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婚約破棄された可憐令嬢は、帝国の公爵騎士様に溺愛される  作者: 蒼井美紗
第4章 大陸騒動編

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106、フェルナンの後悔

 アメリーが騎士さんたちに連行され、アドリアン殿下も厳しい雰囲気で話を聞かれている中、私とフェルナン様も客室へ戻ることにした。


「ラウフレイ様はどうされますか? 一緒に客室へと戻られるでしょうか」

『いや、我はここで森に戻ろうと思う。リリアーヌ、そしてフェルナン、頼んだぞ』


 その言葉は竜討伐に向けてのものだとすぐに分かり、私たちは同時に頷く。


「はい。全力を尽くします」

「お任せください」


 ラウフレイ様のお姿が見えなくなったところで、フェルナン様と共に客室に向かった。一緒にフェルナン様の客室に入ってソファーに腰掛けたところで、さすがにどっと疲労感が襲ってくる。


「ふぅ」


 思わず息を吐き出すと、隣に座られたフェルナン様が心配そうに顔を覗き込んでくれた。


「リリアーヌ、大丈夫か?」

「はい。少し疲れてしまっただけです。フェルナン様もお疲れではないですか?」

「そうだな……さすがに疲れた」


 私たちは顔を見合わせて、緩んだ笑みを向けあった。会議だけでも疲れていたのに、色々と起こりすぎたのだ。アメリーによって殺意を向けられ、ラウフレイ様が助けに来てくださって、その存在が皆さんに知られることになり、聖女と呼ばれて竜討伐に同行することが決まり――。


 さっきまでの出来事を思い出すと、夢か何かじゃないかと思えてしまう。


「まずは、落ち着くために茶でも飲もうか」

「そうですね。温かいものが飲みたいです」


 その言葉にジョスがさっそくお茶を淹れ始めてくれて、心地よい音と香りに癒されていると、フェルナン様がポツリと呟かれた。


「まさか、アメリーがここまでするとはな……」


 私も全く同じ驚きを抱えている。アメリーに嫌われていることはもちろん分かっていたけれど、まさか殺されそうになるとは全く考えていなかったのだ。


 離れてる期間に、アメリーの思考は少しずつ過激な方向に変わっていったのかもしれない。


「本当に、驚きました」

「――リリアーヌ。助けられなくて、申し訳なかった。リリアーヌにナイフが刺さる瞬間が、鮮明に思い浮かぶ。ラウフレイ様のお力がなかったらと考えると、私は……」


 フェルナン様はかなり後悔している様子で、俯いたまま手を小刻みに震わせていた。いつもなら大きくてとても頼もしい手をギュッと強く握り締め、唇も硬く引き結ばれている。


 私はそんなフェルナン様に体を寄せて、そっと力の入った手に触れた。そして首を横に振って、今度は私がフェルナン様の顔を覗き込むようにして笑みを浮かべる。


「あれは仕方がないです。とても急なことでしたから」

「いや、それでも私はすぐ近くにいたのだ。手の届く場所にいたのに……本当に不甲斐ない」


 顔を上げてくれないフェルナン様の手は、少し触れただけでもすぐに分かる冷たさだった。私は少しでも温めようと、両手で包み込むようにする。


「悪いのはアメリーですから、フェルナン様は気になさらないでください。ラウフレイ様のおかげで、こうして私は無事でしたし」


 その言葉でやっと顔を上げてくださったフェルナン様は、私と視線を合わせると眉を下げた。そして僅かに震える声で告げる。


「そう、だな。本当に、本当に無事で良かった……ラウフレイ様には感謝してもしきれない」


 ゆっくりとそう告げながら私の存在を確かめるように抱きしめてくださったフェルナン様の背に、私もそっと手を伸ばした。


 それからしばらく無言で抱き合っていると、少し落ち着いたらしいフェルナン様は瞳に強い決意を宿していた。


「リリアーヌ、私はもっと強くなろうと思う。リリアーヌのことを必ず助けられるぐらいには」

「ありがとうございます。ただ……守られてばかりでは申し訳ありませんから、私も強くなれるように頑張ります」


 グッと拳を握りしめてさっきから考えていた決意を表明すると、フェルナン様は少し驚いたように瞳を見開いてから、ふっと楽しそうに破顔した。


「私も手助けしよう」

「本当ですか! ありがとうございます。やっぱりまずは体力作りからですね」


 そんな話をしていると雰囲気が緩んでいつも通りになり、私は少し話を変えた。

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