれど、いつどうなるのかも分からない。


 それはかなり大変なことではないかしら。


「魔物の大群が現れる原因として、思い当たることはあるのでしょうか」

「やはり何かしらの災害が起こる前触れであったり、森の奥で何かが発生していたり、多くの魔物が逃げるような脅威が出現していたり、その辺りだと推測されるのだが……」


 フェルナン様はそこで言葉を切ると、険しい面持ちで告げた。


「どの予想が当たっていたとしても、大変な事態となることは明白だ。しかし事前に知っているだけで少しは対策ができるため、どうにか原因を突き止めたいのだが……」


 何か原因を突き止める方法がないのだろうか。ヒントだけでもあれば……


 必死に考えていた私の頭に、突然名案が浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ