表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第4章 大陸騒動編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/125

114、作戦開始(フェルナン視点)

 翌日の早朝。予定通り作戦が開始された。私はノエルが竜を誘導する囮役を務めることになった関係で、部下たちと共に誘導を手助けする。


「ノエル、無理はするな」

「はい。命は惜しいですから無茶はしませんよ」


 そう言って笑うノエルも、やはりいつもより緊張している様子だ。私は魔力温存のために近くを歩いているノエルの背中を、少し強めに叩いた。


「大丈夫だ。必ず成功させよう」


 するとノエルはいつも通りの表情になり、不満げに告げる。


「もう団長、痛いですよ〜」


 その様子に安心していると、少しずつ竜が暴れている音が近づいてくるのが分かった。事前に調査してある竜の居場所まではもう少しかかるが、竜が移動していて、思っていたよりも早くに接敵するかもしれない。


「皆、早めに戦闘の心構えを」


 ユルティス帝国の騎士団所属である直属の部下たちにだけでなく、今回の作戦で共に戦う皆に向けてそう伝えた。

 すると全員が真剣な表情で頷き、竜がいるだろう方向を睨む。


 とにかく私たちは竜を沼地に誘導するのが最優先だ。そして誘導に成功したら、そこで待ち伏せをしている皆と共に一気に竜を叩く。


 沼地の方はレアンドル殿に任せているが、そちらも問題ないと信じるしかないだろう。


 それからしばらく、最大限の警戒をしながら竜に近づいていると――突然視界が開けた。森の木々が吹き飛ばされて薙ぎ倒され、遠くまで見渡せるようになっているのだ。


 そして、遠くに見えるのは。


「あれが竜か」


 まさかあんなにも大きいとは。私は驚きを隠せなかった。


 まだかなり距離があるというのに、この場所からでも圧倒的な大きさと威圧感を覚える。三階建ての建物……いや、それ以上に大きいな。そして何よりも、その頑丈そうな鱗や鋭い爪、牙に目がいく。


 あの鱗があるのに攻撃が通るのだろうか。一回でも爪で引っ掻かれたら命が危ない。牙が刺さったら多分即死だ。


 そんな予感に、無意識に拳を握りしめていた。しかし怖気付いてはいけない。私たちはあの竜を倒さなければいけないのだ。


 平和な世界を取り戻すために。そして竜王に安らかな眠りを届けるために。


「ここからは一気に竜に近づくぞ。攻撃が届くギリギリの距離を保って竜を上手く誘導する。ノエル、危険な役目だが頼んだ」

「はい。行ってきます」


 珍しく真剣な表情のノエルは、一度深呼吸をしてから空に浮かんだ。そして、一気に竜の目の前に躍り出る。


「グウォォォォ‼︎」


 竜はノエルを認識した瞬間に、地響きを起こすような雄叫びを上げて、ノエルに向かって突進を始めた。ドシンッドシンッという巨体が動く音と共に、砂埃が巻き上がる。


 目の前にあるものを無差別で攻撃しているというのは本当らしい。そしてラウフレイ様が仰っていたように、竜は錯乱していて、自身も苦しんでいるように見える。


 早く、終わらせよう。


 私はもう一度気合いを入れ直して、皆に告げた。


「ノエルを援護するぞ!」

「は!」


 ノエルを一心不乱に追いかける竜は、目の前を飛ぶノエルに向かって咆哮を放つ。それと共に強風が吹き荒れ、周囲の木々が大きくしなった。中には根本から折れて吹き飛ぶ木々もある。


「背を低く保てっ!」


 必死に叫ぶが、竜の咆哮と爆風、さらにバリバリッと木々が吹き飛ぶ音によって、ほぼ聴覚が機能しない。目を開けてるのでさえやっとだった。


「ノエル!」


 少し風が収まったところですぐにノエルを探すと、ノエルはかなり遠くに吹き飛ばされながらも、まだ上空に浮かんでいた。


「大丈夫です!」


 その声に安堵する。


「また竜の目の前に行きます!」

「分かった!」


 ノエルの合図に、私たちはまた戦闘態勢をとった。次の竜の攻撃は、私たちで相殺しなければならない。先ほどのような強風には、やはり風魔法で相殺するのが適切か……。


 竜とどう戦うべきか思考を巡らせていると、竜の視界に入らないほど上空にいたノエルが、一気に急降下して竜に近づいた。


 さらに竜の目を狙って、風を圧縮した風弾を放つ。命中すれば片目は確実に潰せるだろう攻撃は……。


「グオォォォォ!」


 竜の雄叫びと共に強風にかき消された。それと共に竜がまたノエルを察知する。


 その巨体からは信じられない速度でノエルを追いかける竜は、鋭い爪を振り下ろし、でかい口と牙で噛みつこうとし、ノエルの命を刈り取るのに必死だ。


「いけっ!」

 

 そんな中で私たちは、竜の隙を狙って同時に魔法を放った。火魔法と風魔法を使って威力を増幅させた火炎は、竜の頭部に直撃する。


「グルガァッッ!!」


 しかし竜は鬱陶しがるように頭を振ると、火炎から逃れた。そして尻尾を振り回し、私たち全員を薙ぎ払おうとする。


「土魔法!」


 私の声掛けに、土魔法を使える者たちが防御の壁を作った。その隙に竜の攻撃範囲からなんとか逃れる。


「ほらっ、お前の相手はこっちだよっ!」


 竜の意識が私たちに向いてしまったのを、ノエルがまた目立つ攻撃をして自分に戻してくれた。


 竜がノエルを追いかけ始めたところで、ノエルは全力で沼地に向かって飛ぶ。そんなノエルを竜も追いかけながら、カパッと口を開けて火炎を放つが……。


「水魔法!」


 今度の攻撃は、私たちが相殺することができた。しかし攻撃を相殺すると、こちらに竜の意識が向くのが厄介だ。


 またノエルが竜の意識を引きつけて、私たちも必死に食らいつき、ひたすらそれの繰り返しをする。

 

 それによってなんとか竜を沼地の方向に誘導はできているが……沼地に着くまでには相当な時間と、体力や魔力が必要であることが予想された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ