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婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第3章 研究と交流編

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50、聖獣からの贈り物

 何かを咥えるような仕草をしてまた顔を戻したラウフレイ様は、口に爪のようなものを咥えていた。


『これをリリアーヌに渡し忘れていたのだ。受け取ってくれるか?』


 そう言ってくいっと顔を動かされたので、私は促されるように両手を揃えて前に出す。すると私の手の上に、ラウフレイ様がその爪を乗せてくださった。


「これは、何の爪でしょうか……」

『我の爪だ』


 ということは、聖獣様の爪!? そ、それは凄く貴重なものではないかしら……


「なぜこちらを私に……それよりも、どこか怪我をされたのですか!?」

『いや、我の爪は定期的に生え変わるため、その爪は自然と落ちたものだ』

「そうなのですね……」


 それならば少し安心だけど、貴重なものであるということに変わりはないはずだ。僅かに光を帯びていてる見た目も、明らかに普通のものではないことを示している。


『その爪をリリアーヌが持っていれば、リリアーヌに危険が及んだ時に我が気づけるようになる。さらにリリアーヌのことを守護してくれるだろう。したがって、肌身離さず持っているように』


 ラウフレイ様に私の危機が伝わり、さらに守護してくださるもの。


 あまりにも強い効力に、どう反応して良いのか分からない。私がもらってしまって良いのかしら。でも断るのも悲しませてしまうだろうし……


 そう悩んでいると、私より先にフェルナン様が跪いて深く頭を下げた。


「聖獣様、とても素晴らしい贈り物をありがとうございます。リリアーヌの身の安全については、私も常々心配に思っておりました。これで安心できます」

『ああ、リリアーヌは何かがあった時に、自分を顧みず危険に飛び込みそうだからな。それに遠慮して助けも呼ばなそうだ』


 ラウフレイ様のそのお言葉に、フェルナン様は同意するように何度も頷いている。


「私はそんなこと……っ」


 ない、とは言えないかしら。


 そう思ってしまったら、言葉は途中で途切れた。


「ラウフレイ様、とても貴重な品をありがとうございます。大切に身につけさせていただきます」


 受け取った方が皆に喜んでもらえると思った私は、手のひらの上に載った爪を重く感じながら、感謝を込めて礼をした。


「すぐに信頼できる細工師に頼んでアクセサリーとしよう。聖獣様、こちらはこのままの形を保つ方が良いのでしょうか」

『いや、少し削ったり形を変えたりするのは問題ない。そうだな……この爪の半分も原型を留めていれば、問題なく効果は持続するだろう』

「かしこまりました。では余裕を持って整えるのは二割ほどとし、リリアーヌが常日頃身につけられるような形にさせていただきます」

『うむ、頼んだぞ』


 私が口を挟む暇もなく、ラウフレイ様の爪でアクセサリーを作ることが決定した。


 常日頃身につけるとなると、やはりネックレスが良いかしら。この爪は白に僅かに青色が混じり、少し光を放っている綺麗なものだから、これがペンダントトップになれば凄く綺麗だと思う。


 楽しみだわ……


 そんなことを考えていると、ラウフレイ様がフェルナン様の下に悠々と足を進めた。


『お主はフェルナンと言ったな。リリアーヌの隣にいるのに文句ない人材だ。お主にも我から一つ髭をやろう。髭を一本手に持ってくれるか?』


 ラウフレイ様にそう声をかけられたフェルナン様は、緊張を隠せない様子ながらも、ゆっくりと頷かれて手を伸ばした。

 そっと一本の髭に触れると、その髭はホロリと何の抵抗もなくラウフレイ様から落ちる。


 髭も爪と同様に、白に青が混じったとても美しい色合いだ。


「こちらをいただいても良いのでしょうか」

『うむ、それも肌身離さず持っておけ。爪ほど強力な力はないが、一度ぐらいならば命の危機から救われるだろう』

「命の危機から……!」


 信じられない効果にフェルナン様は驚きの声を上げ、私も驚きを隠せなかった。


 爪よりも効果が薄い髭で命の危機から救われるなんて、爪の効果である守護というのはどの程度の力なのかしら。


 本当に心強いけれど……この世界にそんなにも普通から外れた能力があるというのは、少し怖い。


「そちらの二人はノエルとリュシーだったな。お主らには渡せるものがないのだが、リリアーヌのことを頼む。我の大切な友人なのだ」

「も、もちろんです……!」

「かしこまりました……」


 ノエルさんとリュシーさんがビシッと背筋を伸ばしながら答えると、ラウフレイ様は満足されたように微笑んで、また私に視線を向けてくださった。


『ではリリアーヌ、我はそろそろ帰るとしよう。あまり長居をして、誰かに姿を見られたら大変だからな』

「は、はい。こちらの都合を理解してくださり、ありがとうございます。また近いうちにご連絡します」

『うむ、楽しみに待っておるぞ』


 最後にその言葉を残して、ラウフレイ様は消えてしまった。

いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。この度はとても嬉しいお知らせがございます。


こちらの作品ですが――コミカライズが決定いたしました!


秋田書店の月刊プリンセスという紙媒体の月刊誌にて連載されます。3/6発売の4月号から連載開始です!

本当に素晴らしい漫画になっていますので、ぜひ皆様にも読んでいただきたいです……!

また連載開始時期になりましたら、お知らせさせていただきます。


来月を楽しみにしていただけたらと思います。

原作と合わせて漫画の方もよろしくお願いいたします!


蒼井美紗

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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖獣様がなんだか高貴なうえに、かわちいので、たまらなくもふもふしたくなり、思わず愛猫を抱っこしてすりすりしてしまいました。 [一言] いつも楽しんでおります!応援しています☆
[一言] >主らには渡せるものがないのだが、リリアーヌのことを頼む。  ( ・3・) ちょっとノエルさん、変な顔しないの!
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